革・革靴の輸入数量制限をついに撤廃
TQ品目が消える
2019年、業界にとって大きな関心事は、EUとのEPA(経済連携協定)発効であろう。すでに新聞報道では、19年2月に国会での批准を経て発効されると報じられている。
日本とEU間のEPA(経済連携協定)交渉は、2013年に開始され、17年7月に大枠合意し、12月に交渉妥結した。その後、条文確定作業を実施しており、18年7月に協定への署名となった。さらに11月には承認案と関連法案が閣議決定され、国会での批准を経て、19年2月の発効を目指すことになった。
EPAが発効されれば、現状の輸入ではTQ品目(関税割当品目)である皮革・履物については、数量制限はなくなり、関税については11年目から撤廃される。この間、現行の税率を10年間かけて均等に漸減し、11年目からは関税は0になる。
17年度の輸入実績で見れば、EUからの革靴の平均CIF価格は1万2800円だった。これに1次品目であれば21%程度の関税率が、2次品目であれば4300円の関税が課せられていた。これが11年後にはなくなるのであり、市場に対するEU革靴の影響力は大きいものとなる
現状のEUの革靴シェア40%
17年度のEU主要国からの革靴輸入実績は、24ページからの地図に示した。ここでは比較のため、アジアの主要諸国の実績も併せて見た。EUからの1次革靴は341万足の輸入があり、1次革靴全体の40%ほどを占めている。これが今後、税率が漸減されることで、さらに輸入が増えると予想される。同時に、日本の靴もEU市場で販売される機会が増えることになる。
なお、今回の日・EU間のEPA閣議決定で、日本は20ヵ国と17のEPA・FTAが発効済・署名済みとなった。
EU28カ国からの革靴輸入
EU28ヵ国のうち、革靴は24ヵ国から輸入されている。その合計は、17年度は340万足だった。これは、全革靴輸入量の14・3%のシェアとなる。
※1次革靴とはTQ(関税割当)品目として輸入される革靴。2次革靴は数量制限はないものの、高関税が課せられる革靴
EUから輸入する1次革靴(関税割当品目)の足数は321万足。これは日本が1次関税で輸入する革靴の40・3%を占めている。
革靴を輸入するEU諸国の内、1万足を超えるのは11ヵ国ある。その合計は336万足だった。数量、金額ともトップはイタリアで、EU全体の輸入に対して、数量で52・8%、金額で72・6%を占める。以下、2位スペイン、3位ポルトガルの順。
革靴の平均CIF価格は、上位11ヵ国の平均で1万2500円。トップはイギリスの1万8500円。数量トップのイタリアは1万6700円。EU上位国では唯一、ギリシャから輸入される革靴が、全世界平均の4400円で下回っている。
※CIF価格とは、運賃・保険料込み価格
アジア諸国からの輸入
17年度のアジアからの革靴輸入状況を、1万足以上輸入する国で見る。ここでは12の国・地域が登場するが、革靴(1次+2次)の輸入合計は1973万足で、全世界からの革靴輸入量の82・6%を占める。
アジアからの革靴輸入はLDC(後発開発途上国)のほか、EPA(経済連携協定)発効国が多く、アジアからの革靴輸入の内、78・3%が2次関税による輸入だ。
現状の1次関税率を紳士・婦人革靴で見ると、12ヵ国・地域の内、1次関税が課せられているのは中国、台湾、韓国だけで、ほかは無税か、6%以下になっている。
アジアの主要12ヵ国・地域からの1次革靴の輸入は423万足だった。すでに2次関税での輸入が圧倒していることがわかる。トップは中国で、アジアから輸入される1次革靴の74・1%を占めている。ただし、2次革靴を含めると、トップはカンボジアになる。
アジア12ヵ国・地域から輸入される革靴の平均CIF価格は3000円。この数字を下回るのは4ヵ国で、いずれもLDCである。ほかは韓国を除いて3000円台になっている。
上位国の得意とするアイテムを見ると、中国は紳士、婦人、カジュアルに差はないが、カンボジアとバングラデシュはカジュアル、ベトナムとミャンマーは婦人のウエートが高い。
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