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ナチュラルな革の魅力を生かした
シンプル&スタイリッシュバッグ REN
東京・台東区蔵前に店を構えるREN(レン)。約24坪の店内に入ると、商品の陳列スペースの奥にある、縫製用ミシンや道具が置かれた作業スペースが目に飛び込んでくる。売り場であると同時に工房でもある店舗は、デザイナーである柳本大さんのかねてからの夢を実現した空間だ。
「RENのバッグは、つや出しや顔料乗せといった最終工程を経ていない素上げの革を使用しているので、傷が少し目立つのですが、なぜこんな革を使っているのか、お客様にちゃんと説明し納得して買って貰いたい。そのためにも、机を並べて、自分たちがバッグを作っている光景をお客さんに見てもらいたかったんです」。
RENのスタートは2005年。革の質感や肌触りを生かして、装飾はできるだけ省略し、洋服にマッチする質感とフォルムを作りたいと、デザイナーの柳本さんを中心に計3名で立ち上げた。都内のアパートの一室から一軒家、浅草のオフィスを経て、蔵前に移ってきたのは1年前。
「自分でサンプルを作るので材料が手に入りやすい場所が一番。この地域には、個性的な雑貨や文具の店もあるので、小売をやるのなら『蔵前で』とも決めていました。人通りが少ないだろうと覚悟していましたが、想像以上にお客さんが来てくれる。わざわざ足を運んでくれる方がほとんどなので、購買率が高いのもありがたいです(笑)」。
レディス強化でよりユニセックスに
RENのラインアップは当初、工場生産品のシリーズとハンドメイドのシリーズの二本立てだったが、2年前から工場生産品だけに絞っている。卸が伸び、本数が取れないハンドメイドに時間を割けなくなったためだ。
中心価格は1万〜2万円。好評なのが「FUKURO」シリーズだ。売上げの70〜80%を占める看板シリーズは、その名の通り、古くからあるシンプルな「袋」や、使い捨ての「袋」などに注目し、素材の柔らかな風合いがそのままいきる形やサイズを追求している。
この「FUKURO」がある意味、RENの運命を決定づけた。
「最初からユニセックスでやってきたんですが、思いの外、女性に好評だったので、メンズ視点からレディス視点に切り替え、意図的に女性向け商品を強化したんです。メンズバッグの市場はポーターやマスターピースの牙城で、なかなかそこには入り込めないという思いもありました。もちろんいまでも男性ファンは少なくありませんが、本当の意味でユニセックスなブランドになったと感じています」。
リーマンショック後もRENの売上げは伸びていたものの、若干の停滞感を感じていた柳本さんは、「FUKURO」シリーズにひと回り小さなサイズを追加し、カラーリングも軌道修正。以前は黒や茶といった色が主体だったが、そこにキャメルやピンクベージュを追加し、これが女性に支持された。
「FUKURO」でもっとも売れるアイテムは、女性向けのトートタイプのランチバッグ。オリジナルレザーのピッグスキン「HALLIE / ハリー」を使用し、あえて裏地もつけずにシンプルに仕上げている。
「ピッグスキンは日本が誇るレザーの一つ。たためて、洗えて、とにかく軽い。手触りも非常にソフトです。手にとった女性はみな『軽い』と驚かれますね。『シンプル』という声もよく聞きます」。
素上げのピッグスキンには汚れやすく、傷が目立つという特徴もあるが、柳本さんほかスタッフはみな、メリットだけでなくデメリットについても触れ、「それがナチュラルな状態の革であるがゆえの個性」なのだとお客様に説明する。
「そうすると納得していただけるんですよ。デメリットがデメリットにならない。むしろメリットになる。そのためにも、やはりしっかりとした接客が欠かせません。いま、卸先はライフスタイル提案をしているセレクトショップが中心なんですが、現状では新規の卸先は積極的には増やしていません。お客様が見えなくなるのが怖いんですね。RENならではのバッグの特徴について共感し、接客販売してもらえるお店に絞っていく計画です」。
出会いから生まれるオリジナルの革
「FUKURO」シリーズ以外で人気を集めているのは、「ぼろ切れや布きれ、古着のような使いこんだ雰囲気」がコンセプトの「RAG」。中でも、「デイリュック」は好調だ。
リュックは機能的で便利だが、革製となると重量感が増し、女性が持ちやすいタイプは市場にはあまりなかったのではないか。軽量で使いやすく、それでいて洋服をあまり選ばないシンプルスタイリッシュなデザイン。RENのバッグが女性に受けているのは、「ありそうでなかった」「欲しくても見当たらなかった」空白地帯をうまく突いているからだろう。
素材にこだわる柳本さんはピッグスキンの「ハリー」のほか、1.1mm厚のヤギ革を最小限の染料とオイルでシンプルになめし、天然のシボを生かした「BARE / ベアー」など、タンナーとも協力しながらオリジナルの革を生み出してきたが、あえて自分から探しに行くことはないという。
「高いお金を出せばなんでも買えますが、それだと単価が合いません。1枚からひける(買える)というのもはずせない条件ですが、そうそうそうした革は見つからない。だから自分からは動かず、出会いを待っている(笑)。でも必ず出会いはやってきますよ。ピッグスキンもヤギ革もそうでした。最近もまた別のヤギの良い革が見つかったし、バングラデシュの革との出会いもあった。コブウシの革なんですが、身が引き締まっていて歩留まりが良いんですよ」。
ヤギ革を使ったバッグについては、4月の展示会で発表をするという。染色しただけの素上げの状態で、色は黒一色。新しいRENワールドが広がりそうだ。
5月には恵比寿に売場面積は10坪の新店舗がオープンする。「もっと人が集まる場所に出てみたい」(柳本さん)という考えゆえだ。
それよりも柳本さんが目指すのは、ハンドメイド品の復活だ。
「店の展開や人材育成が一段落したら、またハンドメイドを手掛けたい。RENのスタート時はハンドメイド100%でした。最後にはまたここに戻りたいですね」。
売上げは毎年順調に推移し、スタッフも6名に増えた。革の魅力をふんだんに生かした工場生産品とハンドメイド品。2本柱のラインアップが実現する日。それはRENのさらなる飛躍と同意語だ。
REN(レン)
東京都台東区 蔵前4-13-4
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