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特集 2017年版 売上高ランキング上位290社

全体傾向


靴・バッグ企業は前年クリア

2017年版靴・バッグ業界の小売、卸、製造と関連資材の3業種・6業態(バッグは卸、製造はひとくくり)の売上高上位50社(バッグ小売は36社)、計286社をランキング集計し、表にした。総売上高はおよそ1兆7700億円、前期比4%増と伸ばしている(前年度決算期変更の企業を除いている)。靴卸とバッグ卸・製造に高い伸びを見せた企業が目立つ一方、前期を割った企業も多い。
 業種・業態別にみると、前期割れは資材のみで、ほかは全て伸びている。伸び率の高い順の靴卸(前期比8%増)、バッグ小売(同6%増)、靴小売とバッグ卸・製造(同3%増)、靴製造(同1%増)だった。


靴小売

半数以上が前年をクリア

 靴小売の50社合計売上高は、5700億円、前期比3・0%の増加は前期と同じ。前期を上回った、あるいは前期をキープした企業は30社、前期割れは20社という結果。婦人を中心にシーズン商品が厳しい市況下にあったが、スニーカーなどカジュアル商品は売れており、売上げを伸ばす結果となった。
 1000億円超える靴チェーンは、前期と同じ3社で、いずれもさらに伸ばしている。100億円台の小売店は前期と同じ6社。当期はダブルエーが22%の伸びで100億円台に入ったものの、かねまつが97億円に下げており、数は前期と同じとなった。
上位10社の売上げ合計は、50社全体の82%を占めており、大手小売の寡占化状態はさらに進んでいる。
当期ランキングでの伸び率トップは、ビルケンシュトックジャパンから社名を変更したベネクシー。小売業態に絞って多店舗展開が、売上げアップにつながった。
1店舗の売上げ規模は、大型総合ディスカウント店のヒラキ。靴専門店では、大型店舗で地区一番店戦略を推し進めるシューマートで、3億円台である。次が同じく西日本を中心に大型一番店を展開する東京靴となった。

 当期売上を伸ばした企業に、その要因を聞いた。

シューマートは、次のように分析している。
「強みは、あくまでフルラインの展開をめざし、300坪を基準とする大型店であること。300坪までに増床した店舗は、すでに計20店舗を超える。圧倒的な広さと品ぞろえで、地域一番店の地位を確立している。
大きな武器は人材。シューフィッター46名を抱え、その中にはパート社員もいる。希望者を募って経験を考慮に入れながらシューフィッターの受講者を選抜、費用は会社が全額負担する。パート社員も含めて全員がフットゲージを使って足型計測ができるし、子供靴のシューフィッターもいる。社員が、FHA(足と靴と健康協議会)の講師をつとめているケースもある。社員登用制度があり、本人の希望と店長の推薦があれば、正社員への道が開かれる。これが、モチベーションアップにつながっている」(シューマート)。

東京靴は伸びの要因を次のように話す。
「3月に1店舗増えているほか、客単価が上がったことが大きい。靴業界全体にいえることだが、レディススニーカーが好調だった。ことに、高額なブランドスニーカー(ナイキ、アディダスなど)の動きがよく、客単価を押し上げる結果となった。スニーカーは、メンズや子供も含めて好調だったが、レディスの客数が増えたことが売上げの伸びにつながった。ほかのゾーンでも単価は上がっているが、客数は微減している。しかし、客単価は総じて上がっており、全体の売上げを押し上げることとなった。
 もともとスニーカーの売場は大きく取っている。これは、今後も変わらない。スニーカーについては、今後も伸びていくと思っている。だが、流行のピークをややすぎていることも事実だ。頭打ちになっていくことも考えられ、そのぶん広告宣伝に力を入れている。ただ、新聞を取っている人も減少しているので、さまざまな媒体を試しているところ。2016年からSNSに取り組んでいて、ラインやホームページを使って情報発信にトライしている」。
「関東、関西地区のSCを中心に、出店を続けているのが第一の要因。昨年から店舗数が5店舗増えているが、不採算店をクローズしてきた結果なので、実際の出店数はもっと多くなっている。
もう一つの理由が、ネットの売上げが上昇したこと。現在10%ほどになっている。とくに何か方策を立てたり、ヒットアイテムが出たというわけではなく、地道な努力が実を結んだという感じ。
今後は『このアイテム』というのではなく、お客さまのすそ野を広げる商品開発をしていくと同時に、価格帯(パンプスで5900円、ショートブーツで7900円程度)を維持しつつ質を高めていきたいと考えている」(ダブルエー)。

フィットグループの中では一番の伸びを見せたニッカは、マーケットやライフスタイルの変化に対応した店舗開発を推進し、また多様化する顧客ニーズに対応すべく顧客との接点強化施策を展開し、店舗運営を通してのブランド価値の向上と売上の拡大に努めた。
商品・アイテム別では、紳士靴につきましては、防水・透湿機能など付加価値の高いビジネスシューズを中心に好調だった。
顧客との接点強化施策としては、スマートフォンの普及などにより多様化する購買行動の変化に対応すべく、「リーガルシューズWEBサイト」をリニューアルし、既存顧客の利便性向上、新規顧客の獲得ならびにWEBから実店舗への送客等などシームレスな購買環境実現に向けた、オムニチャネル化を推進している。
前回と同じ12位とランキングされたつるや(愛媛・松山市)は、「ネットショップの伸びが大きい。これまで自社サイトとヤフーの二本立てだったが、今年3月からアマゾンを始めた。アマゾンはアクセス数が多く、これによって売上げがあがったといえる。ことに、市場になくなっていたアイテム(子供靴の一部、ニューバランスやアディダスの一部のライン)がヒットした。
ネットショップ全体のアマゾンの占める割合はすでに53%になっている。ただし、アマゾンは手数料が15%と高く、基本的に値引きはできない。そのため、送料無料にはできず1万円以下は送料をいただくことにしている」(鶴田学社長)と話す。

6%の伸びを見せたミタキヤは、好調要因と最近の動きを以下のように話す。
 「店舗が2店舗増えていることと、レディスの基本的な流れがカジュアルからパンプスにシフトしていることがあげられる。冬季でもショートブーツよりきれいめパンプス、ブーティがよく動いている。ロングブーツなどの長いものはまだ難しいが、ヒールものが好調だ。メンズではカジュアルもドレスも、革ものが動くようになっている。
 メンズもレディスも、スニーカー系から革ものにシフトするようになったのではないか。また、「いいものを長く」という傾向はある。当社は、低価格帯は扱わない。革靴は1万円台後半から2万2000〜2万3000円くらい、ケミカルでも5900円以上。お客さまは、しっかりトレンドに合っていれば価格を意識せずに買われている。価格帯の低いところまで広くMDを組むとうまくいかないだろう。店舗MDとしては、客単価をあげることを考えている。(大井克元社長)