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 2016年秋冬シューズMDの狙い目と売場展開
 アジアリング/坪谷聡子

シンプル&ベーシックから脱却、ブーツはミドルまで

「ノームコア」がファッショントレンドとして浮上してかなり経つが、今秋冬は変化が出てくる。シンプル&ベーシック一辺倒から脱却し、新しさを見せていきたい。


 レディスシューズ

「80年代調」と「ロマンティック」に注目

今秋冬は「80年代調」と「ロマンティック」がファッショントレンドとして注目される。靴でもその表現が欠かせない。ビッグシルエットのアパレルに負けないインパクトの強さを、素材、ディテールなどで具現化し、新鮮さを演出することが重要だ。
アイテム的には、今シーズンもブーツ苦戦が続くので、秋冬でもパンプス、カッター、カジュアルなどの丸物の展開が不可欠。これまでもシンプル&ベーシックな丸物の提案が続いており、今シーズンは昨年との違いや、今春夏との違いが分かりづらいと売上げにつながらない。お客の購買意欲をかき立てるような、新鮮さや魅力をどう表現するか、また売場でどう演出するかが重要となる。


ベルベット、ツィード

「ロマンティック」の表現として、欠かせないのが「ベルベット」。今秋冬のファッション小物では、注目の素材と言える。独特の光沢感がポイントで、ベーシックなアイテムでも、今年らしいアイテムに変身する。今年はカラーバリエーションもそろえて展開したい。エナメル、スエードとも異なる色合いなので、その違いが分かるよう、積極的に訴求しよう。
インパクトが強い素材なので、あまりデザインが凝ったアイテムにのせると、抵抗感も出てくる。客層によっては、シンプルなデザインでの取り入れもした方が良いだろう。
他には「ツィード」も注目の素材として挙げられる。レトロ感とコンサバ感を表現する素材として人気が高いが、今秋冬はレトロフェミニンの流れも依然として強いため、期待感は増す。通常のツィードだけでなく、今年はラメ入りのツィードが注目されている。ツィードは低価格まで広がっており、ラメ入りなどで差別することも必要だ。品の良い光沢感で、フェミニン系アイテムに取り入れたい。


グリッター

80年代調の影響で、注目されるのが「グリッター」。これまでも、シルバーなどで光沢を見せるものはあったが、この秋冬にはバリエーションが増え、さまざまな素材、光沢感が登場する。売場にきらびやかさを演出するためにも、アクセントとして取り入れたい。
今秋冬はラメ、スパンコールなどのキラキラ、ギラギラとした光沢感の素材が注目。ブルー、グリーン、ピンク、マルチなどのカラーグリッターが登場。定番化したシルバー、ゴールドに加え、色味も見せて展開する。
インパクトが強いので、素材感や色目、アイテム(デザイン)の組み合わせを考慮し、実売につながるアイテムを選びたい。表面積の少ないパンプスやカッターなどの丸物での取り入れ、あるいは部分的な取り入れが主流となりそうだ。


パンク

今秋冬はダークロマンティックがファッショントレンドとして浮上する。そのスタイルに合わせる靴として、ワークブーツやパンク調のアイテムが注目される。
パンクディテールとしては、スタッズ使いが一般的。今年は丸ビョウ、角ビョウなどのスタッズ使いが増えてくる。シルバー、ゴールドのスタッズを、アッパーの色やアイテムにより、使い分けたい。
他にもボリューム感のあるチェーン、バックルなど、各種金具使いが注目される。
底回りのボリューム感は、この秋冬にも継続する。これまでは白底のプラットフォーム、ユニットソールが多かったが、秋冬には黒底タイプが増加。人気が浮上してきているエアソール、タンクソールのアレンジも拡大が見込まれる。



ミドルブーツ

今年もブーツは全体的に苦戦が続く。特にロングブーツは、これまでティーンズ〜ヤングのトレンドアイテムとして注目され、ヒットしてきたが、ここ数年はティーンズ〜ヤングにほとんど支持されていない。彼女たちはサイハイソックスなどをロングブーツ代わりとすることで、ファッションをラクに楽しんでいる。その傾向は今年も変わらない。ロングブーツのリアルユーザーは、30代以上になっている。そのため、大人の女性が満足するデザイン、品質、価格を提供することが重要になる。
今年のブーツのトレンドは、ミドルブーツ。本来のミドルブーツはふくらはぎ丈だが、今年は少し長めのショートブーツが中心。それら全てを「ミドルブーツ」と呼んで展開しよう。ショートブーツは丈が短めになっているので、逆に少し長いだけでも新鮮に見える。
ミドルブーツはエレガンス、カジュアルの両面で扱いたい。シンプルなタイプでの提案が難しいようなら、折るとブーティ、伸ばすとミドルという2ウエイ・タイプでの展開でも良い。
ワーク系のレースアップブーツ、エンジニア・アレンジなどは、ベーシックでもあり、比較的提案しやすい。見慣れたアイテムで丈の長さで新鮮さを訴求する方が、抵抗感なく受け入れられそうだ。


ブーティ〜ショートブーツ

 今年もブーツはブーティ〜ショートブーツが主流となる。気象条件に左右されづらく、長期間の着用が可能なので、お得感があるアイテムといえる。特にブーティは丸物感覚ではけるので、年々人気が高まっている。昨年まではエレガンスタイプのブーティが圧倒的に多かったが、今年はカジュアルタイプも増やしていきたい。トップラインの形状を変化させることで、新鮮さも表現できる。
昨年はサイドゴアがエレガンス、カジュアルの両方でヒットしたが、今年は市場に定着した状態。トレンドではなくなるので、昨年よりも扱いに注意が必要だ。
 昨年はブーティ〜ショートブーツでもチャンキーヒール、ミドルヒールなど、歩きやすい太目のヒールが提案されるようになった。今年もヒールの高さ、太さなどのバリエーションを増やし、選びやすい状況をつくるように努めたい。注目はキトゥンヒール(※)のブーティ。きれいに見えるが、低めヒールで安心できるという点を訴求しよう。
※3〜5cmの低い丈のかわいらしいヒール


ウェスタン、ボヘミアン

 昨秋にトレンドとして話題となり、今春夏にマストレンドとなったボヘミアン。今秋冬は昨年とは違った形で提案する必要がある。
 昨年はフリンジばかりだったが、今年は落ち着く。そこで注目されるのが、ウェスタンブーツ。本格的なミドル丈のウェスタンブーツはまだ厳しいが、アレンジしたショート丈のアイテムに期待が掛かる。
 ヒールアップする、トップラインをスカラップ(波状模様の縁飾り)にする、切り替えをウェスタンブーツ風にするなど、ちょっとしたディテールでウェスタンらしさを出せれば良い。
 他にもファーやボア、ウッド風底回りなどで、ボヘミアンやサボブーツの雰囲気を出したアイテムなども、面白い存在となりそうだ。


スポーティー

昨年大人気だったスポーティーは、この春夏は動きが鈍くなった。やはりスニーカーに取られたことが要因と言える。その傾向は秋冬も継続する。そのため秋冬では、スニーカーブランドで提案されないようなアイテム、素材、色などを展開し、差別化を図りたい。主力とはなりづらいが、オシャレでラクなアイテムとして、幅広い客層に提案することが重要だ。
 素材では前述のように、ベルベット、ツィード、グリッターといった今年らしい素材を、スポーティー・アイテムにも取り入れる。スタッズ、ファスナーといった金具使いで、パンク風イメージをプラスしたアイテムも期待できる。
 ハイカットやミッドカットの、ブーツ感覚ではけるスポーティー・アイテムは、ブーツに抵抗がある方に向けた秋冬アイテムとして訴求したい。
 また今年は、スノーブーツがファッションとして注目される。オシャレでありながら、機能性も優れているということで、幅広い客層の支持を得る。ムートンブーツからのはき替えも増える。雪が振る前からトレンド商品として購入していただけるように、秋から展開し、売場でも積極的に訴求しよう。
 


メンズシューズ

「80年代調」スニーカーとMIXテイストのシューズで

 メンズではスニーカーの勢いが衰えず、客層も広がってきている。秋冬もまだスニーカー全盛の流れは変わらないが、そろそろ危機感を持たないと、来年以降の苦戦が危惧される。やはり新しいモノをしっかりと提案していかないと、お客が離れてしまう可能性が高くなる。
 メンズでも、レディスで見られる傾向が、タイムラグもなく、同時に出てくるようになった。今秋冬では、前述のレディスのように「80年代調」が注目される。これはシューズよりもスニーカーでの取り入れが多いだろう。
 メンズシューズではMIXテイストが進む。相反するテイスト、素材感などをMIXさせることで、新しい傾向が生まれてくる。メンズでも新たな表現を意識することで、差別化することができるようになる。
 

アメカジMIX

メンズではアメカジがトレンドとして浮上する。アメカジはベーシックなテイストではあるが、お客の年齢層などで好むアイテム、デザイン、ブランドが異なる。自店の客層にきちんと対応できるように、品選び、品ぞろえをしよう。
 ティーンズ〜ヤングは、ファッショントレンドとしての意識が高いので、ミリタリー風ブーツなどが新鮮。シンプルなレースアップブーツが主流。モード感やソフト感など、これまでのアメカジとは異なるテイストとMIXさせることがポイントだ。
 ミドル以上の方は、老舗ブランドの定番アイテムが必須。そこを柱にしつつ、素材、色などで新しさや面白さを入れていこう。
 シニア(団塊世代)は趣味を楽しむ方が増えてくるので、バイカーブーツ(ツーリング用)、トレッキングブーツ(軽登山用)のアイテムを提案するといい。


トラッド&ベーシック

完全にトレンドからは脱しているが、トラッドやベーシックは、メンズでは根強い人気がある。今年も基本的にはトラッド、ベーシック・タイプが中心に動いていく。
 ブーツでは、シンプルなレースアップタイプが主流。丈の長さによってイメージが異なる。チャッカーブーツは、これまでスエードタイプが多かったが、今年はスムースの人気が高まる。ソフトスムースも加え、イメージを変えたい。柄物の取り入れを試みることで、カジュアル感を強めることも一つの手だ。
 少し長めの丈では、ワークブーツのイメージをプラスすると、アメカジ×トラッドとなり、汎用性も高く、客層も広くなる。
 短靴でも、オックスフォード、ローファーといったベーシックアイテムが中心となるが、素材でカジュアル感をプラスするなど、ガチガチのトラッドイメージにならないよう、崩すテクニックが求められる。


ボリューム短靴

メンズでも、ボリュームシルエットのアパレルが出てくるので、そこに合わせる靴も、さまざまな形でボリューム感を表現したアイテムが求められる。レディスではプラットフォームやユニットソール、タンクソールなどが定着してきている。メンズでも、底回りにボリューム感を出していきたい。
まずはタンクソール。アメカジの流れからも出てくるので、アイテムバリエーションを拡広げていこう。プラットフォームも登場するが、ラバーソールのように重いアイテムは避けたい。ウレタンなどで見た目のボリューム感はあるが、実際の重量は軽い底材を選ぶと良い。
他には、久々におでこトウに注目したい。丸くてボリューム感のあるラストが、懐かしさと可愛らしさを演出する。


スポーティー

メンズではスニーカー人気がかなり高く、シューズがスニーカーに完全に喰われている状態が続いている。しかしそれでもスニーカーを好まない方、スニーカーでは満足できない方も多い。レディス同様、スニーカーブランドでは提案できないようなアイテムを、シューズブランドでセレクトしておきたい。
 やはり強いのは、ハイカット、ミッドカットタイプのスポーティー・アイテムだ。ブーツではなく、ハイカット、ミッドカットのスポーティー・アイテムを、ブーツ代わりとして着用する人も多い。素材、色などで、カジュアルブランドの持つ面白さを強調し、スニーカーとの差別化を図りたい。
 また、実売となっているアイテムを白底、スニーカーソールに変えることで、新たなイメージを演出することができる。ブーツ、短靴の両方で多く出てくる。メンズシューズの底の薄さ、衝撃吸収性のなさに苦しんでいるお客も多い。スニーカーソールでその欠点を補うことも考えたい。
 アダルト世代には、イタリアンイメージのスポーティーカジュアルが好まれる。スニーカーでは出せない独特の雰囲気が重要だ。
 レディス同様、メンズでもスノーブーツに期待が掛かる。アウトドアブランドを中心としたスノーブーツをしっかりと展開し、雪に関係なくオシャレではくことを、啓蒙していきたい。親子提案、カップル提案で訴求力を高めよう。


ドレス

ドレスは多様化していることもあり、好調な売場が多い。アイテムバリエーションを広げ、購買意欲を高める商品構成が必要だ。
期待はブーツ。ドレスブランドだけでなく、カジュアルブランド、アメカジブランドなどを組み合わせ、ビジネスに対応できるアイテムを集積する。オン・オフ兼用できることで、ブーツの価値観を高める。これまでのレースアップのショートブーツだけでなく、ジョドパー、サイドゴア、ブーティなどアイテム、丈の長さ、ラスト、ソールなどのバリエーションを持たせよう。
短靴ではラウンド・ラストが主流になってくる。ヤングはラウンドで育ってきているので、ナチュラルなラウンドトウを強化したい。ミドル以上の世代には、ロングノーズ、チゼルトウ(※)などの人気も高い。適正価格帯に絞り込み、ファン客を取り込むことが重要だ。
最近のドレスは、ソールの重要度が増している。防滑性、衝撃吸収性が高いソールに、ティーンズ〜ヤングもはけるオシャレなアッパーをのせることがポイント。スニーカーソール、タンクソールなど、カジュアルソールと組み合わせると、機能面だけでなく、カジュアル感もアップし、汎用性も高くなる。
※つま先を鋭角にカットしたトウライン