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 マーケティング

キッズから大人まで市場規模は200万人

今年に入って話題商品に。小売店も注目し始める
今年に入って「ダンス」が経済系のマスコミに取り上げられ、話題となっている。この小・中学生を対象にしたマーケットには雑誌、音楽、ダンス教室、認定事業、イベント、アパレルなど多彩な分野からの参入が見られる。靴関連のメーカー・卸も今後の大きな可能性を秘めた市場と見て、商品投入を進めている。
いま注目されている「ダンス」はヒップホップなどストリートダンスである。これまでも「ダンス」ではかれた靴はあった。しかしストリートダンス系の「ダンスシューズ」として、新たなカレゴリーとして打ち出したのは今回が初めてである。
各社が「ダンスシューズ」に注目するのは、学校教育の現場にストリートダンスが取り入れられたことである。昨年度から小学校が、今年度からは中学校が、さらに来年度からは高校でも保険体育の中の必修科目になることが背景にある。過去の例でも水泳が授業で必修化されると、水泳教室がお稽古ごととして爆発的に増えた経緯がある。
さらに靴業界の場合、ランニングシューズとは別に新たなカテゴリーとなった「運動会シューズ」が、男児の間で急成長した経緯があり、今度は女児が狙えるマーケットとしての期待がある。
ダンス教室を中心に盛り上げ機運が進んでいるダンス市場。ここでは大人のプロ〜アマ層、お稽古ごとで教室に通うキッズ層、さらにその親たちも一緒にダンスを楽しむなど、その層は拡大している。ダンス教室の会員数から推計したダンス人口はキッズ層だけで100万人、大人まで加えれば最低でも200万人といわれている。キッズ市場では9割が女児需要と見ている。ちなみに運動靴シューズの場合は6〜7割は男児だった。

ダンスシューズはキッズ対象の商品が大半だが、学校教育の現場ではかれる靴になるとは想定していない。ダンス教室での実需を狙っている。同時にダンスが好きになった子が通学ばきでダンスシューズをはくことを期待している。
価格は3500円前後が一般的だ。これまでの3000円の壁を超えるのが難しかったキッズ対象の商品も、ダンスシューズでは3000円台が受け入れられている。このため100万人なら35億円の市場規模がキッズで見込める。

ダンスもできるライフスタイルシューズとして提案
各社の商品内容は本誌に取り上げているが、商品開発に共通するのは、スピンやステップに適した機能をそなえ、しかもファッションシューズとしてはけるライフスタイルシューズであること。
市場展開で早くから取り組んでいたのはランテックの「ビジョン」。横乗り系の靴として市場を拡大、09年秋にダンス専用のモデルを投入している。ゴム靴メーカーではアサヒコーポレーションが10年春夏から「ネイムス」のラブステップ・シリーズでダンスシューズを打ち出した。広く売場がダンスシューズを知るきっかけになったのはアキレスの「瞬足ダンス」。PBながら、認知度の高いキッズブランドがダンスシューズを展開したことで、マスコミも取り上げ、小売店の注目することになった。また、革靴メーカーのマドラスは「JADE(ジェイド)」で12年春夏から市場展開している。同ブランドは今秋冬からキッズ・アイテムも展開するが、他とは違って価格は1万円台で、プロユースを狙った頂上開拓から市場浸透を進めている。
ダンス教室を主力とした営業戦略では、靴メーカーにはこれまでなかったプロモーション強化への取り組みが見られる。芸能プロダクションと組んだアイドルを起用した販促活動を行っている。アキレスがドリーム5と瞬足ステッパーズを起用、「タイゴン レーザービーム」でダンスシューズを展開するアシックス商事は「フェアリーズ」をCMや店頭POPに使っている。

今年大きく開いたダンス市場の扉。新市場にいち早く注力して、先行者利益を獲得しようとする企業がある一方で、可能性を模索しながら、徐々に参入していこうする企業もあるのが現状だ。