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特集 スニーカー通勤


 はるやま商事 P.S.FA新宿東口店

「アクティブスーツ」とコーディネイトできるドレススニーカーを企画

P.S.FAのみでの販売に

 はるやま商事は、「スニーカー通勤」に向けて1月27日に「アクティブスーツ」と「ドレスポシャツ」を、全国のP.S.FA(パーフェクトスーツファクトリー)で発売した。P.S.FAは「はるやま」よりも若い30代の男女をターゲットにし、都市部中心に展開している業態で、全国103店舗を数える。すぐれた防シワ機能を持ち、長時間の着用でもシワにならない。ストレッチ性も高く、動きやすい。
 「スニーカー通勤ならば、もっとスニーカーらしい靴を」と昨年10月から急ぎ企画されたのが、4月1日発売予定のレザースニーカー(同社ではドレススニーカーと呼ぶ)。これまでのドレスシューズより軽く、インソールの低反発クッションも効いている。EVAのソールにラバーソールを貼り付けて軽さを出しているが、「ひと駅歩く」ことを想定して、同社がこれまで開発してきた機能性シューズ「エアーモーション」などより重い。また、足入れを楽にするため、はきぐちにはパッドを入れている。こちらもP.S.FAのみの販売になる。今後は市場の反応を見つつ、機能性などを付加していく考えだ。

「スーツで日本を健康にする」宣言と3つの約束

 スニーカー通勤に向けて企画・販売されたかに見えるこれらの商品だが、実はそれ以前に伏線として流れている哲学がある。それが、治山正史会長のいう「スーツで日本を健康にする」宣言であり、「3つの約束」に取り組むとされている。曰く、@健康をサポートする機能性商品を開発する A店舗を地域の健康支援の拠点となるようにしていく B社員の健康を応援し、まず社内から健康で元気になる というものだ。
 この宣言は2015年12月に出され、@の部分では積極的に機能性商品の開発に取り組んだ。16年にはスポーティーファッションのブームをにらみ、アディダスとコラボレートしたスーツをつくった。スポーツウエア(ジャージ)に使っている機能性素材を使ったスーツである。ストレッチ性に富み、しわにもなりにくい。パンツの丈も短めにしてアクティブ感を出した。インはTシャツでもOKで、初回投入した6000着はあっという間に完売した。
 アディダスとのコラボレートは終了したが、多くのファンはついた。彼らに向けての第二弾が、「アクティブスーツ」だったのである。
「夏はジャケットを着て通勤できませんので、会社に置いて着回しできるものが喜ばれます。ジャケパンスタイルの中では、スーツ生地ではないものが新鮮に映ります。革靴だけでなく、スニーカーと合わせる方も多くなっています」(P.S.FA新宿東口店 高橋拓良店長)
機能性の追求は、靴にも及んでいる。オリジナル企画の「エアーモーション」は、かかととつま先部分の通気孔があって蒸れず、空気は循環するが水が入らないというすぐれたシステム。しかも軽量で、もともと夏シーズンの商品だったが、人気のために通年の商品にしたという。

Aの「店舗を地域の健康拠点に」は、全国252店舗で展開するはるやま業態で推進されている。すでに約100店舗に体組成計、肌年齢測定器、血圧計、血管年齢計測計などを備えた「健康ステーション」が設置され、「気軽に健康チェックできる」と近所の人たちがリピートして訪れており、来店動機にもなっている。
Bは社内の「働き方改革」ともいえるもので、残業を減らす取り組みを行っている。長期にわたり残業の原因を調査し、残業のない社員には「ノー残業手当」として月1万5000円を支給するという、ユニークな試みを実施していることでも有名だ。
はるやま商事の場合、「スニーカー通勤」は自社の大きな「健康志向」に向けてのムーブメントの一つなのである。














 洋服の青山 池袋東口総本店(東京・豊島区)

ストレッチスーツと「走れる革靴」で「スニーカー通勤」を提案

高能能ビジネスをコラボ開発

 青山商事は「洋服の青山」「ザ スーツカンパニー」などを全国に約900店舗展開する、紳士服の大手リテーラーだ。同社がトータルコーディネイトの一環としてメンズビジネスシューズの販売を始めたのは、15年以上も前にさかのぼる。ことに7年前の東日本大震災以降は、スーツとコーディネイトできる「歩きやすいビジネスシューズ」に力を入れてきた。
 メンズシューズのPB(プライベートブランド)に「イマジナチオーネ」があるが、その「スポーツバージョン」に「歩きやすいビジネスシューズ」を位置付けている。スタイリッシュな革靴で、カップインソールにラバーソールを採用していうところが、共通した特色となっている。
 「スニーカー通勤」に向けての靴の主力商品は、昨年10月に市場に投入した「走れる革靴」。ブリヂストンとコラボレートしたもので、グリップ力が60%もアップしているという。アッパーはキップで、形はストレートチップに絞っている。価格は1万6000円、ブラック6万足、ブラウン2万足を全国の「洋服の青山」とオンラインストアで展開中だ。
 これとは別に、早稲田大学スポーツ学科学術院の鳥居俊准教授と丸紅フットウェアが産学協同で開発した「軽快歩行シューズ」を、昨年12月から販売している。「あおり歩行」を促し正しい歩行に導くもので、ダイヤル式シューレース巻き上げシステムを採用している。こちらの価格も1万6000円で、「洋服の青山」全店に2万足を投入している。
 「歩行機能を助けるタイプや防水タイプなどを含め、多数の機能性シューズを展開しています。毎年のようにモデルを変えて提案しており、スニーカー通勤への期待感はあります。スーツが基本スタイルですが、ジャケットとパンツのコーディネイトもあり、そちらの商品も売れるようになるといいと思っています」(第二商品部 若山陽一部長代理)
 靴全体の売上げも年々伸びている。スーツ自体がシャープなフォルムになっていることから、歩きやすさを追求する一方で、靴もスタイリッシュな形を追求している。

トータルコーディネイトの推奨販売が基本
 
「コーディネイトの一環として、スーツを購入したお客さまに靴もお勧めしています。機能性のある靴のコーナーを設けていて、好評をいただいています」(笠原一晃店長)。
以前は「靴は他店で購入するから」というケースもあったが、ブランドの認知度が上がるにつれて同時に購入する人が増え、現在では靴だけを買いに来るお客も多くなっている。
スーツでは伸縮性が高いストレッチスーツを提案している。三代目 J Soul Brothersの岩田剛典さんをCMキャラクターに登用、踊れるくらい動きやすいスーツをアピールしている。これに、「走れる革靴」をコーディネイトしてディスプレイ。「靴もスーツもストレスなくはける」ことをポイントとしている。
さらに「モアレス」というビジカジブランドもあり、こちらはさらにスニーカー通勤にぴったりのカジュアルコーディネイト。現在は「スペルガ」のスニーカーと合わせてディスプレイされている。





 新宿島屋

全館で「FUN+WALK 」スタイルをプロモーション


入門から上級編まで歩きやすい通勤スタイルを提案

島屋は、スポーツ庁が提唱する「FUN+WALK PROJECT」の主旨に賛同する協賛企業のひとつとして、新宿店を中心に歩きやすい通勤スタイルを全館でプロモーション展開している。
 紳士靴売場では、2月28日からディスプレイを展開。売場の入口には歩くトルソーを使って、スニーカー+ウエア+バッグの入門スタイルから上級スタイルまで、さまざまなスタイリングを提案している。
 同売場にはインポートのラグジュアリーブランドを展開する「シューメゾン」があり、その一部にスニーカーコーナーを設置しているが、これを1100SKUにパワーアップし、通路前面に移動し、「FUN+WALK PROJECT」展開している。
「最近、かばんの動向はリュックが多くなり、3ウエイバッグを探している方も増えています。それに伴いシューズも機能性に富んだものや軽快なカジュアルシューズが好評です。ファッションの流れは、確実に快適なものや動きやすいものに移行してきており、今回の提唱はその流れにフィットしています」(紳士雑貨・靴・鞄売場・古谷優子セールスマネジャー)。
 特に注力するブランドは、イタリアの「パントポラドーロ」。アッパーがドレススタイル、ソールがスニーカーソールになったスタイルだ。もっとスニーカーらしいスタイルが好みの層には「パトリック」「ニューバランス」「ディアドラ」「マカロニアン」などがおすすめで、人気がある。カジュアル過ぎないすっきりとしたスタイルで、ソールも薄めになっているのが好まれる理由だ。

販売スタッフもスーツ+スニーカースタイルでお迎え

 売場の販売スタッフも、スーツ+スニーカーのお手本スタイルを実践している。スタッフのコーディネイトを見て、「スーツにスニーカーというのもよく合っている」と納得し、自分もそのスタイルを取り入れたいと思いようになるというわけだ。
 「クールビズが定着したように、『FUN+WALK PROJECT」も徐々に定着していくと思います。クールビズの季節になると、さらに軽快なスニーカースタイルが合わせやすくなり、通勤にスニーカーという流れは加速するのではないかと考えています」。
 紳士靴シューメゾンのフロアには、おすすめのバッグや、伸縮性に富み軽量なタカシマヤオリジナルスーツも提案しており、全館あげて「FUN+WALK PROJECT」を盛り上げている。



 松屋銀座

婦人スニーカーのセレクトショップ
「スニーカーズ バイ エミ」


感度の高い女性層を幅広く対象に

 松屋銀座は、3月9日、婦人靴フロア3階の約10・5坪のスペースに、婦人スニーカーのセレクトショップ「スニーカーズ バイ エミ」をオープンした。運営はマッシュホールディングス。この売場では、2016年8月からスニーカーをコーナー展開しており、売上げは伸びていた。
「今回スニーカーズ バイ エミをオープンしたのは、スニーカーがよりファッションと連動し、ラグジュアリーシューズとしても強化しようという意図があります」(婦人二部MD課兼婦人三部MD課・木下朋香バイヤー)。
 「ナイキ」「アディダス」「ニューバランス」「リーボック」「パトリック」「コンバース」など約10ブランド、200SKUをそろえている。アディダス×ステラマッカートニーのコラボモデルやナイキエアジョーダン、ピンクで統一したカラーの別注品など、レアアイテムも充実している。
価格帯は1万〜2万円。30代、40代の女性層をメインに感度の高い女性層を幅広く対象にしている。

ウエアとのコーディネイト提案も

 マネキン2体にウエア+スニーカーのスタイリング提案をし、「通常の洋服にマッチする」というイメージを伝える。
「スニーカー通勤はまだ浸透していませんが、カジュアルが台頭してきているので、必ず普及するという感触があります。気持ちよく日々過ごすこと、スポーツすることが徐々に広がり、スニーカーでOKという風潮になれば、一気に広がるのではないでしょうか」(同・木下バイヤー)。
 人気のアイテムは、フラットシューズの延長ではけるような、細身のものや明るい色、カジュアル過ぎないものなど。