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フットウエア・プレス  2005・12
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 特集
05年 靴・バッグのこの1年
靴・バッグ市場の7つの動向
  靴市場はグローバル化し、異業種の参入、コラボ関係が生まれる

M&Aによる靴市場への進出
 ファーストリテイリングがワンゾーンを買収
業界再編の動きを感じさせる出来事が3月にあった。カジュアル衣料チェーン「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングによるワンゾーンの買収である。2000年に民事再生法の適用を申請したワンゾーン(旧靴のマルトミ)は、その後、OCM(米国投資会社オークツリー・キャピタル・マネジメント)と三菱商事の支援を受け、昨年12月には再生手続きは終了していた。今回の買収は、一連の再生手続きを待っての出来事であった。
投資会社のもとでの支援による再生であり、再生への道筋が整った時点で、あるいは再上場を果たした時点で売却することは、当初から予想されていた。ただ、その売却先は同業他社ではないかと見られていた。特に世界最大の靴小売チェーンで、一昨年、日本出店を果たしたペイレス・シューソース・ジャパンが有力視されていた。しかし、靴販売に大きな興味を持っていたファーストリテイリングが買収、靴業界に参入することとなった。
今回の買収では、ワンゾーンは会社としてそのまま残しアパレルのノウハウを取り入れることで、同社の販売力をさらに強化し、ユニクロとの間でシナジー効果を実現し、グループ全体の企業価値を向上させていく、と発表していた。

ユニクロ流を取り入れ、在庫は大幅に縮小
すでにその動きが出ていると伝えられる。その一つは在庫を残さないユニクロ流「商品・流通」システムを導入し、在庫が大幅に縮小されているという。同時に粗利率の改善も進んでいるという。ここでは店頭のワゴンもなくし、売場も整理されるなど、在庫が減っている。また、これまで個人商店としてのやる気に期待したオーナー制(パートナー店)を採用していたが、チェーン店のメリットを生かしきれず、業態にブレが生じたり、人気商品の欠品や逆に在庫過多も見られるなど弊害もあり、直営店を増やしているという。新年度では2ケタ増の予算を組み、新店舗開発の計画もある。
郊外型の「ササン」国立店
ワンゾーンは他と競合する郊外型店舗を展開してきた。しかし、これまでとは違う、新しいビジネスモデルを創造しようというワンゾーンの動きは、在庫コントロールだけでなく、今後は商品力・ブランド力にも及ぶことが予想される。そのとき、どんな業態開発で市場を創造しようとするのか。ユニクロスタイルの低価格・高付加価値での市場創造は、これまで未開拓市場を開拓することになるのか、動向が注目される。

百貨店の婦人靴売場でICタグ導入
三越、阪急がストアロイヤルティーのアップを狙って本格稼動に
 国と日本百貨店協会が旗振り役になり、これまで実験を進めてきた売場でのICタグ利用が、今年から本格稼動し始めた。昨年10月から2回に渡って売場での検証が行われ、そこで出てきた課題に修正を加えて、4月から日本橋三越と梅田阪急の婦人靴売場を皮切りに、売場での稼動が始まっている。
 ICタグ導入は、実験段階ではアパレルが先行していたが、本格的な稼動段階では、色に加えてサイズ在庫の多い靴売場がICタグの活用が有効なものとされ、導入にいたった。
 在庫管理では、売場に並べられた商品に値札と一緒に取り付けられたICタグにPDA(携帯端末)をかざすことで、同じ型番の商品がどこの在庫ストックに、どのサイズ、カラーが何足あるのかが表示される。このため、お客を無駄に待たせることなく在庫確認が出来るとともに、売場の販売員も何度も在庫室との往復をしなくて良くなった。
 さらに、お客自身で在庫ストックを確認できる装置を売場に置き、サイズ、カラーの有無が確認できるようにしている。また、この装置を使えば、商品がどこにもない場合、モニターを使って在庫室にある類似商品を検索、絵型を見せることもできる。
 これまで、売場の販売員が忙しかった場合、店頭に無いサイズ、カラーのお客さんは売り逃しにつながっていた。まして在庫がない場合の類似商品の推奨販売は出来ないのが現状であったが、ICタグの導入はこの売り逃しを減らすことができ、同時に待たせる時間の削減でのサービス向上は、ストアロイヤルティー(店への信頼)のアップにつながることとして期待されている。

販売員が持つPDA

日本橋三越は対応時間が半分に

お客自身で検索できるモニター
日本橋三越では、一人のお客に対応する時間がこれまでの半分になり、しかも試しばきの足数は1・7足から3・1足に増えている。在庫室から一度にサイズ違いや別デザインの商品も取り出し、試しばきをしてもらっている結果だ。これまで売り逃していただろう需要も開拓できており、20%台の売上げ増につながっている。
このICタグの利用は、これまでの靴用JANコードと違って、同じ品番でも1足ごとに管理が出来るメリットがある、SCM(サプライチェーン・マネジメント)の有効手段として期待されている。
 
ただし、ICタグ対応では卸の協力なしには有効に働かないが、現状では2社ほどに過ぎず、売場で管理できるブランドが限定されている。この点が今後の課題であろう。

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