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日本フットケア技術協会設立15周年記念市民公開講座より

 2月11日、台東区立台東市民会館9階ホールにて「日本フットケア技術協会設立15周年記念市民公開講座」が開催された。講演は第一部「子どもの足の発達と子供靴」と第二部「大人と高齢者の足と靴」に分けられ、全部で6講演が行われた。ここでは、その中から2本を抄録する。


大人と高齢者について

メディカルプラザ篠崎駅西口院長/新城孝道氏

 高齢者の基準はいろいろで、日本老年学会や厚生労働省の基準では75歳以上を指し、90歳以上を超高齢者としています。とはいっても、千差万別で個人差があります。60歳以上になれば大半の人に生活習慣病があるし、がん年齢でもあるわけですが、足の問題には、青年・壮年期か、それ以前に問題の根底にある場合があります。

生活・仕事環境が影響する青・壮年期

子供のときや学生のときの姿勢は足に影響します。頬杖をつく、足をくむ、PCやスマフォを使うので下ばかり見ている、など上半身の姿勢が、足に影響してくることを知ってほしいと思います。
 大人では、仕事環境が影響します。デスクワークで長時間椅子に座っていると、ほかの障害を起こしやすい。作業姿勢や用具でも体に影響をおよぼします。重いものを持つと、腰痛になりやすい。つま先には金具が入っている安全靴は、足の動きを制限します。
 足病変に影響のある因子は、ほかにもあります。視力に左右差のある人、白内障や黄斑変性症、網膜症のある人は要注意です。また、手術の影響で姿勢保持に変化がでてきます。
 運動は連鎖しています。膝が曲がらなければ腰痛になりますし、首がわるくなると足にきます。連鎖反応でそうなってしまうのです。

筋肉量が落ち、障害も増える高齢者

 高齢者と足について考えてみましょう。筋力が低下するので、杖や歩行器などの歩行補助具が必要です。コルセットなど固定具を使用すると、足にくる場合もあります。すり足歩行になり、つまずきや転倒の原因になります。靴のつま先を上げるだけでは防げません。歩行速度は低下し、歩く重心が変化します。歩容の状況をよく見ることが必要となります。
 足指の関節の背屈制限を診ます。指の関節は重要です。胼胝(べんち)がどこにできているのか、強剛拇趾、関節炎、骨折後変形、スポーツ障害がないかを診ていきます。足の角度や高さも図ります。肉がなくなっている、つまり足の筋肉量が落ちているのです。
注意が必要な足の変形には、外反母趾、内反小趾、ハンマートウ、凹足、外反扁平足、強剛拇趾、シャルコー関節、O脚、X脚などいろいろあります。高齢者の身体的変化には、体のゆがみ、骨格の変化、角質異常などが見られ、靴擦れも多くなります。また、動脈硬化の症状も多くみられ、下肢血流障害も起きるようになってきます。
(画像はメディカルプラザ篠崎駅西口院長・新城孝道先生提供)


大人と高齢者の靴について

足と靴と健康協議会事務局長/木村克敏氏

シューフィッターと靴選び

 「足と靴と健康協議会」は、略して「FHA」とも呼ばれ、シューフィッターの養成を行っている団体です。シューフィッターとは、既成の靴からその人の足に合ったものを見立てる専門家のことです。プライマリー、バチェラー、マスターの3つのレベルのシューフィッターがいる他、子供の靴、高齢者の靴を扱う専門のシューフィッターもいます。認定されたシューフィッターの数は、プライマリーで3272名、バチェラーで389名、マスターで11名、幼児子供専門226名、シニア専門152名となっています。先日はドラマ「陸王」とのタイアップもしました。
 では、足のサイズの測り方についてお話ししましょう。足のサイズは足長(長い指の先端まで測る)と足囲(親指の付け根の出っ張っているところから小指の付け根の出っ張っているところまでを一周する)を左右とも測ります。
日本の靴は足入れサイズで、足長と足囲が表示されています。男性で25センチメートルとあれば実際は27センチメートルで、女性で23センチメートルとあればつま先に1センチメートルの余裕があります。これに対し、ヨーロッパ(英国を除く)は靴型(ラスト)サイズで、靴自体の大きさを表示します。だから、24センチメートルの靴に24センチメートルの足は入らないのです。

TPOに合わせて靴を選ぼう

 次に、問題のある靴の見分け方についてお話します。まず、つま先にそりがない靴は転ぶ原因になります。足指の付け根部分が曲がりにくいと、足も曲がらないし、はき口の内側が低いと足が安定しません。かかと回りに芯が入っていない、中敷きやライニングに汗を吸わない合成皮革を使っている、靴底が柔らかすぎる・軽すぎる素材を使っている、というのもチェックポイントです。
 また、ウォーキングシューズには二通りあります。街歩き用と、里山歩き用です。街歩き用の特色は、軽量で滑りにくい、かかとからの衝撃を吸収する、かかと周りをしっかり固定する、足指の付け根がよく曲がる、吸湿性・防水性にすぐれる、などです。一方で里山歩き用は、足を守るしっかりしたつくり(足首を守るハイカットなど)、地面の凹凸に対応できる、吸湿性・防湿性がいい、などが特色です。クッションは固いアスファルトを歩く街歩き用には必要ですが、里山では必要ありません。靴底の凹凸がしっかりしていて、登山靴に近いつくりをしているものがいいです。
 TPOで靴を選ぶのは大切です。ウォーキングシューズで走ると、足を痛めてしまいます。走るときはランニングシューズのほうが走りやすいです。

高齢者の靴は転倒予防が第一

 では、高齢者の靴はどうでしょうか。精神は若くても、体がついていきません。大切なのは、転倒を防止するということで、そのためにはハイカットでくるぶしまで包み込むものがいいでしょう。つま先にそりがあって、つま先の接地面には丸みがあり、靴底は平らなものがいいです。かかとの下にはクッション材が入り、地面からの衝撃を緩和する。靴底は適度にすべりにくいもので、必要以上に滑りにくいと、かえって転んでしまいます。
 ロコモティブシンドロームという言葉があります。「老化は足から」といわれ、遅く歩く人の死亡率は、早く歩く人の3倍以上だと言われています。足は第二の心臓で、心臓から動脈を通して酸素と栄養素が送られ、静脈を通して老廃物を含んだ血を戻します。ふくらはぎがポンプ運動をやっているわけで、そのために弁がついています。この弁の具合がわるくなると、下肢静脈瘤になることがあります。
 高齢者は歩幅が狭くなります。腕をふるときは踏みだしの一歩を大きくし、しっかりけり出し、視線を遠めに置いて歩きましょう。