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 タイ通信 MUZINNA(ムジナ)
バンコクで注目される日本人によるセミオーダーブランド


 経済成長著しいタイの首都バンコクで、日本人の江森貴幸さんが立ち上げた靴ブランド「MUZINA(ムジナ)」が脚光をあびている。バンコクの中心部スクンビットの一軒家に広がる売場には、江森さんがデザインしたサンダルやパンプスがずらり。お客の9割はバンコク駐在員の家族など日本人だ。  ムジナの靴はセミオーダースタイル。好みの靴を選んだ上で、アッパー、インソール、ヒールを選んでもらい、オリジナルで仕上げていく。アッパーの種類は牛革、豚革、羊革、蛇革などがあり、色は70色から選べる。インソールは9色。ヒールの高さは2〜3種類そろっている。長さやつま先、足首を別サイズでつくることもできるため、足になじみやすく、歩きやすいと評判だ。一番の売れ筋であるサンダルのベースの価格は1590バーツ(約5700円)だが、お客のほとんどがさまざまなオプションをつけているため、平均価格は3000バーツ(約1万円)になる。  元バックパッカーだったという江森さんがタイに渡ったのは2005年。当初は日本の古着を販売するかたわら、オリジナルの洋服も販売していたが、やがてタイの靴職人に制作を外注する靴も手がけるようになる。ところが、その職人が所属していた会社がバンコクの工場を閉め、ベトナムに移ることになったため、江森さんは職人と手を組み、2008年にムジナを立ち上げた。  「親方がベトナムには行きたくないというので、いっしょにブランドをやっていこうと考えました。靴はできるだけミニマムに仕上げ、そこに柄を乗せるようにしています。お客さまにはツールとして靴を自由に楽しんでもらいたいですね」。

日本ではセレクトショップの別注品も手がける

 足馴染みがよく、自由度の高いムジナの靴はいまタイの人気ファッションブランドからも注目の的だ。ソーダやメンズワークルームといったブランドとダブルネームで靴を発表し、各種イベントからも引っ張りだこ。2010年からは日本での活動も始まった。展示会を開催してカスタムメイドの靴を受注するほか、セレクトショップの別注品も手がけている。  「今後はバッグやメンズの靴も充実させたいし、タイのクリエイターの作品を日本にも紹介していきたい」と江森さん。タイ在住の日本人のみならず、タイのクリエイターを魅了し、タイに根付きながら日本にもチャネルを広げて活躍の場を広げている。 01 江森貴幸さん 02 一軒家には美容院とカフェ(現在休業中)も同居。バンコクの中心部とは思えないほど閑静な一画に穏やかで優しい空気が流れる