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小売店の協業


メーカーや卸と同じく、靴小売店の減少が著しい。2014年の商業統計によれば事業所数は8700ほど。7年間で3割も減少している。そんな中、生き残りを掛けてボランタリーチェーン(※)などが組織結束を強めている。いまどうなっているか、そして何を目指しているのか?

※ボランタリーチェーン(Voluntary Chain): VCあるいは任意連鎖店ともいわれる、同業種の小売店が各店の独立性を維持しながら、仕入や広告などの営業活動を共同で実施する組織。大手チェーンに対抗する中小小売店の経営戦略のひとつ。


 協同組合シューズチェーン・ネットワーク

― 中部・関西の靴小売49社が加盟する国内最大の組織

【組織】
89店が結束、本部仕入高は28億円

協同組合シューズチェーン・ネットワーク(SCN)は49社・85店舗の靴小売が加盟する(18年7月現在)。昨年の売上高は28億6000万円。規模・売上げともに日本一の靴小売団体だ。
加盟小売店の分布は石川、新潟、富山、岐阜、愛知、静岡、和歌山、大阪、滋賀の8県で、愛知と岐阜の会員が多い。昨年7月に理事長の回線があり、井上一徳氏(岐阜・下呂/ひごや社長、62歳)が新代表になった。SCNの創業は34年前の1984年、小売店有志6人が任意団体として立ち上げた。

活動】
月1回の共同仕入れ会と広告チラシが主


《仕入れ会》
最大の活動は共同仕入れ会だ。毎月、岐阜・大垣のホテルで仕入れ会を行う(11回は大垣、残り1回は懇親を兼ねて温泉地で開催)。小売が本部に支払う会費は1万8500円となっている。
SCNの仕入れ先は90社ほど。5月の仕入れ会には36社のメーカー・卸が参加した。仕入れ会は組合主催の共同仕入れ会場と、それに隣接して合同展もある。メーカー・卸からの売り込みが多いという。今回の合同展にはマドラス、福徳商事など4社参加した。
共同仕入れ会場は、白布を掛けた会議用テーブルを並べただけの飾り気のないものだが、多くの小売店で熱気があふれていた。中心は30〜40代。地方小売店はまだ元気だ。
「会員の本部仕入れ集中度はアップしています。経営のバトンタッチが進み、最近は若い人の来場が多い。しかし、個々の店の売上げは厳しい。ネット販売をやっているところは伸ばしているが、ネットは低額商品が多く、運賃も高いのでもうからない。やはり、小売店はお客さまを売場に呼び込むのが一番です」(井上理事長)。


《チラシ》
チラシはVCにとって販促活動の柱になるもの。チラシは年9回。HPは販促活動の現状を映し出すものだが、SCNのものはデザイン性が高く、迫力がある(〇〇写真)。1回当たりの印刷枚数は平均50万枚程度。NSCはチラシのほかにMD制作も行っている。

《情報共有》
月に1回の仕入れ会は情報共有の場にもなる。午前中に行うミーティングでは活発な意見が出る。組合は会員各社にアイパッドを貸し出して、仕入れ商品の発注や情報共有する。
「会員のニーズはこの数年で変わってきています。『掛け率を下げて』という普遍的な要望のほか、『有名ブランドを仕入れたい』『IT化を進めてほしい』『各店の情報を知りたい』などいっぱい出て、すぐには対応できないほどです」。本部はそれらを吸い上げて情報の受発信をさらに進めていきたいという。

【今後の活動】
チラシ見ない客層に向けて


チラシ以外の販促の強化も目指す。中心になるのはやはりSNSだ。2ヵ月前はラインを使った集客の勉強会を行った。「これからは品物を手に取らずにショッピングする若い人たちが新しいターゲットになっていく」。そのニーズを実売場につなげていくことも重要になる。チラシのほかに新聞広告も売っていきたいという。
今後は他チェーンとの協業も積極的に行う考えだ。「いままでやってこなかったことにも積極的に挑戦し、組合員の要望に応えていきたい。アパレルとの協業もありうる」。
今期の本部売上高は30億円を目指している。

《概要》
名 称:協同組合シューズチェーン・ネットワーク
創 業:昭和35年5月
設 立:昭和52年10月
会 員:49社・98店舗(平成30年5月現在)
出資金:9032万円
理事長・井上一徳
売上高:28億6000円(平成29年度)
仕入先:メーカー・卸約90社
本 部:愛知県西尾市西幡豆中央台18ポートタウンミュー2F TEL:0563-62-7101
http://www.shoes-chain.jp