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インタビュー パンジー 畑中孝之氏

創立55周年を機に新社屋を落成。18年はものづくりの原点”を再確認する年になる

―旧本社の近くにモダンな新本社ビルが建ちました。

「旧本社ビルは、建ててから50年になります。古いので維持費などのコストが掛かり、耐震性の問題もあるので新しいビルを旧本社の近くにつくりました。当社は今年で創立55周年になります。新本社ビルはその記念事業の一つですが、初代から託された宿願でもありました。次の40年、50年に向けて、先輩から受け継いだバトンを若い世代に渡していかねばなりません。」
「新本社は敷地が240坪。40年前からこの日に向けて取得し、以前は倉庫や駐車場として使っておりました。6階建てで、1階が品質管理室、試作機械室、展示室。2階=企画開発室、3階=グループ全体の事務、4階=会議室、5階=食堂、第二展示室となっており、5月22日〜25日には5階のフロアー全体を使った秋冬物本社展示会を予定しておりますので、改めてご案内申し上げることになります。」

―「パンジー」が遂に2億足販売を達成しました。
 
「1963年に販売を開始して以来、本年の11月7日に2億足販売を達成しました。1億足目までは速かったのです。当初は380円、580円のヘップサンダルなどが主でしたから。ここから20年は、靴のアイテムも増えて平均単価が上がりスピードが鈍ってきました。」
 「つねに、足へのやさしさを考える“がモノづくりのコンセプトで、長年ご愛用いただける商品を第一にしています。ミリオンセラーで辿る2億足を展示会で御披露しました。室内履きなどの生活提案を前面に打ち出すなど、ちょうど社名をハタナカからパンジー変えた頃が提案型で売場を面展開する商品構成への節目でした。近年は靴のアイテムも増え、スニーカー、レイン、ケアシューズなどのライトカジュアルが充実してきました。」

―商品づくりでは中国が拠点になっていますね。

「1994年2月、江蘇省准安市に独資の自社工場の『チャイナアペックス』を開設し、4月から稼働しました。もうすぐ25年になります。本社と同様の品質管理部門や試作開発部門もあり、徹底した管理に基づき操業しています。12年12月からは、さらに環境・設備を拡充した新社屋に移転。部品加工から完成品まで、日本国内の自社工場と連携し、独自の国際分業体制を築いています」
「会社全体の日本市場向け生産量は年間350万足で、中国自社工場ではその80%を占めるに至っています。残り20%が和歌山の紀南パンジーで生産しています。中国市場では年間18万足をネット販売しており、香港、韓国、台湾、シンガポール、タイ、ロシアなどを合わせると35万足を別途生産販売。新年度は40万足が目標となります。」


―展示会見ていると、これから靴のアイテムが増えてきそうな印象です。

「いま靴の割合が6割くらいあります。ただ、靴はセンチサイズの在庫が必要で、室内履きのようにSMLサイズでは済みません。接客もあまり要らない。一方、靴は在庫量も要るし、フィッティングスペースも接客時間も掛かる。長所と短所があるんですね。SMLサイズ商品の充実を図ることが、コストやリスクを軽減する経営手法として大切なので、常に頭の片隅に置いております。」

―コーナー展開など売場提案に力が入っています。直営店も増えてSPA的な動きも見られます。

 「商品開発はもちろん重要ですが、これからは売り方を提案する時代です。もう展示会で注文をもらい、代理店にばらまいて、という時代ではないのです。商品提案とともにライフスタイル提案を行わなくてはいけない。そのためには、どういう売場で商品をくくって見せるかが重要になってくると思います。」
「私たちはあくまでメーカーですから、SPA的に見えるのであれば、それはSCM(サプライチェーン・マネジメント)の全ての段階を理解しようとする手段に過ぎません。いま、取り組まないといけない課題は供給プロセスの改革です。」
「自社の努力だけでは解決し得ない多くの課題を抱える事態と言えます。
資材調達、商品情報、開発、生産、納期、売場改革、提案方法などその全てにおいて信頼できるパートナーと協力し合い、補い合うことが大切です。いま社員の平均年齢は41歳ですが、提案する力を持ち始めており、今後に期待しています。」

―リアル売場のどうしていくか、業界全体の大きな課題になっています。

「インターネット通販が増えてきて、リアルの売場はどうしたらいいのか、切実な問題になっています。原価を見抜く眼を持ち始めた消費者と向き合う上で大切なことは、誠実なものづくりと、適正な価格での提供です。そうした企業のみが生き残る時代となりました。新しい年は、ものづくりの原点を再確認する年になりそうです。」


▽(株)パンジー 大阪市浪速区日本橋東1-11-8 TEL, 06-6631-0351.