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業界全体で足と靴の知識を親子一緒に啓蒙すべき 足と靴と健康協議会(FHA)は一昨年に「幼児子ども専門コース」を新設し、子供靴専門のシューフィッター育成を開始。これまでに養成講座を2回実施し、71名を認定している。FHAは今年2月、その有資格者とメーカー、ジャーナリストを迎え、「これからの子供靴をどう考えるか」というテーマでパネルディスカッションを実施した。多数のFHA会員が集まり、白熱した議論の一部を紹介する。
大谷知子 シューフィル 靴ジャーナリスト 小林徹司 コンフォートアルプス(東京・練馬区) 店長 佐野生子 シューマート アミー穂高店 店長 永井恵子 くっく知多店 チーフ、WISH理事長 筒井 子供靴で皆さんがいま取り組んでいること、感じていることを教えてください。 佐野 子供の足を守るという気持ちで、全店で足の計測に取り組んでいます。最近はまっすぐに立っていられない子供が多く、外反母趾も見られ、ご両親の意識が足りていないと感じています。地方より東京の子の方が階段の昇り降りなどで歩く機会があり、運動量は多い。長野の運動量は全国でも下位で、足は白魚のように白くて薄く細い。カカトも小さく、細身の木型でも合わないことが少なくありません。合わせにくいというのが現状です。 永井 母性を大切にし、子供の足に対する疑問を解決するという狙いから、WISHというNPO法人を設立しました。幼稚園や保育園で足の計測を行い、歩き方や立ち方、正しい姿勢を教えています。活動を通じて、たとえば定期検診でファーストシューズの選び方を伝えるなど、行政にも根付かせていければいいですね。草の根でも少しずつ前に進んでいきたい。 小林 東京のベッドタウン、光が丘の西友系GMSの中で靴店を運営しています。もと売場にある子供靴が380円であるのに対して、当店は3980円。12年前の開店当初から子供靴を置き、すべてサイズを測って良い靴をお勧めしています。最終的に靴文化の向上につなげられればいい。子供靴で今、一番の大きな問題点ははき方です。 秋満 靴の素材、機能の開発に携わり、現在は海外生産の品質管理に従事しています。子供靴はハーフサイズ、ウィズバリエーションを考えて開発してきました。現在、中国の生産現場は不安定で、納期や品質の確保に苦労する一方、日本での市場価格はほぼ固定されています。両者をどう調整していくのか、日々悩んでいるところ。 自社で実施した幼稚園での足型計測では、全体に運動不足の子供が増えている傾向。運動している子としていない子でバラつきがあり、二極化の側面もあります。どういう所にスポットを当てていい靴を作り、どう啓蒙していくかが難しい。 大谷 実際に子供靴作りに携わったことがあるわけでなく、いち取材者、いち消費者としての見方を話します。以前に「ハーフサイズはないのか」をテーマにしたキャンペーン記事を書いたことがありますが、「在庫負担が重い」など否定的な声が多かった。本を執筆したのは、消費者が変わればメーカーが動くと考えたからです。メーカーは消費者には弱い。子供靴のシューフィッター開始はいいスタートになるでしょう。 親の意識を変えることが子供靴向上につながる 筒井 みなさんは子供靴の現状に対して、ある種の壁を感じているようですね。消費者は見た目がいいもの、安いものに関心がある。デザインと価格が先にあって、状況はなかなか変わっていない。皆さんの立場で打開できるかどうか。消費者を変えられるのかどうか、聞かせてください。 大谷 母親学級から教えることが必要です。子供には保健体育や家庭科で教える。裁縫の授業があって洋服のことは知っているのに、靴は何も教わっていません。 小林 親も知らない、子も知らないということが多い。接客を通じて日々伝えていますが、広がっていかない。個店単位では限界があります。FHAのホームページに動画を掲載するなど、目で見せることが大事なのでは。 佐野 子供靴のシューフィッターを取った時、地元新聞社から取材を受けすごい反響がありました。子供だけでなく、大人も足を見てほしいと来店。潜在的に足の病気や痛みを抱えそうな人がたくさんいると感じました。子供の足の勉強をするのは歩行の原点。皆で動かないといけません。個々のメーカーではなく、1つの木型を作る試みもその1つ。 秋満 学校の上ばきの中心価格は何百円という世界ですが、それらはカウンターがしっかりしておらず、長時間はいていると足に良くありません。この問題を解決する機能を搭載した上ばきを開発しましたが、価格は従来品よりどうしても高くなってしまう。ある幼稚園で新・旧製品のどちらを選ぶかアンケートを行ったところ、安いものを望む声が多かった。やはり親御さんをどう啓蒙していくかがポイントでしょう。 続きは本誌に |
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