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【靴専門店の取り組み】

 ジーフット(東京)

6月からオムニチャネルの買い物体験ができる機器 「ぴたトリ」が登場

 ジーフットは数年前からオムニチャネル化に取り組んでいたが、この1年で飛躍的な進歩を遂げた。同社の考えるオムニチャネル化は、全国に展開されている800の実店舗を機軸に、Eコマース(EC)と実店舗を連携させていくもの。ECで注文、店舗での受け取りやためしばきを可能にし、店舗への送客を重視する。
 同社のEC売上げは年々拡大しており、2015年度には12億円弱(売上げ全体の1・1%)となっているが、まだまだ伸びる可能性を秘めている。これと全国の店舗を結び、相乗効果をあげていく。

iPadと客注システムを結べば、小型店でも1万足の在庫が持てる

 オムニチャネル化を強力に促進したのは、西野実治デジタルシフト推進部長だ。イオンリテールからイオンのEC「イオンショップドットコム」の責任者となり、ネットスーパーの基盤を運営する「イオンリンク」の執行役員を務めた、デジタル化のプロである。
 西野部長が目を付けたのが、ほとんどの店舗にiPADが支給されていることと(6月現在約900台)、「客注システム」が開発されていることだった。アスビー業態ではiPADを使った接客が通常となっているし、1月に開催された全社規模のロールプレイングコンテストでは、タブレットを活用した接客を行ったグリーンボックス銚子店竹内佑太店長が審査員長賞に輝いた。2013年からスタートした客注システムは、iPADを使った取り寄せシステムで、簡単にいえばショップ版オンラインストア。検索ワードやコード番号、品番などを入れると商品が探し出せるようになっている。
 「いいシステムでしたが、活用がまだ不十分と思いました。使うも使わないも、お店のスタッフの気持ちひとつ。啓蒙活動が大切と、昨年6月の着任以後、100を越える店舗を巡回し、好事例を拾い上げて紹介しています」(西野部長)。
 昨年8月からは毎週1回社内イントラで「オムニチャネル通信」を配信し、店頭で工夫している事例を紹介。「ネットで注文、お店で受け取り」などのPOPの例などをピックアップして水平展開している。POPでは、親会社のイオンも客注システムの告知看板を作成して協力。ことに、地方で規模の大きくない店舗が、サンプルを展示し「お取り寄せできること」をアピールして効果を上げている事例などは、他店の刺激ともなった。ECサイトの品ぞろえは約1万点、実店舗であればアスビー幕張店(約700坪)ほどの規模となる。全店がこの規模を持つことは、土台無理な話だ。
 こうして、客注システムを使った「お取り寄せ」件数は急速に伸び、2015年度は2万件(対前年比660%)となった。16年度の3ヵ月間(3〜5月)ではすでに1万5000件となっており、昨年度の倍である4万件を越えるのは確実だろう。
 発注システムでの取り寄せは、当初は週2回のルート便に乗せていたが、遅くなるので宅配便を使っている。腕のいいスタッフだと、サイズや色違いを2足くらい取り寄せて接客、販売してしまうこともある。
「狙いは実店舗に足を運んでもらうことで、靴の専門スタッフがフィッティングして販売できることが強み。実店舗だとポイントや感謝デーの割引などお得感もあります。店側のメリットは、電話で(あちこちの店舗に)在庫確認しなくてよくなったこと。かける方も受ける方もストレスが高く、この煩雑さが解消されたことは大きいです。店頭からの取り寄せではたまに陳列商品だったりしますが、このシステムを使うとEC在庫なので、新品が手元に届き、安心です」(西野部長)

店頭からでもスマフォからでもECへアプローチしやすく

 オムニチャネル化の促進について、同社はすでに次の手を打っている。店舗情報をラインで発信する「ライン@」もスタートさせた。企業が個人のようにラインで友人をつくって情報を送るものだ。これは20店舗からスタートしている。
 また、6月からは「ぴたトリ」というオムニチャネルの新サービスを開始。店頭にデジタルサイネージの検索機を設置、店頭の商品だけでなくオンラインショップの商品も素早く在庫確認と取り寄せができるというもの。その場で購入判断ができない商品は、URL情報をQRコードで持ち帰り、家に帰ってからゆっくりオンラインショップで閲覧できる。ほしい靴があったらプリントアウトして販売スタッフに渡す。店頭になければ客注システムで取り寄せることができ、自宅配送か店頭受け取りか選べる。店頭の場合商品は2日で到着する。
 「グリーンボックスは人員が不足しがちなので、『ぴたトリ』が販売の手助けになってもらえれば。値札のバーコードをスキャンすると商品の写真が出てきますし、背後に流れている商品写真にタッチするとこちらからも写真と詳細が出てきます。お客さまも、興味を持ってさわってくれているようです」(デジタルシフト推進部 高松良太郎マネジャー)。
 ただし、現在はまだプロトタイプで、これから状況を見て改良していくという。
 「ぴたトリ」はアスビー岡山店、同鉄炮町店、同幕張店、グリーンボックス越谷レイクタウン店、同八千代緑ガ丘店の5店舗でスタート、今後100店舗まで拡大していく計画だ。
 さらに、スマートフォン用アプリ「ジーフットアプリ」も今年度中に開発する。アプリをダウンロードすれば、クーポンや情報の配信が受けられる。アプリからECに入ってくる可能性が高く、これはECへの流れがPCからスマフォに変化してきていることを意味する。ジーフットの現在の状況は、検索で6割、買い上げの5割がスマフォからだというから、早いうちにスマフォからの入り口を整備し、見やすくすることは重要だ。

ECと実店舗の顧客層が同じだからこそオムニチャネル化が必要

 同社では「オムニチャネル売上げ」として、店頭iPADでの取り寄せ(客注システム利用分)とECの取り寄せ(店頭受け取り分)を合計した数字を計上しており、これが15年度には1億7000万円に上った。先のEC売上げと合わせて13億円強という数字だが、今後は18億円にまで拡大しようとしている。今年度の目標は計15億円(対前年度140%)で、最終的にはEC売上げを全体の5%(50億円)にまで引き上げる。
 「以前はECと実店舗の購買層・年齢が異なっていましたが、現在はほとんど同じ。ECの利用客も、10代からシニアまでと幅広くなっています。売れ筋もあまり変わらない。だからこそ、オムニチャネル化が必要なのです。今後は各店に配備されている足型計測器とも結びつけ、スマフォのアプリと連携させたい。例えばお子さんが足型測定されたら、何年か後で『成長されたことでしょう、また測定にいらっしゃいませんか?』とクーポン付きのメールを送る。よい販促ツールになると思います」(西野部長)
 着々と進むジーフットのオムニチャネル化は、これまで配備されていたiPADや客注システムをうまく活用、同社の得意とする「水平展開」(「答えはすでに足元にある」という松井博史会長の考え方によるもの。先端的な店舗の事例を全体に広めていく)によって実績をつくったものだ。「ぴたトリ」など新機種やアプリも投入、オムニチャネル化にむけて本腰を入れている。
 西野部長は「同業より他業種のほうがオムニチャネル化が進んでいる」と、異業種の企業のシステムもにらみながら、今後の施策を考えている。


ジーフット
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