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新社長に聞く アマガサ社長 永井 英樹氏

「ジェリービーンズ」のリブランディングで再成長を図る


アマガサの社長が1月31日付で変わった。同社はこれまで、ノン・レザーシューズの市場をリードしてきたが、ここ2年ほどは売上げを下げている。同社に限らず、ここ数年のファッション市況は厳しいものの、株式公開企業として経営責任を明確にした格好だ。新社長に就任した永井英樹氏に、現状の問題点や今後の経営計画について聞いた。


社内でブランド意識が希薄になっていた

――初めに、永井社長のこれまでの経歴から聞かせてください。

永井 大学を卒業した2000年に、営業志望でアマガサに入社しました。商品の出荷作業からスタートし、2年後に営業マンとして卸の担当先を持つようになり、5年ほど日本全国に商品サンプルを持って回りました。このため、当社の卸先がどんなところか、おおよそわかっています。
この後、仕入れ部署に異動。神戸メーカーには月2回ほど行き、靴づくりについても学びました。また、オーナーとの付き合いを通して、どういう思いで靴をつくっているのか、経営者の考え方なども理解する良い機会となりました。
2年ほど前に商品本部長に就任し、昨年2月から前社長(天笠竜蔵氏)が兼任していた営業本部長も任され、卸と小売の両方を最終責任者として、見ていくことになりました。

――全体を見るようになり、そこから見えてきたものがありますか?

永井 これはちょっとおかしいなと感じたことは、メイン・ブランドである「ジェリービーンズ」に対して、社内でもブランド意識が薄いということでした。卸先のお陰で「ジェリービーンズ」の知名度が上がってきたわけですが、幅広くお付き合いをさせていただく中で、「ジェリービーンズ」がいろんなところで売られるブランドになりかけていました。売上げは大切ですが、知名度があり、売場も取りやすいということで、直営店や百貨店、専門店とそれぞれの販路に流通し、それぞれで売りやすい靴をつくっているような状況でした。
両本部長の立場にあった私にも責任がありました。しかし、会社全体を動かす立場になったいま、これまで感じ、考えてきたことを是正・実行に移して行こうと計画しています。




――直営店の出店についてはどうですか?

永井 「ジェリービーンズ」のターゲット層はここだから、ここに出店しよう、というものではなく、お誘いをいただいた案件に出店していました。このため、さまざまなロケーションに出店し、どこにでもあるブランドとなっていた。しかも、店装はバラバラで、ここでもブランド意識が薄かったです。
売上げが順調に伸び、販路も広がっているときは、それでも良かったかもしれません。しかし、こうしたビジネスモデルは数年前から通用しなくなり、世の中の流れに合わなくなっていました。


「ジェリービーンズ」は20-30代前半に絞り込む

――新体制になり、取り組むことは?

永井 まず大前提として常にお客様目線に立つことです。そして、稼ぎ頭である「ジェリービーンズ」のターゲット層を明確にし、20代から30代前半であるということを常に意識し、社内の共通認識にすることです。
すでに昨年の秋から、「ジェリービーンズ」のリブランディング(ブランドの再構築)に取り組んでいます。テイストをガーリー(少女っぽい)≠ゥらフェミニン≠ノ変え、対象年齢は10代後半から20代前半から、【20代から30代前半の仕事を持ち、自分で収入を得ている女性】にしました。
こうしてブランドの価値をもう一度高め、取り扱いが合う売場には、商品の見せ方、飾り方も含めた「ジェリービーンズ」のパッケージを用意し、コーナー展開で差別化できる売場づくりを行います。
一方、価格やターゲット層が合わなくなった売場には、昨年秋から「ジェリービーンズ」の姉妹ブランドとして、主に4900円ラインの「スタイル・バイ・ジェリービーンズ」の展開を始めています。
 
――「ジェリービーンズ」以外の商品の見直しは?

永井 「ジェリービーンズ」に代わる若い層には、今秋、新ブランドを立ち上げる計画です。販売価格はこれから決めますが、この層の買い方としてスマホ経由が主力になっているので、販売はEC(ネット販売)から先に取り組みたい。
「ジェリービーンズ」を卒業した客層には、「ソンシックトーキョー」や、主に百貨店で販売しているジェリービーンズ リッシェなど既存ブランドがありますが、これらもブランド・コンセプトを再整理します。さらに、60-70代のシニアを対象とした靴の開発も考えています。
卸事業では、相手先ブランドで商品づくりを行うOEM(相手先ブランドでの商品供給)、ODM(相手先ブランドでのデザイン・設計と商品供給)の強化も考えています。現状でもアパレルルートで少しは行っていますが、今後はアパレルのほか、大手靴チェーンや販売力のある専門店でのOEM、ODM対応を増やして行きたい。


店舗モデルとして直営店の売上げは、2億円が目標

――直営店の再構築について。

永井 今期中に契約終了の店もありますが、現在、直営店は36店舗あり、どれも最低限の売上げは取れています。今後の出店は今のところ「ジェリービーンズ」でしか考えていません。出店先は主に、ターゲット層が来店する駅ビル・駅ナカ・駅地下・駅直結のファッションビルになるでしょう。買物をしようと思っていなくても、通勤で通るところがメインになってきます。SCについては、一部を除きファミリーや10代が集まる場であり、特別なところ以外への出店はあまり考えていません。
店舗モデルは、実効で15〜20坪は欲しい。売上げは2億円が目標です。好調な売場では1億5000万円ほどとなっており、立地にもよりますが、2億円は達成できます。

――ECへの取り組みも、今後は可能性があると思いますが

永井 前期のEC販売実績は、自社サイトとモール店舗を合わせて4億5000万円(前期比114%)。目標は全売上げの10%です。5年後、全体の売上げ目標を80億円としており、ECは8億円にしていきたい。
 一昨年、自社のECシステムを入れ替え、自社での販売能力は高まっています。モールに、現在の6店舗に3店舗加え、どのモールが「ジェリービーンズ」に合うか検証中です。
 靴はサイズがあり、同じサイズでも、合う・合わないがあります。ここが靴の醍醐味で、ECとリアル店舗は別々のものではなく、連動できるものと考えています。実店舗でフィッティングしたものを、ECで注文する。あるいはその逆もあり、相互送客でお互いの利点、利便性を活用できます。
ECとリアル店舗をつなぐものがSNSです。ライン、インスタグラム、メルマガを強化し、会員も増やしていくほか、インスタグラマーとの連動企画も、今期は4回を計画しています。

――最後に前期の売上げ結果と、今期の数字目標は?

永井 18年1月期の売上げ数字は、59億円を見込んでいます。営業利益、経常利益ともにプラスで着地できそうです。今期の売上げ目標はまずは59億円とし、社内をいろいろ整備し、今一度ブランドを含め、基盤を固めなおして来期から攻めに転じていきます。