今月の記事・ピックアップ 2018・5
 HOME > フットウエアプレス >  特集 高機能パンプス DASH! 概況
特集 高機能パンプス DASH!


概況
 
高まる機能性で差別化、進むカジュアル化

きれいに見え、はき心地のいいパンプスを開発 

特集では、最近関心が高まっているブラック・パンプス≠フ開発や売場での販売状況を取材した。これまで、フォーマルなシーンで履かれる、ベーシックな黒のパンプスをブラック・パンプス≠ニしてくくってきた。フォーマルなシーンに加え、働く情勢のオンシーンでも履かれる、パンプス需要の最も多いカテゴリーであり、最近の関心は、ここでの差別化をねらったもので、新たな商品開発が進んでいる。
メーカー・卸だけでなく、大手小売チェーンや百貨店でも、このブラック・パンプス≠プライベートブランド(PB)で開発するところが出てきている。ここでの開発ポイントは、パンプスとしての美しいシルエットを見せると同時に、はき心地のいいことが、これまでのパンプスとは違う点が。この高機能パンプスをハイブリッドパンプス∞パンプニ―カー≠ニ名付けているところもあるように、パンプスに機能性をプラスした商品開発で、これまでのパンプスとの差別化を進めている。
パンプスの機能性を高めるために、7〜7・5センチヒール使いでも疲れず、外反母趾になりにくい木型の開発、足が前滑りしにくく、歩行時の衝撃を緩和するインソールの挿入、足が脱げにくい履き口パッドや甲ベルト付きなどのほか、防水性もポイントにするパンプスもある。

リピーターのねらえる新カテゴリーに

こうした高機能パンプスの開発では、足関連の専門家のアドバイスだけでなく、一般消費者の声を聴き。はき心地のモニタリングを繰り返すなど、これまで以上に市場よりの開発が見られる。また、足の当たる部分に応じた機能素材を幾種類も装着し、よりきめ細かい対応で、履きよさを追求している。こうした高機能パンプスの価格は、店舗業態によって幅があり、3000円後半から3万円台まである。
売場での反応はよく、1アイテムで突出した売上げになっているブランドもある。こうしたパンプスはベーシックで、プレーンなデザインである。しかも、見た目には高機能パーツが使われていることはわからない。このため、売場では足入れしてもらうことを勧めており、試し履きした消費者の買い上げ率は、ほかの商品より高いという。また、リピート購買も多い。さらに、SNSでその履きよさを拡散するリピーターもいるという。

「スニーカー通勤」対応のカジュアルパンプス

5〜7センチのプレーンなパンプスから、開発がスタートした高機能なブラック・パンプス。販売が拡大する中で、スタイリッシュなカジュアルテイストのデザインも求められ、開発が進んでいる。
カラー展開がその一つ。黒、茶のほか、ベージュやピンク、さらにはシーズンのトレンドカラーを高機能パンプスで打ち出している。カラー化と並行して、ヒールデザインがワンヒールやウエッジヒール、モールドヒールといった、カジュアルテイストのもので、オンシーンでのパンプスを展開している。
さらに増えているのが、バレエシューズでの提案。本来のパンプスとはカテゴリーが異なるが、スニーカーで足入れの楽な靴をバレエに求め、高機能な通勤履きとして、店頭では一緒にくくって販売している。また、3月からスポーツ庁が提唱した「スニーカー通勤」に向けて打ち出す商品として、スニーカーそのものではなく、また、既存のウォーキングでもない、よりカジュアルテイストのパンプスを提案する売場も出てきている。



 モーダ・クレア

機能性とファッション性の双方を追求する「メディカエスコート」

外反母趾になりにくい靴をつくる

 モーダ・クレアの「メディカエスコート」は、外反母趾予防のためにつくられたブランドである。スタートは2013年秋冬からで、2万5000人ものバレエダンサーの足を診たという赤津結美医師(外反母趾相談室UNIFY院長)との共同研究によって誕生した。
 「当社は数多くのブランドを展開していますが、接客の際に外反母趾に悩まれているお客さまを多数拝見してきました。そこから、外反母趾になりにくい、足あたりのいい靴を開発したいと考えました」(企画室・佐藤久益マーチャンダイザー)
 こだわったのは木型である。通常のものよりもセンターラインを7ミリほど内側に振っているが、バランスよくスタイリッシュに見えるように工夫されている。中底には、中央をくり抜いて高反発のスポンジを入れた。これは、外反母趾になりやすい人が、かかとと指の付け根のみを使って歩くことを防ぐための工夫で、指の付け根が沈み込み、趾が使われるようにしている。グリップ力の高いアウトソールも開発した。企画・製造とも日本国内というのが、自慢の一つでもある。
 おしゃれ感も忘れてはいない。「数多いブランドを展開している問屋」という自負のもと、1デザインで5〜6色を展開。ブラックやベージュなどの基本カラーのほかに、流行色であるバーガンディやイエロー、ブルーなども登場して目を楽しませる。ヒール高は5〜7・5センチだが、「7・5センチヒールでも楽に履ける」ことがポイントになっている。
18年秋冬では、ポインテッドとアーモンドトウ、スクエアトウの3種類を用意した。アッパーにはイタリア産のスエードや国産のカーフを使っており、高級感もある。価格は1万9000円(モチーフ付きは2万〜2万1000円)。

トレンドカラーを加え、バリエーションを見せる

 見たところは、きれい目のプレーンパンプス。だが足入れしてみるとフィット感、安定感ともに優れ、一般パンプスとの差は驚くほど歴然としている。ここが差別化ポイントとともなっている。
 「主要百貨店の平場展開が中心で、主な顧客はキャリアレディ。パンプスを購入するとなると足入れに悩み、いろいろなブランドを試される方が多いのですが、『メディカエスコート』をお持ちすると大体決まることが多いです」。
 数多くのファンもついていて、毎シーズンのカラー展開を見るために来店する人もいる。とはいえ、売れ筋はやはりベージュやブラック。それでも「お客さまに楽しんでいただくために」トレンド色を差し入れ、トウの形も研究、今期からはスクエアトウも展開する。



 そごう横浜店

3者コラボのオリジナルパンプスを投入

5年前からはきやすく、きれいなパンプス展開

そごう横浜店の婦人靴売場に3月、オリジナルブランド「ドクターミカ エイチ ニューヨーク」がデビューした。米ニューヨークの足病医×そごう横浜店上級シューフィッター×浅草のオーダーシューズメーカーの3者がコラボして開発した、はきやすくてきれいなシルエットのハイヒール「美・パンプス」である。
 そごう横浜店では2013年から、オリジナル開発のパンプスを販売している。これは、同店婦人靴売場の上級シューフィッターと靴メーカーが、意見を出し合って開発したもの。これらのパンプスは、足の悩みを持つお客に「ファッション性が高いパンプスでありながら、痛くなりにくく、脱げにくい」と支持されている。
今回開発された「ドクターミカ エイチ ニューヨーク」は、これまでのパンプスから木型、インソールでさらに踏み込んで開発されている。


足病医の考えも入れた木型、インソール

「ドクターミカ エイチ ニューヨーク」は、日本人だけでなく、ブロードウェイのダンサーの足など、多くのトラブルのある足を診ている、ニューヨーク在住の日本人で、足病医の林美香氏と、そごう横浜店上級シューフィッターの林美樹氏、浅草のオーダーシューズメーカー・モーダコジマの小嶋隆行氏の3者コラボの商品。
その特徴は、開張足気味の現代女性に足に沿った木型は甲が薄く、かかと部分は細く、小指が当たりにくい設計で、足あたりがやさしいものになっている。また、横アーチを持ち上げるよう工夫されたインソールには、足指が伸びるようパッドを装着している。これにより、ハイヒールでも足の前ズレを防ぎ、履き心地を高めている。
林美香氏が長年願っていた「足のお悩みを持つ人に、はきやすくてきれいなハイヒールづくりを!」という思いが形になったものである。
インソールにドクターの意見を取り入れた、「美しい」シルエットのパンプスは、2年の年月を費やし、ようやくこの春、そごう横浜店でデビューした。
「ドクターミカ エイチ ニューヨーク」は、定番のブラックパンプス、人気のシルキー
スエードに加え、光の当たり方によって色が微妙に変化するオーロラエナメルなど5色をラインアップ。価格は3万7000円
店頭投入からまだ日は浅いが、評判は上々であるという。