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商店街の人気店 マツシタ靴店(神奈川・田原市)

カラフルな「ギョサン」サンダルが人気の老舗


小笠原諸島の足だったサンダルを自社ブランドとして育てる

 JRと小田急線が乗り入れる小田原駅から徒歩5分ほどのところに「マツシタ靴店」がある。初代がこの地に靴店を開いたのは1918年、100周年を迎えた老舗だ。オーダーメイドからスタートし、やがて仕入れに転じた。現在の松下弘社長は3代目、松下善彦専務が4代目にあたる。
 ショップの大きな特色は、店頭で展開する「ギョサン」のサンダルシリーズにある。松下専務がダイビングを趣味とする友人から紹介されたものだ。ちょっと不思議な名前は「漁業従事者サンダル」から来ていて、小笠原諸島の父島、母島では庶民の足となっていた。本土で手がけているショップはあったが、単なるビーチサンダルとして売られていただけ。そこで、松下専務は奈良のメーカーを捜し当て、15年前から年間1〜2万足を販売する大ヒットブランドに育て上げた。同時にキャラクター「ギョッピー」も立ち上げ、ブランド名とともに商標登録した。
 一見すると、「カラフルなビーチサンダル」に見えるかもしれないが、これがなかなかの優れもの。まず、発砲素材による一体成型なので、クッションが効いて履きやすく、ビーチサンダルのように鼻緒が抜けてしまうこともない。かかとも平らではなく、ややへこみを持たせたカップ形。ソールの裏は濡れた場所でも滑りにくいようにと、深い溝ができている。

タレントや歌舞伎俳優のファンを獲得

 最初はダイバーたちの間で評判になっていたが、「滑りにくいからいいんだよね」と、釣りを趣味とする嵐の大野智さんがテレビ番組で紹介したことでブレイク。つるの剛士さんなどタレントのファンも増えている。鼻緒が3本に分かれる3本型、一本の一本型、冬でもはけるサボタイプなどがある。
 「意外な使い方をされています。サボタイプは介護のときに滑りにくいので入浴の補助などに、また手術のときに医師や看護士の方々に重宝されています。金具を落としたときに足を傷つけないために、サボタイプがいいようなのです。歌舞伎界では、一本型、三本型を裏方の人たちが舞台の準備をするのに滑らないと履き始め、役者さんの間でも評判になっています」(松下専務)。
 メンズ、レディスがあり、現在は約180型、価格は大体が1000円以下。「国産・滑りにくさ・廉価」の3つが売りだ。スタート時からネット販売を始め、現在ではネットでの売上げが店頭の倍になっている。雑貨のセレクトショップにも卸すなど、全国規模で販路を広げている。

ウォーキングタイプとブラックパンプスが好調

 そのほかの靴のニーズは、ウォーキングタイプと冠婚葬祭用のブラックパンプスの2種に大別され、しかもブラックパンプスでは普段使いのできるものが中心だ。メンズは「マレリー」、「マドラス」、レディスでは「マドラス」「ハッシュパピー」「アキレスソルボ」「快歩主義」などが売れ筋になっている。ギョサンの顧客層は10〜70代と幅広いが、一般の靴は50代が中心となっている。品ぞろえはメンズ3割、レディス7割。力を入れているのはアフターケアで、専属の修理店を抱え、ヒール交換、ソール交換にも応じる。
 「100周年を迎え、ショップを少し若返らせたいと思っています。アウトドアやワラビーブーツ、また自分でもフルマラソンを走るので、スニーカーやスポーツ系シューズなども手掛けてみたいです」。
 ギョサンのサンダルで、すっかり有名になったマツシタ靴店。テレビの旅番組や情報番組に出ることも多くなった。「小田原でしか買えない」ギョサンのサンダルを軸として、これからも独自の路線を歩んでいく。


小田原市栄町1−16−33
TEL:0465・24・2233