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インタビュー/武田 和芳氏(東都製靴工業協同組合 理事長)

事業承継に向けて、若い力と共に推し進めていく

浅草を中心に、関東地区の革靴メーカーで組織される東都製靴工業協同組合では、前任の藤原仁氏の後を継いで、武田和芳氏が新理事長に就任した。近年、理事長職も若返っており、今回の武田氏も藤原氏と同じ50代。今後の舵取りを聞いた。

役割分担で、革靴メーカーの活動をバックアップ

――浅草では大手卸の経営破綻が続くなど、厳しい時期に理事長に就任されました。
武田 「前理事長の藤原仁さんが東都製靴工業協同組合(以下、東都組合)の理事長になった時に、理事の平均年齢は20歳ほど若返り、新しい体制が整いました。この時点で私は理事を退く考えでしたが、副理事長として、藤原さんをサポートすることになりました」。 
「藤原さんが東都組合の上部組織である全日本革靴工業協同組合連合会(全靴協連=ぜんかきょうれん)の会長に就任した際に、『新しい取り組みの成果が出ている段階であり、両団体を自分一人で動くのは大変なので手伝って欲しい』といわれ、東都組合の理事長を引き受けることにしました」。

――どのようなことでサポートしていくのでしょうか?
武田「組合では昨年の総会で東都イノベーション&アクセラレーターセンター構想のキックオフ宣言を行い、その後、一年間、組合員向けに現在の最先端のビジネスや社会の動きなどについて学んできました。今年は2年目として、具体的な動きを見せていく年ととらえています」。
「アクセラレーターセンター構想の一環として、次のように考えています。まず、靴産業が、新しい時流に対応するために、既に新しい方向性に向かっていくつもの事業を進めています。この事業のアクセルを踏み込むことを藤原会長は全国規模で進めていきます」。
「一方で、東都組合の中には現状のやり方で十分に経営できているメーカーもあります。私としては、堅実にやられている組合員のビジネスモデルを、さらに磨いていくことをサポートしていきます」。

――具体的にはどのような事業ですか?
武田 例えば「288通りの靴型でより多くの女性の足にジャストフィットさせる『i/288』(にい はち はち ぶんの あい)など市場浸透や技術開発、人材育成や雇用促進、販促は全靴協連が柱となり、東都組合は組織の充実を柱とするように分担します」。

――東都組合が柱とする事業の概要は?
武田 「まず国内外の見本市への参加があります。ビッグサイトのIFF-MAGICや台東館で開催される東京レザーフェア内のニッポンバリュー<Rーナーは、主としてOEM受注を意図したもので、それぞれ年に2回出展。中国市場開拓のための上海で開催する東都の合同展はもう10年以上継続しており、日本の靴に対する関心が高まっています。このほか。北欧市場開拓のためのCIFF(コペンハーゲン)やLOBBY(ストックホルム)などの展示会出展も行っています。また、ECサイト関連での昨年の調査事業を受け、具体的に事業者の支援となる事業を行います」。

スピード感のある経営ができる若手を育てていく

――組織の充実とは?
武田 「業界の発展を前提に、まずは伝統を生かしつつ時代に合わせた組合に姿を変えることです。そのために、組合理事を中心に青年部を巻き込んでワーキングチームをつくり、組合員の求める姿に変える業務や財務の見直し、新規事業案の構築、アウトソーシング化の検討などを行います。同時に、将来に向けた組織後継者の育成、スキルアップなどを、青年部と共に強力に推し進めていきます」。

――東都組合の若返りについて。
武田 「これは藤原さんが先鞭を付けましたが、まだ不十分です。東都組合には青年部がありますが、これまでのような仲良しクラブ的な組織ではなく、将来的には組合活動全般を青年部のメンバーにバトンタッチすることが目標です。青年部はあと10歳ほど若返らせ、39歳で引退ということも考えています」。
 
――若い組合員が、一丸となって新しい流れをつくっていくには?
武田 「組合は若い人たちにも最先端の情報を発信していきます。情報を取り入れるかどうかは、経営者の判断です。スピード感と同時に、新しい情報の蓄積がないと判断できない時代になっています。組合はこうした情報をキャッチできる教育を、ここ2年ほど行ってきました。これまでのように革靴市場が輸入関税に守られていたレベルから、自由化になった時のレベルで考えられるよう、勉強会を行っています」。

――勉強会で具体的に取り上げたテーマは
武田 「昨年はM&A(企業の合併・買収)について勉強しました。経営の得意な経営者もいれば、モノづくりの得意なメーカーもあり、靴の提供の仕方についてはピカイチの会社もあります。今年は、脳科学を皮切りに、ロボティクスの勉強も進めていますが、ITを積極活用し、M&Aを推進して、特徴的で競争力のある会社をどんどんつくり、産業規模の再拡大を図ります」。