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特集 靴・バッグのEC市場
レポート・ECへの取り組み

 ロコンド

Eコマースだけでなく、プラットフォームやブランディングで取引先を支援

取り扱いブランド数は日本最大

 「返品送料無料」「自宅で試着ができます」というキャッチフレーズで有名になったロコンド。靴を中心にしたファッションアイテムを扱うECサイトとして知られており、取り扱いブランドは2126と日本最大級だ。
 ロコンドは2010年10月、ドイツのベンチャーキャピタルの投資によって誕生した。モデルは世界で初めてECで靴を販売、成功したドイツの「ザッポス」で、この会社は後にアマゾンが買収したことでも有名である。スタートは順調だったが、11年に東日本大震災が起きたことで全てが変わってしまった。
 「売上げは一気に落ち、ドイツの投資家は引き上げてしまいました。そのときに現在の田中裕輔CEOが入社し、再構築しました。返品送料無料のサービスを打ち出し、それは現在も続いています。アマゾンやゾゾタウン、マルイウエブチャンネルなども追随してきたのですが、続きませんでした」(取締役兼営業本部ディレクター・藤樹賢司氏)。
 年商は18年上期で60億円、通期で150億円を見込んでおり、3月にはマザーズ上場も果たした。上期の伸びは昨年対比プラス60%という。

在庫データをクラウドで一元管理

 ロコンドが現在取り組んでいるのが、プラットフォームサービスだ。EC在庫を複数のEC店舗、欠品フォローにまで使えるシステムで、在庫データをクラウドで一元管理していく。さらに受発注システムでは、各商品にQRコードをつけることで、メーカー・画像・コメント・価格・納期などのデータがすべてわかる。バイヤーは注文数を入力して発注すれば、各社からの商品が入荷する。メーカーや問屋もシステムを共有しておけば、注文量や入出荷が即座に把握できる。
 この受発注から入出荷まで一元化されたシステムは、地方小売店に注文を取りに行かなくてはならない問屋にとってメリットが大きい。詳細なデータがあれば、ネット上で注文を取り、発注することができるからだ。
 もう一つが、ロコンドが基幹システムの構築を進めていることである。基幹システムは、売り掛け、生産管理、販売管理など企業活動の広い範囲をカバーするものだが、新しいものに変更しようとすると億単位の予算がかかり、負担が重い。小規模の企業の中には、十分に整備できていないところもある。ロコンドはこの基幹システムと先の受発注システムをドッキングさせ、無料で提供しようというのである。ロコンドがプラットフォームサービスを立ち上げて2年目、基幹システムは来年3月には完成する。
 ロコンドは18年8月に三鈴商事を傘下におさめた。このねらいは、幅広い商品構成をもつ同社に新規システムを入れて、成功事例を作っていくことにある。すでにラオックスグループとは業務提携しており、モード・エ・ジャコモ、オギツなど各社に受発注システムを提供している。
 このシステムが実現すれば、ロコンドの在庫と各社の店舗在庫を結ぶ壮大なネットワークが完成することになり、実店舗の業務改善に大きく役立つことになる。
 「靴小売店にとって、EC比率を3割にするのは難しいです。靴は実店舗で試履きしたいという考えはまだ強い。無理にEC比率を上げようとするよりも、システムで在庫を共有化、一元化し、利益をしっかり確保した方がいい」。

プレスルームをつくりブランディング

 ロコンドは、20年までに年商300億円にするという目標を掲げている。主力となるEコマース事業では、在庫・広告・プロモーションの4つのテーマに多面的に取り組む。
「返品送料無料とうたっているので、その分、受注も多くなります。現状の返品率は26%くらい。ポイントは、在庫を持つために大きなスペースが必要だということです。20年をメドに、さらに1万6000坪増やして、2万6000坪の倉庫を用意します。返品処理をどうしたらもれなくできるか、ピッキングの効率を上げるにはどうしたらいいかなど、ビッグデータを分析しつつ改善。倉庫のシステムもロコンド自体のシステムも、すでに内製化しています」
 テレビCMも効果を上げている。3月から8月までは、ロコンドの名前を浸透させることに、9月以降は「返品送料無料」であること、「マンゴ」ブランドの取り扱いも行っていることを訴求している。
 新サービスとして企画しているのが、「ブランディング」だ。ブランドは売れ筋をつくっていくために、ともすれば大衆化してしまう。これを立て直す手助けをしようというのだ。19年1月から本社ビルの地下にプレスルームをつくり、多くの出店企業の商品を置いて媒体に貸し出し、企画記事などの切り口に提供していく。
 ロコンドはECのみならず、取引先企業に向けてさまざまなサービスを提供している。目指しているのは、これまでの日本の靴業界の変革であるかもしれない。



 リーガルコーポレーション

総合ECとオムニチャネル用の2つのサイトを使い分ける

今年8月に大幅刷新し検索機能を強化

  リーガルコーポレーション(千葉・浦安市)は、9つのホームページを運営している。そのうちEC機能を持っているのは、同社が扱うすべてのブランドの販売を行う@SHOES STREETと、Aリーガルブランドだけに特化したREGAL SHOESの2つ。@はネット販売の総合的なECサイト、Aはネットで注文した靴を店舗で受け取ることもできる、いわゆるオムニチャネルのサイトだ。客単価はどちらも平均2万円を記録している。
  @がスタートしたのは16年前。スタート以来、売上げは右肩上がりを続けてきたが、競合が激しくなった2017年以降横ばいが続いているため、18年の8月に全面的に刷新した。色やデザイン、価格や機能などで商品を絞り込める検索機能を強化し、使い勝手を大幅に向上させた。
  Aはこれまで店舗紹介やイベント情報、リーガルクラブ会員への情報発信機能が主で、あくまでもブランドショップ・オフィシャルサイトとしての位置づけだったが、16年にEC機能を付加。以後は順調に売上げを伸ばしている。

  Aで注目されるのは、ネットで注文後、店で実際に商品をフィッティングし、気に入らなければキャンセルもできる「WEBで選んで、SHOPでお試し」のサービスだ。自宅配送を希望するお客は全体の約70%。約30%がショップでの受け取りを選択し、そのうち約65%が実際に商品を購入している。ネットで購入できるにもかかわらず、お店で履いてみてから購入を決めたいと考えるお客が多いことがわかる。
  「店舗での接客を通してフィッティングや靴のお手入れなどをご紹介しているので、靴クリームなどの商品を合わせて買われるお客さまが多いです。注文後に購入をキャンセルされる方もいますが、お店に来ていただくことが一番の狙いなので問題はありません」(小売統括部ネットサービス課課長・山崎仁史氏)。
 

ZOZOTOWNに初の外部ECモールとして出店

 これまでECはすべて自社で運営し、外部サイトへの出店を一切行っていたなかったが、2018年11月15日にファッションECサイト・ZOZOTOWNに出店を果たした。今年の年明けにZOZOTOWNからオファーがあり実現したという。
 ただし、リーガルという名称は使わず、「フットコミュニティ」という別名称での取り組みだ。扱いブランドについても、ナチュラライザー(レディス)、クラークス(メンズ・レディス)、ポロ・ラルフローレン(メンズ・レディス)の3ブランドのみ。リーガルブランドは一切導入していない。
全国のREGAL SHOES店舗は直営が50%、FC(フランチャイズ)が50%。FC店との共存共栄を図るために、まだ知名度がさほど高くない、ナチュラライザーなどのインポートブランドに絞り込んだ。ZOZOTOWNでの扱いがスタートすれば、百貨店など小売店での販売にもプラスになると見ている」(商品企画第二部一課課長・笠嶋武彦氏)。
 目標売上げは年間3000万円。ZOZOTOWNはコーディネートアプリ「WEAR」を活用してお客をZOZOTOWNに誘導。物販とうまく連携させている。同社が課題として挙げる「女性客の獲得やカジュアルシューズの強化」を実現する上で、ZOZOTOWNへの出店がプラスになることは間違いないだろう。
 

ファッションECとして情報訴求に注力

 課題の一つがサイトの絞り込み。複数のサイトが同時に存立している現状は、利用者にとってわかりづらいためだ。さらに当面の課題として、メンズ、レディスそれぞれのインスタグラムの強化や、クーポンやポイント制度の仕組みの見直しを挙げる。靴だけではなくファッションECとしての情報を訴求していく方針で、WEB限定の商品にも力を入れていく。
 靴のECのマーケットの将来性について山崎氏はこう見る。
「マーケット全体としては大きくなっていくことは間違いないですが、生き残りは厳しくなっていくはず。商品力が強いところに絞り込まれてくるのではないでしょうか」。
リーガルコーポレーションは、変化が激しい世界で、今後もブランド力と商品力を生かしながら、使い勝手のさらなる向上と発信する情報のブラッシュアップを図っていく。