今月の記事・ピックアップ 2017・9
 HOME > フットウエアプレス > 地方専門店紹介 ラ・ビアン 土手町店 
ラ・ビアン 土手町店(青森・弘前市)

 土手町は弘前の中心街だ。ラ・ビアン土手町店は、さらにその中心部、老舗百貨店「中三」の隣にある。開店は6年前で、ここに長く靴店を営んでいた老夫婦から引き継ぐ形となった。ラ・ビアンは仙台市の靴卸・エド商事が運営する。
 店舗を任されているのは、吹田妃佐(ふきた・ひさ)店長と高谷順子さんの二人。吹田さんは靴の販売歴40年、高谷さんも15年以上とこの道のベテランだ。

売れ筋トップは「アキレスソルボ」

 「弘前は城下町。性格も穏やかで、優しい人が多いですね。お客さまは地元の方で、60歳以上の年配の方々。大型ショッピングモールだとゆっくり買い物ができないと、ここにいらっしゃいます。接客には時間がかかり、早くて30分、長いと1時間半のことも。世間話も含めて、お話しながら足に合う靴を探していきます」(吹田店長)。
 置いているのは、はきやすい女性の靴。サンダルからタウン、レインまでと種類も豊富で、ブランドは「パンジー」「アキレスソルボ」「ハッシュパピー」「ヨネックス」「サロンドグレー」「ドナミス」「H.P.S」など多岐にわたっている。価格帯も広いが、中心は1万1000円くらい。
売れ筋はアキレスソルボで、とくにSRL0520≠ェ好評だ。ライナーが起毛素材で柔らかく、足あたりがいいことが要因となっている。4〜5月にかけて20〜30足が売れた。初めはなかなか受け入れられなかったが、いったんよさがわかるとファンがつき始め、今ではすっかり浸透した。


年配の顧客に心優しい接客対応

 地方都市だけあって、店頭ではほのぼのとした接客風景が繰り広げられる。横浜に在住していて実家が弘前にある人が、1年に3〜4回、高齢のお母さまをともなって訪れる。大阪に在住している人でやはり実家が弘前の人が、「いつもとても忙しくて買い物にいく暇がないから」と、帰省の折りにお母さまと訪れ、自分のものもついでに買って自宅に発送する。
 「シニアのお客さまが多いので、足に何らかのトラブルを抱えた方がほとんど。外反母趾、巻き爪、足の左右の大きさが異なる、ウオノメやタコなど、さまざまです。それだけに、フィッティングには気を使いますね。こういうのがほしい、ではなく『私に合うくつないの』といらっしゃって、もう座って動かない。足を見れば大体の状態がわかりますので、たくさん靴をお持ちしてためしていただいています」。
 合わない靴をお勧めして、足の状態が悪化してしまうと困ったことになる。大きめの靴を好む人も多いが、足が靴の中ですべり、転んでしまうことも。そのため、必ずためしばきをして比較してもらう。幅の広いものをお好みの方も多いので、仕入れも幅の広いものを中心に選んでいるという。アキレスソルボのインソールも合わせてお勧めし、フィッティング効果をあげている。



冬季には雪に強い長靴が売れる

 取材時は8月上旬、ちょうどねぷた祭りの最終日とあって、街は観光客で賑わっていた。しかし、10月下旬に山に雪が降ると、長い冬が急速に近づいてくる。冬物は早くも10月中旬からの展開で、11月には長靴が売れ筋となる。ムーンスターのハイドロテックソールの長靴「スポルス」、アサヒシューズの「トップドライ」、ゴアテックスを使ったマドラスの「マドラスウォーク」など実用的な長靴が動く。
おしゃれな革ブーツはほとんど売れない。何しろ1日に1メートル以上積雪をみる日もあり、メインストリートでは除雪車が行き交うのだ。そんな日々に、おしゃれなタウンシューズをはいて街をあるくことなどできない。高谷さんによれば「雪質もさまざまで、滑り具合が違う」という。
 顧客を大切にしており、顧客管理もしっかり行っていて、すでに200人ほどの顧客カードを持っている。
 絶えず「お客さまの喜ぶデザイン」を意識して仕入れ、弘前の暮らしに密着した靴を売る。だからこそ、郊外に大型ナショナルチェーンのある土地でありながらも、多くの人々の支持を得ることができるのだ。

ラ・ビアン 土手町店
弘前市土手町68
電話 0172・33・3181

(価格はすべて税込)