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地方バッグ専門店

創作屋(宮崎・延岡市)

自分らしさを“創作する”バッグ販売で固定客をつくる


◆新しい価値の生まれるバッグを提供する

宮崎県内に2店と大分市内に1店、計3店舗のバッグ・服飾雑貨専門店を構える「創作屋」。「新しく自分らしさを“創作する”ところから、『創作屋』なんですよ」と笑顔で話すのは、創業の地である延岡市の本店を切り盛りする、甲斐優子店長。ほかの2店舗は兄弟がそれぞれ経営している。
店舗はJR延岡駅前の商店街から少し離れた住宅街の一角にあり、赤いテントと趣のある石造りのファサードが目を引く。扱う商品は国産のレザーブランドが多く、約50坪ほどの店内には、30ほどのブランドがセレクトされている。
四国で洋品店の丁稚奉公をしていた父が、この延岡の地で創業したのが60年ほど前。行商時代を経て、10坪のかばん店からスタートしたのが『創作屋』の原点だ。
「当時は旭化成の本社が延岡にあり、街には活気があったと父はよく話していました。私も小さい頃から革やバッグに囲まれ、自然と革に触れて育ちました」と甲斐店長は話す。
一時はインポートブランドを扱ったこともあるが、ほどなくしてすべてを国内ブランドにシフトしている。現在では「モキップ」「ドアン」「リリー」「ビースタッフ」「コケット」「クリーム」「藤和商会」など、オリジナル性に富んだ素材使いや、デザインとのバランスの取れたブランドを主軸に展開している。


◆新しいことにトライしたいという気持ちを後押しする

路面店である本店の店内は、手前と奥の二つにフロアが分かれ、手前ではレディスのカジュアル、財布・革小物、アクセサリーなどを、奥にはメンズ、トラベルと「ビースタッフ」のコーナーでまとめられている。ゆったりと陳列された棚には、一つひとつの商品とじっくり向き合えるよう、詰め過ぎないディスプレイを心掛けている。
 またショップ内イベントもこまめに開催している。例えば「モキップ」の腕時計のベルトオーダー会や、「バースデザイン」のエプロンイベントなど、個性的なブランドと出会える場を数多く企画している。
顧客の中には、父親の代から通っている人もおり、年配者から若い女性まで年齢層は幅広い。「路面店のドアを開けて入ってくるということは、勇気を持って出会いを探しに来る方≠ナす」と甲斐店長は話す。
同店の接客トークでは、「流行りだから」とか「トレンドです」といった言葉は使わない。顧客が持つことによって、バッグの価値がさらに上がり、商品にストーリー性≠ェ生まれることを大切にバッグを勧めている。
「女性は意外と着るもの、持つものに対して、『○○じゃないとおかしい』という固定概念を持っています。しかし、本音はもっと新しいものを取り入れてみたいという気持ちがあります。私が毎日服を変えて、さまざまコーディネイトにトライするのも、そういった顧客のため。この服だとこう見えるわよ、やってみたら? と背中を押す役割を担っているつもりです」。

◆顧客に損をさせない、修理経験を生かした商品セレクト

父親の代から「お客さまに販売したものは、出来る限り修理をする」との教えがある。甲斐さん自身も難しいものでなければ、修理やリメイクはひと通り手掛けてしまうという。その甲斐さんがセレクトする商品は、『ゴールデンバランス』のデザインに注意するという。
「バッグを選ぶ時、モノを入れた時にどう変化するかに注目します。修理品を分解し、経年変化した状態を見ることが多いので、何年か使った時の型崩れが、経年によるものなのか、デザインからくるのか、最初に見ればだいたいわかります」と話す。
甲斐さんは若い頃、バッグ業界ではなく、学校の先生を目指していたという。相手に合わせた語彙を選ぶことができるのも、そんな経歴からも来ている。また、業界を客観的に見ることができたことや、素直にお客から教えてもらうことを受け入れることができたのも、そのためかもしれない。
紆余曲折を経て、教員志望からかばんの道へと進んだが、いまはこれまで培ったことが、全て仕事に生きているという甲斐さん。着付けやレザーワークショップも開催も、教えることが得意なことからできることだ。
父親からの教えである「バッグはスタイリングの上品さを決める最後の要である」という言葉を携え、今日も店頭に立っている。

◆SOSAKUYA(創作屋)
宮崎県延岡市安賀多町3-6-6
TEL: 0982-33-6659