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日米のEC市場

アルコット/徳江実

世界の市場規模は273兆円

16年は前年比22%増と成長続く

 スマホが世界人口の半数を超える40億台も利用されるようになり、無料WiーFiも世界の津々浦々まで増え、SNSを使ったECへの誘導も定着して、インターネット通販は世界中でさらに拡大を続けている。
 一方、カタログの通販で一世を風靡した米シアーズがこの10月に倒産した。GMS展開も含めて1980年代まで米小売業のトップだったが、革新的なウォルマートやクローガーに負け、21世紀には急伸のアマゾンに完敗して、売場も商品も劣化し、7年連続赤字で店数は約1割まで縮小していた。
 そのカタログの綿密なイラストは米文化の象徴でもあったが、時代と共に小売業も変わる。


 日本のEC市場

EC比率5・8% 衣類・服飾雑貨は1.6兆円

 世界BtoCのEC市場規模は、日本の経産省推計で2016年が22%増の約2・4兆ドル(273兆円)。その後も年平均14・9%の成長を続け、26年には約9・7兆ドル(1100兆円)まで拡大と推計した。中でもインドがECで24年に日本を抜くとしている。
 JETROは17年EC市場を中国49・4兆円、米40・3兆円、日本は8・7兆円で20年に11・1兆円と予測している。
 日本国内は経産省によると17年度が9・1%増の16・5兆円。うち物販は7・5%増の8・6兆円で、EC比率は5・8%。前年の5・4%からは増えたが、まだ1割に達せず、中英米などよりかなり少ない。
 物販のうち、衣類・服飾雑貨は7・6%増の1兆6454億円で、EC比率11・5%。
 EC比率が高いのは事務用品・文具の37・4%、家電・PCなどが30・2%、書籍・音楽映像ソフトの26・4%。
 低いのは食品・飲料・酒類で2・4%。生鮮の市場は特に大きいが、鮮度重視のため、まだ試行錯誤が続き、アマゾンフレッシュや楽天と西友との共同ネットスーパーなど注目されている。
 サービスが11・3%増の6・0兆円、デジタル系が9・5%増の1・9兆円。サービスでは宿泊や飛行機・新幹線のネット予約が定着し、美容院や飲食店もネット予約が普通になった。デジタル系では見放題・読み放題が増え、電子書籍も定着し始めた。

ファッション購入の利用サイト首位は楽天

 ジャストシステムの今春調査によると、ファッション購入で最も利用するECサイトは楽天38・9%、アマゾン35・3%と拮抗、ヤフーショッピング21・8%、ZOZOTOWN17・7%が続き、10代ではアマゾン41・3%が、20代はZOZOTOWN38・4%がトップだった。
 楽天の17年流通総額は直営の旅・本・薬など含め13・6%増の3・4兆円。今期も1割増ペースだ。ウォルマート&西友、ビックカメラとも提携した。
 靴ではZ−CRAFT(ロイヤル)、ABCマート、ロコンドのロコモールなどが、バッグ・小物はAXES(旧ムトウG)、ギャレリアの人気が高い。
 アマゾンジャパンは17年売上げ119億ドル(1兆3500億円)で、マーケットプレイス含めた流通総額は2兆円ほど。米と違い、ナイキやアディダスなどスポーツ大手は参加せず、ゼビアやスポーツオーソリティなど小売大手が代わりを務めており、靴の小売大手は付かず離れずのよう。
 ゾゾタウン運営のZOZO(旧スタートトゥデイ)は、18年3月期流通総額が27・6%増の2705億円。売上げは29%増の984億円、経常利益24%増の327億円と好業績で、一時1兆円を超えた時価総額は、現在8000億円だ。また、自動採寸するZOZOSUITは一部不具合もあり、終了するよう。
 購入の8割以上がスマホで、客層はアラサー中心。平均単価は5000円前後と特に高級というほどではない。ZOZO比率が高いファッションブランドも多く、ユナイテッドアロースはEC232億円中57%の132億円を占め、パルグループもEC110億円中65%の72億円、ベイクルーズはEC275億円中39%の137億円だ。

消費減退を及ぼすCtoCの高い伸び

  靴中心ECのロコンドは返品・サイズ交換が送料含め3週間無料だが、条件が靴の試履きは室内で、タグ・箱などはそのままと米小売よりは厳しい。
 長年の赤字を脱し、17年にマザーズに上場。18年2月期EC取扱高は18%増の95・0億円、売上げは37%増の39・7億円。TVとネット広告を大量投入し、今期取扱高150億円、以後225億円、300億円と大幅増を、営業利益も20年度30億円へと飛躍を見込む。今期前半の取扱高も47%増と順調で、返品率も23%台まで下がってきた。ジャコモやオギツを持つラオックスGの靴流通も担当し、三鈴を傘下に入れ、シャディとの協業を進めている。
 CtoCではメルカリの国内流通総額が50%増の3468億円で、ゾゾタウンを抜いた。売上げは18年6月期で62%増の358億円で、まだ赤字だ。カテゴリー別ではレディス26%、メンズ16%、ベビー・キッズ5%、スポーツ・レジャー6%、エンタメ・ホビー18%、家電8%。
 CtoCでは人気ブランドやレア物にかぎらず、ファストファッションも人気のアイテムや色は流通するようになっている。消費減退の要因とされるCtoCだが、売り手側の消費購入を増して、プラス面もある。
 また、ファッションの定額使い放題的なレンタルも、airClosetなど各種始まり、合理的なファッション対応法としてさらに増えそうだ。

靴チェーンのECは実店舗との連動で拡大中

 ABCマートは17年2月期のEC比率は5%弱ほどだったが、10%以上を目指すとし、ゾゾタウン分を伸ばすとした。そのほか、スマホアプリで店頭商品のバーコードを読み取ると、商品詳細を確認できるようにし、店頭にない商品をネット用在庫から注文できるようにした。実店舗とECのポイントも共通化している。
 チヨダは18年3月期のEC売上げは5・8億円で、EC比率は0・5%とまだ少ないが、19年3月期8億円、20年3月期20億円を目指す。特にアマゾン分は20年8億円を見込む。直営の他、ヤフー、楽天、ロコンドにも出店し、実店舗での受け取りサービスを拡大中だ。
 ジーフットのEC売上げは、19年50億円、EC比率4・6%を目指し、アプリ会員や店舗受け取りの強化、イオングループ・オムニチャネルとの連携などを重点施策としている。


 米国のEC市場

EC市場44%のアマゾンが、ウォルマートの規模に迫る

 米EC市場は米商務省によると17年が16・0%増の4535億ドル(51・6兆円)。車や燃料を除いた米の小売総額は3・8%増の3兆4960億ドル(397兆円)なので、EC比率は13・0%と1割を超えている。16年は11・6%だった。
 主役はもちろん、GAFAの一角アマゾンで、米EC市場の44%を占めるとされる。
 同社売上げは、17年決算で31%増の1779億ドル(20兆円)。18年も1〜3月42%増、4〜6月39%増、7〜10月29%増と急増ながらペースは少しダウン。
 17年の直販は20%増の1083・5億ドル(12・3兆円)、出品企業マーケットプレイスからの収入は41%増の319億ドル、実店舗58億ドル、プライム会員など定期購入分が97億ドル。
 米国内の流通総額は推定1860億ドル(21兆円)で、世界一の小売業ウォルマートの米国内36兆円(世界53兆円)に近づき、JPモルガンは数年でアマゾンが逆転と予測した。
 ちなみにTmallとTaobaoの中国2大ECモールを持つアリババの流通総額は87兆円で、18年独身の日はかなりの返品がありそうだが、1日に売上げが27%増の3・5兆円と楽天の1年間を超えた。
 日本のイオンが売上げ8・3兆円、セブンアイ6・0兆円だが、ECは両社計でもアマゾンジャパンの1割ほど。イオンは17年2月期のEC比率は0・7%を、20年までに12%、1・2兆円を目標とし、セブンアイは18年1兆円目標を掲げたが、18年2月期1088億円で、19年2月期は1250億円の計画だ。
 米国の衣服小売のシェアは、アマゾンの17年米シェアが7・9%で、ウォルマート8・6%に次ぐ2位。次がターゲット4・8%、コールズ4・5%と続くが、18年にアマゾンが首位浮上とモルガンは予測する。また、百貨店業態の衣服売上げシェアが、06年の24%から22年の8%に縮小としている。

フットロッカーのEC比率は14・3%

 アマゾンの靴の直販は37億ドル(4200億円)で、うち婦人靴は推定17億ドル(1900億円)。服を含めてファッションに弱く、まだ成長過程とされている。
 同社マーケットプレイスには、17年のナイキがついに出店。アディダスとアンダーアーマーも出店済で、アマゾンの売上げに寄与している。
 ナイキは直近1年の世界売上げが6・9%増の367億ドル(4・1兆円)。うち卸が6・6%増の245億ドル(2・8億円)、直営小売店が2・6%増の71・8億ドル(8100億円)、直ECが29・1%増の29・9億ドル(3400億円)。ECは3割も増え、直営の小売とECの売上げを分母とすれば、EC比率は29・4%になる。
 アディダスは17年の直営オンラインの売上げが、57%増の15億ユーロ(2000億円)で、20年までに40億ユーロ(5200億円)達成を見込む。
 米スポーツ小売で首位のフットロッカーは、17年売上げが微増の8800億円。米国内が71%で、他は海外の売上げ。ネット通販は14・3%を占め、1260億円と伸びてはいるが、アマゾンの直ECの靴売上げ4200億円や、ナイキの直EC売上げ3400億円と比べて、対応が遅れ気味だ。
 また、ヴィトンなど高級ブランドを網羅するLVMHグループは、17年の全世界のEC売上げは3割増の約30億ドル(3400億円)で、17%増の全体売上げ520億ドルの5%ほどとしている。

米の靴の返品率は3割ほどと高い

 米は国土が広く、人口密度は日本の10分の1。配送が大変でコストも時間もかかる。このため、ドローンを使った配送テストも日本のお遊びレベルと違い、本気だ。中流以上の住宅には家の正面に広い芝の庭があリ、ドローンが着地するのに不便はない。
 返品も日本とは大きな意識差がある。日本は商品に欠陥があったり、間違った場合などに限られるが、アメリカは前記シアーズの時代から、無条件の返品受付、満足度100%保証が習慣化し、米のほとんどの店が返品期間内は理由問わず、使用済みでも返品・返金に応じ、アマゾンもそれを踏襲している。一週間使ってから返品、気に入らないから返品は普通で、着古した下着、かなり飲用済みの薬、クリスマスツリーを12月初めに購入して1月に返品など、日本人の常識を超えている。
 全米小売業協会によると昨年の返品率は11%で、15年の8%から増加。他のデータでは、ECの返品率は2割ほどだが、靴はサイズのフィッティング問題があり3割ほどと多い。
 しかし、米では返品条件が寛大なほど返品は増えるが、売上げも増大している。ナーバー調査によると、ECでの返品で満足すれば、再度購入するが95%あり、実際にリピーターになったが82%だった。
 米アマゾンを対象としたアンケートでは、返品手続きに満足が75%で、91%が再度アマゾンで購入したい、という回答だった。
 それでも悪質な客はいて、アマゾンの他、ホームセンターのホームデポ、家電のベストバイ、ランジェリーのビクトリアシークレットなどは返品頻度をチェックし、極端なユーザーのアカウントを停止しはじめたようだ。さすがのアメリカでも、高級下着で使用後の返品を繰り返すのはアウトらしい。