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昨秋以降の景気低迷から低価格志向が進む中、関連商品のセット販売による客単価アップは売上げ確保の有効な手段といえる。神奈川・大船の靴専門店のロビンフットは、インソールの年間販売額が1000万円を超えているセット販売の成功店だ。ここでは第38回ISFで開催された、同店の小黒代表のトークショーを抜粋して掲載し、その販売手法や考え方を紹介する。 足について知らなければ 満足いく靴は売れない ![]() 小黒 靴屋を始めてかれこれ26、27年。10年前までは横浜・青葉台に42坪ほどでファミリーシューズショップを開いていました。当時はメガショップが非常に多く、200坪ぐらいの大きな店ですべてのブランドをそろえなければ、生き残っていけないという強迫観念を持っていました。しかし、バブルが弾けて売上げが下がり始めたとき、自分は靴屋としてどう生きていくんだと自分に問いかけた。まず思ったのが、靴屋なのに足と靴について知らなさ過ぎるのではないかということ。 40歳の時、初めて足と靴と健康協議会のシューフィッター養成講座を受講しました。ただ満足できず色々な書籍を読み漁った中で、清水昌一さんが執筆した「歩くこと・足そして靴」に出会い、衝撃を受けた。その後2〜3年は清水さんが代表を務める名古屋の足と靴と科学研究所で勉強をしました。分かったのは、骨格など足について様々なことが分からないと満足のいく靴なんて売れない、ということです。 50歳の時、連帯保証人になっていた叔父の事業失敗で自己破産しましたが、借金をして2000年に大船で再起を図った。主眼に置いたのはドイツ整形外科靴を広めること。その上で欠かせないインソールを、靴と抱き合わせてが当たり前のように8年間販売していたら、いつのまにか1000万円売るまでになっていたというわけです。 靴屋をやっている以上、ドイツの整形外科靴の知識は知らなければいけない。今はまさに健康の時代で、知らないで靴屋をやっているのは良くない。 ――インソールの販売はオープン当初から? 小黒 そうです。ドイツ靴は3万〜4万円と高く、町の靴屋ではびっくりして帰ってしまいます。考えたのが9800円で構造のしっかりした「ブルックス」オブリークランと、1500円でアーチがしっかり入ったインソールの「ペダック」マスター(1500円)のセット。これが成功してインソールが売れ始めるようになりました。シューズは「ヨネックス パワークッション」や「アサヒメディカルウォーク」、インソールはビルケンシュトックの「ビルコ」も扱うようになりました。それまでのインソールの販売実績があってか、税込4830円のビルコも結構売れて急速に売上げが伸びました。ただ、最初からインソールのことを理解している人は少ないですね。 ![]() ![]() ――インソールを知らないお客が多い中でどのように販売していますか? 小黒 インソールを入れているのにぜんぜん良くならないとクレームを言う人がいますが、よく見るとまともに靴をはいていない。そんな時はきついことを言ってでも注意します。日々取り組んでいるのはドイツ整形外科技術という高尚なことではなく、靴のはき方の講義です。 インソールに対するクレームはどこから生まれるかというと、靴に対する知識の無さやいい加減なはき方。靴屋としてやっていく使命に、日本人として靴のはき方の生活習慣を変えていかなければなりません、とくに町の靴屋は。ただし、豊かな生活を送るためには靴を着飾る、ファッションを楽しむことも大切。つまり、足に合う靴もファッションの靴も両方必要なのです。私はどうやって使い分けてはくかをお客様に語りかけています。 真実を正直に 伝えることが大事 ――靴に対しても色々なお考えをお持ちかと思いますが 小黒 お客様に真実を伝えることが第一。来店したお客様に中敷に足を乗せてもらい、合う靴の形を見せる。それに基づいた靴をすすめた時、「こんなカッコ悪い靴ははけない。もっとエレガントなこちらがいい」というお客様には「お好きなものをはいたらいいですよ。ただ、足には全然合っていませんから、魚の目ができたり靴ズレがおきたり色々なことが起こります。そのことを承知してはいてください」とはっきり伝えます。正直に伝える大切さを、長い年月を費やしてやっと分かりました。 ――セールの活用法について 小黒 足に良い靴とはどういうものなのか、読んで理解してもらえるような形でミニコミ紙に毎月広告を出しています。年間で500〜600万円ぐらい掛かっているでしょうか。セールの情報もそこに入れています。 高いドイツの靴をどうやって安く売るか。セール品は問屋を回って仕入れた特価品で、探すと結構あるもの。安く仕入れたら安く売る。粗利を稼ごうという考え方もありますが、私の場合は違う。とにかくはいて喜んでもらい、足にいいんだということを理解してもらってまた買いにきてもらう。売上げが取れている理由はここにあると思います。 ――セールは年に何回ですか? 小黒 大きなセールは夏と冬。セールというのはお客がセールの時期だなぁと考えている時にやるべきで、コンフォート靴屋だからセールをやらないではいけない。世間のバーゲン期間と同じように、6月半ばから8月、冬は11月後半から2月までセールをしています。要するに1年のうちの半分がセール。他にもスポットでもやっています。お客様の感情通りにやっているから嫌われることはありません。 ――小黒さんの信念は「大衆に愛される靴専門店」ということですが ![]() |
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