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メイド・イン・ジャパンで攻める 企業レポート

・進捗しているアジア諸国とのEPA。加えて、昨年のTPP11に続いて、この2月からのEUとのEPAが発効する。
・日本を取り囲む環境はますます厳しくなることが予想される中、メイド・イン・ジャパンの製品を国内外で売り込む企業を特集する。

 吉田

東アジア圏で着実に店舗を増やす「ポーター」

東アジア中心に海外店舗は11店

吉田は今年で創業84年目となる。90年代から、アジアを中心とした海外への展開を推し進めてきた。現在、海外では11店舗を展開している。
1999年から出店する「クラチカ バイ ポーター 香港(KURA CHIKA by PORTER HONG KONG)」は現在、市内に計4店舗展開する。13年には「クラチカ バイ ポーター マカオ(KURA CHIKA by PORTER MACAU)」を出店。続いて16年からは「クラチカ バイ ポーター 台湾(KURA CHIKA by PORTER TAIWAN)」を出店、現在4店舗を数える。
さらに韓国・ソウル市内には“コンセプトショップ”としての契約で、吉田側が100%МDを組んだ「ポーター ソウル(PORTER SEOUL)」を16年から出店、すでに2店舗オープンしている。また、タイのバンコクでは17年から、大型ショッピングセンター「サイアムディスカバリー」内で、「ポーター」ブランドの常設コーナーを展開している。

日本製の商品を目の届く範囲で販売

これらの国では、現地でディストリビューション契約している企業を間に置き、店舗をコントロールしている。自社の「ポーター」ブランドを相手に理解してもらい、出店する立地や市場性などを見極めて、着実に一店舗ずつ出店を進めている。
「商品はすべてが国内生産であり、急速に新店が増やせるような生産キャパもありません。特に海外進出の際には、相手側に我々のブランディングを理解してもらい、お互いに“取り組む姿勢”を明確にしていく必要があります。あくまでも、国内の軸足を守り続けていくブランドだからこそ、海外への出店には、相手企業、立地、国柄などを多面的に精査して推し進めています」(広報部・阿部貴弘さん)。
「クラチカ(KURA CHIKA)」の名がつくショップは、現段階では東アジア中心だが、ニューヨークとパリで開催されているメンズファッション見本市「MAN」には、定期的に「ポーター」ブランドでブース出展をしている。ここでは、百貨店やセレクトショップなどのバイヤーに向け、卸売りを目的にしている。一方、越境ECなどは行わず、あくまでも自分たちの目の届く範囲でモノ作りをし、販売する考えだ。

EU企業とのコラボで世界的な認知につなげる

同社ではコラボレーション企画として、EU企業との取り組みもある。例えば2010年の吉田カバン創業75周年を記念して、ドイツのシュタイフ社のオリジナルテディベアと「タンカー」とのコラボレーション企画がある。ここでは世界限定750体を生産している。
「結果的にメイド・イン・ジャパンのアイテムを、海外の方が購入することにもつながり、『ポーター』のクオリティを知ってもらう好機になりました。さまざまなブランドとのコラボレーションで培ったフットワークが、現在も柔軟な製品づくりに生かされ、結果的に世界的な認知につながっていると思います」。
国内で「ポーター」を買い求めるインバウンド需要も増えているが、着実に進むという姿勢は変わらない。

「吉田カバン」の「吉」の正式な表記は「土」の下に「口」(つちよし) 






 リーガルコーポレーション

国内販売を強固にし、ブランド力をさらに高める

海外の小売りは中国と香港の7店舗

リーガルコーポレーションのEU市場への取り組みは、ミカムのジャパンブースに出品し、ドレスタイプのブランドを中心に紹介しているが、具体的な取引には至っていないという。
「商品に対しては、欧米の来場者からも興味を持って手に取ってもらえるが、取引をする上では、価格が大きなネックになっています」(竹崎直樹室長代理)。
このため、現状では製造・調達拠点であるアジア市場を主力に販売している。具体的には、小売の拠点を上海に置き、中国で5店舗、香港で2店舗展開するほか、台湾、インドネシア、タイなどでは代理店を通して販売している。アジアでの小売販売では、日本生産の「リーガル」を主力に、アジア生産の商品も一部加えている。

国産90万足は今後も維持する

現在、リーガルコーポレーションでは、自社TQによる革靴輸入は12万4000足ある。このうち、EUからの輸入は800足ほどある。ほとんどがインポートブランドの輸入に使っており、「リーガル」についてはEUでの生産は行っていない。
今回の日・EU間でのEPA発効に対しても、この取り組みは変わらない。反対に「リーガル」については「メイド・イン・ジャパン」にこだわり、国内市場をしっかり固めていく方向で考えている。
「EU諸国の歴史に裏付けられたブランド力は崩せませんが、当社のドレスタイプのモノづくりに対するこだわりや繊細さは、EU製品にも引けを取らないと思っています」。
現状の国内生産量は、自社グループ4社による年間生産量は65万足の規模があり、協力工場と合わせて約90万足の国内生産量を維持していく計画だ。
この国産にこだわり続ける狙いは、高品質なものを提供すると同時に、インポート商品にはできにくい小ロット対応ができ、短納期を実現できることも挙げる。同時に品質管理や工程管理が徹底できることもある。

店舗や売場を中心に顧客接点を進める

国内市場での取り組みでは、店舗や売場を中心とした顧客接点のできる場を有効活用していく考えだ。全国の「リーガルシューズ」や百貨店のイベントを通して、消費者にブランドや商品にまつわるストーリーやメッセージを開示し、伝えることでさらに押し進めるというものだ。
また、質の高い接客を通して、同社が展開するビスポーク、9分仕立て、ビルト・トゥ・オーダー(BOS)など、よりパーソナルな顧客ニーズに対応していくことで、海外ブランドとの差別化を進めていく。このパーソナルな対応は、現状では国内だけの展開だが、順調に伸びているという。
国内展開では、新しいショップ展開の動きも出ている。その一つが、「リーガル」だけではカバーできない若年層の掘り起こしと、「リーガル」の下をいく価格帯での対応として「ケンフォード」の展開がある。こちらも国内製造がメインで、大都市を中心に「ケンフォードショップ」の多店舗化も進めている。

日本の素材で靴の差別化を図る

材料の調達については現状、国内9割、海外1割の割合だ。EUとのEPA発効で、選択肢は広がるものの、現状の調達比率は変えない意向だ。
「これからも米国ラスベガスのショーなどに出品するなど、海外での挑戦は続ける。ここでは日本で開発された素材を使い、日本らしい商品を出品していくことも考えている。今後、市場開放で日本もグローバル市場の一つとなる。この日本でブランド力を高めることができれば、世界で戦えるブランドになると考える」。
今後の海外市場での取り組みでは、中国でのEC2店舗(天猫、京東)の安定売上げに注力することも挙げる。



 コロンブス

「ピッティ・ウォモ」に出展し、ヨーロッパ市場を開拓

60年ほど前から海外進出を開始

コロンブスの海外進出は、すでに60年ほど前から始まっている。「世界に良い商品を広めていきたい」とまさにコロンブス≠フような開拓者精神を発揮し、中国、台湾、香港などアジア各国に販路を求めた。商品を販売すると同時に、各国で「コロンブス」の社名や商品名を商標登録していったのは、先見の明があったといわざるをえない。
当時すでに「海外部」があり、英語や中国語の話せる社員を抱えて活動しており、各国で代理商と組んで販路を拡大していった。販売する商品はビン詰めの靴クリームが多く、後にもっと手軽な液体靴クリームやツヤ出しスポンジなどが歓迎されるようになった。
「歴史的にみて、五大陸で行っていないところはないでしょう。1966年に香港、2008年に上海、2016年にミラノと支社も設立してきました」(企画部・小高公次氏)。

ヨーロッパ各国に広まる「ブートブラック」

現在は、ヨーロッパ圏での販売額が大きな割合を占めている。
ヨーロッパは日本と比べて革製品の歴史が長く、各国にケア用品のメーカーがあったため、コロンブスの商品はなかなか市場を獲得できなかった。
転機となったのは、2011年にイタリアで開催されているピッティ・ウォモに初出展してからで、それ以降毎回出展し、来場者の靴を磨くプロモーションを繰り返した。これにより、ヨーロッパより歴史の浅い日本の靴クリームだが、品質が高いことが認知されてきた。商品は「ブートブラック」が中心で、スーパーブランドのOEMも受注している。
「ブートブラックの人気は高く、EU圏の主要な国のほかに、スウェーデン、フィンランド、デンマークなどの北欧圏などにも進出しており、昨年7月時点で、24ヵ国で販売されています。最も販売額が高いのはイタリア。OEMも受けていますが、自国の靴クリームメーカーと長くつきあっていたブランドが、日本メーカーと取り組みを始めるのは相当にエネルギーがいることで、ありがたいと思っています。これも、創業100年の歴史と松戸FACTORYでのたゆみない商品開発に裏打ちされた結果です」。

アジア圏でも好評なシューケアイベント

ヨーロッパ圏での販路は専門店、セレクトショップ、百貨店など。3年前にはテレビ番組で、同社の製品がドイツのセレクトショップに置かれているのが紹介されたことがある。
アジア圏では香港支社、上海支社が活躍している。特に中国では富裕層の多い沿岸地区を中心に、靴のお手入れの意識が高まっているといわれ、今後の市場として十分に期待できる。
事実、上海、香港、台湾などで行われるシューケアイベントの集客は多く、関心の高さをうかがわせる。韓国で日本からシャイニストやカラリストが出張してイベントを行ったときも、人気をよんだ。タイからタレントや女優、インフルエンサーが来日し、コロンブスの商品を使ってみた結果を、SNSで発信するというイベントも行った。着実なプロモーションの結果、アジア地区にも「ブートブラック」と共にコロンブスの商品が広がっている。

松戸ファクトリーの研究に裏打ちされた品質の高さ

コロンブスは千葉・松戸市にあるFACTORY内に、研究施設「松戸LABO」を持っており、商品開発を行っている。その研究成果が商品に生かされ、確かな品質として結実している。一般市場で販売されている靴クリームのほかに、皮革製品のメーカー向けに、より専門的な仕上げ剤の開発を手がけている。
「海外でも国内でも、メイド・イン・ジャパンは大きなセールスポイント。ライバルは多いですが、戦っていくためには妥協を許さないモノづくりが必要と考えています」。
海外での販売高は、売上げ全体の約1割。これをもう少し上げていくことと、自信をもって送り出している靴クリームを、世界中の人に使ってほしいというのが、コロンブスの願いである。