今月の記事・ピックアップ 2008・8
 HOME > フットウエアプレス > 特集 売れる店の仕掛け
 特 集 
売れる店の仕掛け

靴・バッグ小売店の減少や物価高などで厳しい市況が続く中、日本各地で好調に売上げを伸ばしている店も点在している。本特集では靴やバッグを主体に扱う7店への取材から、各店の好調の要因や取り組み姿勢などをレポートする。

【ショップ・レポート】
フィットフィックス(広島・尾道市) ひごや(岐阜・高山市) フットフリーク喜足庵(静岡市)
中山靴店(岡山・玉野市) クデタ(ガヤ)(名古屋・東区) ロビンフット 大船店(神奈川・鎌倉市)
無二byクエルクス 京都三条店(京都・中京区) エス・マート(静岡・浜松市)



無二byクエルクス 京都三条店(京都・中京区)
ブログで入荷情報を知らせるセレクト業態

売れる仕掛け
●内装や商品に統一感を持たせてコンセプトを明確に打ち出す
●ブログで入荷情報を告知し、入荷前の予約や購買率を増やす
●来店前に電話予約する固定客も多いほど、お客と店との関係が密

国産革バッグが主力の高感度セレクト業態
バッグなど革製品の小売店を展開するタワーリングクラウド(大阪・北区)は、07年1月に無二byクエルクス京都三条店を開店した。1年半を経た今の売上げ前年比は150%。「当初想定した以上の早さで顧客づくりが進みました」とチーフMDの平野重臣さん(以下コメントは平野さん)。
場所はJR京都駅から電車と徒歩合わせて20分ほど。観光客の多い地区から離れた閑静な通りの路面にあり、お客の比率は地元客8割・観光客2割。年齢層は30〜60代と比較的高め。17坪の売場は木製什器で統一し、アンティークの家具や置物を随所に配している。
商品は構成比8割のバッグをはじめ靴や革小物やアパレルなどで、「シンプルで上質、トレンドを追いかけない」というコンセプトのもと品ぞろえを行う。バッグは「ボーデッサン」「エムピウ」を主力に「レガロ」「ルッカ ディ ルーチェ」など中心価格3万〜4万円台の革の質感を生かした国産ブランドをそろえる。靴は日本の職人による「ヒロシ キダ」の受注生産品が中心で、メンズ6万円から・レディス4万円からと高額だが品質の良さや希少性でファンが多い。同店全体の客単価は1万5000円、年間販売規模は本誌推定で5000万円前後。

入荷前の予約で購買率高い
バッグはお客が入荷前に受注することも多く、基本的に在庫を積まず店頭のみ。同店のブログ(http://www.toweringcloud.com/muni_kyoto.html)に商品入荷予定や入荷報告を掲載すると、すぐにお客から問い合わせが入るという。「少し奥まった場所にある店で客数は多くありませんが、ブログ掲載商品の受注やお取り置き注文が多く、来店客の購買率がとても高いので先の売上げも読めます」。ホームページでのネット通販も準備中。
固定客は来店前に電話をしてくることが多く、ほぼ毎日、「15時に○○さん来店」というような"予約"が入っているという。「ゆっくり話したいというお客さまが多く、2〜3時間の滞留は当たり前。半日いる方も少なくありません」。SC内店舗ではここまで仲良くなれない、とも。

 

続きは本誌に




エス・マート(静岡・浜松市)
25年間「ビルケンシュトック」のみの販売で
ファン開拓

売れる仕掛け
●靴はビルケンシュトックだけに絞り、日本一の品ぞろえ
●足を鍛えるフットベッドを売る店として違いをアピール
●アパレルとのミックス提案で体にいいものを扱う


 JR浜松駅前から遠鉄新浜松駅の下を過ぎ、地元商店街に向かう場所に靴とアパレルのセレクトショップ、エス・マート(http://www.s-mart.jp/)がある。ビル1階の路面店は9坪ほどの広さ。天井まで伸びる中央の陳列棚で仕切られたロの字型の売場である。ここで25年前から、ドイツのビルケンシュトックの靴とフランスのセント・ジェームスのシャツのみの展開でファンづくりに取り組んできた。前期も5%の伸びで4000万円を越える売上げとなっている。

フットベッドを売りたい
 エス・マート代表の市川清二さんは25年前、ビルケンシュトックのサンダルと出合った。これを機会に、それまで勤めていたインポートのセレクトショップをやめ、郷里の浜松でビルケンシュトックだけの店を開業した。日本市場ではブランド知名度もない、ドイツ・コンンフォートの独特なラストのサンダルのみで店を始めたが、何の不安もなかったという。アメリカ市場をはじめ、世界各国で日常の生活に浸透している商品として、売れている実績があったからだ。
「靴を売ろうという発想はありませんでした。足を本来の自然な状態に戻すビルケンシュトックのフットベッドを広く知らせたくて店を始めました」(市川さん)。
この姿勢は、店頭で並べられた32足のフットベッドの陳列に現れている。ここでは商品を見せずに、パーツであるフットベッドだけをサイズ別に見せている。
同店ではコンフォトという言葉はとくに使っておらず、また足を優しく包み込むとか、はきごこちがいいよう足底にフィットさせる靴を提供しようという考え方もしていない。売場ではビルケンシュトックの一連の商品群の中から、「クラシックス」の中の<ボストン>から勧める。「かかとが自由に動くことで、歩行時に足指がフットベッドをつかむ「握り運動」ができ、本来の足の機能を取り戻すのに最適」という考え方からだ。他にもスリッパタイプも「あおり歩行」を促すエクササイズサンダルとして、前面に並べている。
さらに、フットベッドの上に自然な状態で足が乗るよう、フットベッドの幅はレギュラーサイズを基本に仕入れている。しかし、日本の販社はナローサイズが多いため、同店では特注でドイツにオーダーしている。
「100足が最小ロット数だが、ファッション商品のようにシーズンが過ぎれば売れなくなるような商品ではなく、パーツから接着剤まで有機素材を使っているような商品。不良在庫にはなりません」。

続きは本誌に