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 女子力が動かす 丸上  


ときめきを感じるパーツを企画する

バックルやヒール、ボタンをはじめとする装飾パーツを企画・製造する丸上(東京・台東区)。同社の強みは、企画部署を持つところだ。オリジナル商品へのこだわりの表れである。同社の心臓部ともいえる企画デザインを担当するのが、商品室の佐藤裕香さんだ。
同社は年2回、新作の展示会を開催し、年間約100点の新作を提案する。最近は流行が早いため、佐藤さんをはじめ若いスタッフの新しい感覚を重要視している。
「私はデザイン画を描いて考えるより、リボンやスタッズ、ラインストーンなど実際の素材を手に触れながら、考えるほうがやりやすいです。もうひとひねりほしいと思うデザインについては、箱の中で1週間くらい寝かせてから、考えるようにしています」(佐藤さん)。
 客観的に見ることによって、何をプラスすればよいのか、どこを工夫すればよいのかが発見できる。金具類は製図を引いて、同じビル内にいる技術者にサンプルをつくってもらう。サンプルを試行錯誤しながら、完成形を目指していく。
「私が企画するバックルやリボンは、私と同じ世代の20代や30代をターゲットとするシューズに装飾することが多いので、自分がときめくかときめかないかを大切にしています。“キュン”とときめいて、悶絶までいくのが最上級」(佐藤さん)。

自分がときめくものを、高品質なもので提供する

 最上級を目指して日々奮闘中だ。自身がときめかないデザインは商品化しない。自分がときめいてこそ、他の人にもときめきが伝わるから。1階にある総合販売課のスタッフとの情報交換は、実際の動きを知るうえで重要な情報源となる。
 一番大変なのは、企画した商品が現実的な価格で製作できるかどうかだ。製作費を抑えつつ、しかもときめくもの、高品質のものを商品化していく。そんな商品ができた時はやりがいを感じる。最高にうれしかったのは、佐藤さんがデザインした装飾パーツを、大手の靴メーカーに採用されたときである。その装飾パーツがより輝いて見える瞬間である。
「今、気になっているのは、麻素材や革素材など天然素材です。また、透明感のあるもの、キラキラしているもの、クラフト感のあるものにも注目しています」(佐藤さん)
 次回の展示会にはそれらの素材の新作が並ぶ予定だ。展示会のイメージボードの作成も佐藤さんが任されている。ここでは、これまで平面だったイメージボードを、流行の素材をふんだんに取り入れ、立体的にバージョンアップさせる。

「MARUJO」の名前を他業種にも広める

 同社が現在、力を入れているのは、靴業界外に「MARUJO」の名前や存在を認知することだ。他業種だけでなく、クラフトを中心とした個人で活躍する作家や一般の人々にだ。そこでも力を発揮しているのが、オリジナルなアクセサリーを企画する佐藤さんだ。
同社は佐藤さんの提案で、インターネット販売サイト「ハンド・メイド・マーケットminne(ミンネ)」に昨年9月頃から出店している。
「私がジュエリーカレッジに通っていた時、苦労して装飾パーツを探していました。全国で私のように装飾パーツを探すことに苦労している方たちに向けて、さまざまな装飾パーツを提供したいと思ったのがきっかけです」(佐藤さん)。
「スタッズがこんなに豊富にあるので嬉しい」といったレビューも届き、現在では全国から注文がある。

日本ホビーショーに出展する

さらに、認知度アップのねらいで、今年は世界最大級のハンド・メイド・イベントである日本ホビーショーに出展した。この時の会場の設営や商品の構成などのディレクションを、佐藤さんが担当した。
「日本ホビーショーでは、まず多くの人にMARUJOを知ってもらうことを意図しました。マルジョウブルーをテーマに、POPも商品の袋もブルーに統一し、ビジュアル的にアピールしました」(佐藤さん)。
 袋詰めにした美錠、スタッズ、バックル、ボタン、ラインストーンなどを、駄菓子店のようなワクワク感のあるイメージで演出し、即売を行った。ボタンやスタッズの詰め放題も上々の評判で、同社のブースには3日間で約3000人が訪れた。
「当社はスタッズについては、日本一の品ぞろえを誇っています。こういったことを、もっと多くの人に知ってもらいたいですね。また、品質にこだわり続けてきた当社のパーツを、もっと多くの靴デザイナーに使っていただけるようがんばっていきたいと思います」(佐藤さん)。


丸上
東京都台東区浅草5-44-11
TEL 03-3874-6281