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 高校生のときから靴にも医療関係にも興味のあった中井要介さんは、上京して義肢装具士の養成学校に入学した。やがて「ぜひドイツに行って勉強したい」と考えるようになった。
 「仲介してくれる協会があり、2005年にドイツに渡りました。最初に紹介してもらった修行先は、2〜3ヵ月実地、2〜3週間学校というスタイル。その後専門学校の先生に優れたマイスターのいる修業先を教えてもらい、自分で電話して移籍先を見つけました」。
 ゲゼレ(マイスターの前の国家資格)を取得、もっと実地の勉強を続けたいと、ベルリンの工房で3年間修行を続けた。さらに1年間マイスター養成の学校に通い、試験を受けて合格、晴れて整形外科靴マイスターの資格を取得した。日本人でマイスターの資格を持っている人は数人だけ。義肢装具士の資格とマイスター双方の資格を持っているのは、世界でも中井さんただ1人である。15年に帰国した。
「日本に帰って技術を広めよう、困っている人たちに還元したいという気持ちが強かったので、そのままドイツに留まるという選択肢はなかったです」。

インソールの重要性をわかってほしい

 帰国前に働いていた「梶屋製作所」に戻った中井さんは、ドイツで習得した技術を生かして働き始め、16年に代表取締役のポジションを継いだ。工房は、10もの病院とコンタクトを取りながら患者たちの靴型装具やインソールをつくっている。受注の8割がこれで、ほかに装具やコルセットなども作成している。
 「病院に行って、患者さん、医師、理学療法士たちと相談し、測定してから木型を起こします。2週間後にプラスチックのチェックシューズが完成、2週間後に納品となります。期間が短いので、全員でがんばって製作しています。提携している病院の関係上、小児の靴型装具が多いのですが、最初は短下肢装具だったのが少しずつよくなって、靴型装具になり、インソールだけになっていくケースもあります。もちろん、装具だけではなくリハビリなどの努力にもよるのですが、嬉しいですね」
 残念なことに、日本ではインソールの重要性があまり理解されていない。中井さんは「ドイツだと偏平足になればインソールを入れるというのが浸透している。でも、日本ではその知識がない。インソールを装着すればもっとちゃんと歩けるのに、という人を街でよく見かけます。もっとインソールや靴型装具を知ってほしい」と考える。今後は、広くなった工房のスペースを生かしてコンフォート、小児靴、スポーツなどの分野を幅広く手掛けていく計画だ。
 
マイスター靴工房KAJIYA
東京都久留米市柳窪3−2−37
TEL: 042・479・4141