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シニアのシューフィッティングで最も重要なことは「転倒骨折予防」。 骨が弱くなっているシニア層は、転ぶと骨折しやすく、それが引き金になって寝たきりになってしまうことも少なくないからだ。また、後期高齢者(75歳以上)になってくると、いわゆる「すり足」になってしまう人も多くなる。転びにくい靴とは「つま先が引っかからない靴」である。 くるぶしをしっかりと支える靴が理想的@ 理想のデザインは、くるぶしまで包み込むチャッカーブーツ足と脚をつなぐくるぶしを押さえると安定し、ねんざも防げる。短靴でも、ヒモ締めか面ファスナー付きの調整タイプがよい。この点、幼児の靴と同じ。ブーツをはくと楽に歩けると感じたことがあるかもしれない。 その理由は、前足部は無意識に歩行援助しており、足首を押さえるとそれが必要なくなるからだ。ただ、ゴム長のようなルーズなものでは意味がない。 ブーツというと冬のものだが、足首までのチャッカーブーツならオールシーズンはくことができる。 大切なのは、かかとをトントンとカウンターに固定し、甲で調整すること。アスリートがシューズを調整して競技に臨むように、靴を調整して外出すれば転倒も防げる。高齢の方には、周囲が気を付けてあげよう。 A トウのスペースは可能な限り少なく つま先の余裕は、一般的に男性は1・5〜2p、女性は1p といわれているが、そんなに必要はない。歩いて足先がつま先に当たらない程度で十分。 メンズのドレスシューズで、トウがかなり長くなっているものを見かけるが、長くなればなるほど引っかかる可能性が高くなり、シニアには危険である。 つま先が長ければ、それだけ前に足がずれてしまうからだ。 B トウの形は、足指の形に合わせて太く、広めなほうがいい 理由は、指がしっかり機能できるからで、子供靴と同じである。 C トウが、地面より十分上がっていること 上がりすぎるからだめ、ということはない。スポーツシューズのように、つま先が上がっている靴を選ぼう。 D 靴底の先端、地面に接するトウは、角がなく丸味があること 靴底に角があると、そこがたった5oの段差に引っかかってしまった、ということもある。 なぜ、どこで転んだのか、自分でもわからない。そこで、シニア向けの靴を買いに来た、という人には「今ある靴の前底の部分を、グラインダーかカッターで削って角を取りましょう」と教えている。人間関係と同じで角があればトラブルも起きやすい、というわけ。 また、一般的に革底は滑りやすいと敬遠する向きもあるが、吸湿・放湿して靴内部の環境を整えてくれるというよいところもある。雨の日など滑りやすいと思われるようなら、V字型の彫刻刀で靴底を綾目にカットしておくと効果的。端から切るのは難しいので、中央部分を少しカットするだけでも違ってくる。 E 靴底のヒール前端は、角がなく平らであるか、丸味のあるもので シニア層の靴にとって、靴底は重要だ。厚すぎたり、高いヒールがあるものはよくない。ヒールをはきなれた女性でも、3・5p程度が適当。 できれば、トップリフトの面積が広い、ぐらつかないものを選びたい。 F 靴底のこば面が、前に出ていないこと こば面とは、表底がつま先より出ている部分のことを指す。なるべく前方に邪魔なものがないほうが、転びにくい。 G かかと回りに芯が入っていて、しっかりできていること H かかと下部は、衝撃を吸収できるクッション性があること よく「軽くて柔らかい靴」という宣伝文句を見るが、中には軽さを追求するあまり各パーツを薄く、弱くしてしまい、一般の靴の基準に達していないものもある。そうするとかかとを支えきれず、ねんざしてしまう可能性も出てくる。 I 踏みつけ部分が、よくしなって曲がりやすいこと 親指と小指の付け根が曲がる部分の関節をポールジョイントとよぶ。靴のこの部分がいかに曲がって、歩行をサポートしてくれるかが鍵。 曲がるべきところが曲がらないと、足の血液の循環も悪くなる。その意味でも、曲がりにくい厚底はお勧めできない。 J 靴底は、適度な滑りやすさがあること 寒冷地仕様などで底に生ゴムが貼ってあり、グリップ性が高く滑りにくいと、かえって危険。 靴が止まりすぎるために、体が前に進み、つんのめる格好になってしまう。靴底の意匠に、滑りにくさがそれなりに考慮されていればよい。 原点に戻って、目的に合った靴選びをすることが大切だ。長く歩くためのものと、室内用のシューズとはおのずから異なる。流行のバレエシューズも本来は室内ばきで、長く歩くようにはできていない。日本人の伝統的なはき物を見ても、そのへんに買い物に行くときは下駄、草履などだが、長旅には草鞋をはき、しっかりとくるぶしで結んでいた。このように、TPOを考えたい。 取材協力:一般社団法人・足と靴と健康協議会 |
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