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メイド・イン・ジャパンで攻める 越境ECに取り組む
徳江実(アスコット)

インバウウンドで実績を積み、中国モールに出店

20年後は1兆ドル市場に。日本から輸入したい服・靴・かばん

日本から外国へ通販する越境EC(以下、全てBtoC)は伸びが年2割以上で、伸びは国内BtoC市場より高い。
訪日外国人が購入・体験し、食べ、帰国後に日本の越境ECサイトで大量購入という例が増えている。

ドラッグストアから

越境ECは日米中の各間で増え、経済産業省推定によると2017年度の世界越境ECの規模は32・5%増の5300億ドル。以後、18年6760億ドル、19年8260億ドル、20年9940億ドルと、3年で倍近く増えると予想されている。
中国は日本から25・2%増の1兆2978億円を購入。他の資料によると、今後日本から購入したい商品は1位化粧品49・8%、以下、日用品32・7%、食品26・9%、服・靴・かばん22・6%、高級品・ラグジュアリー19・3%、ベビー用品15・8%、マンガ・アニメ・キャラクターグッズ15・8%、医薬品16・0%と続き、日本でしか買えないものや日本独自のものが主のよう。
中国ではEC利用の4人に1人が越境ECも使う。理由は品質保証(正規品)60・7%、低価格58・6%、国内で入手できない52・0%。
米国からも28・2%増の1兆4578億円を購入し、国別購入額は日、米、韓、仏、独の順だ。
米も日本から15・8%増の7128億円購入している。
日本の越境ECが増えたのはアリババの14年開設「天猫国際(TmallGlobal)」からで、ケンコーコムやドラッグのキリン堂が出店して好業績を上げ、マツキヨ、サンドラッグ、花王、カネボー、資生堂、ポーラ、ライオン、ムーニー、ピジョン、ファミリア、ミキハウス、象印、タイガー、カルビーなどインバウンド売上げの多い企業の出店が続いた。
ミキハウスが天猫国際への出店直後の15年「独身の日」に子供靴を1日で4万足売ったのが有名で、42%引きで日本国内に近い価格とし、保税倉庫とEMS(国際スピード郵便)の双方で対応した。



激戦の中国越境モール
 
中国のBtoCは天猫と京東の2社で大半を占めるが、越境ECは上位4社が競合。トップは直販が主の阿易考拉「網易考拉(コアラ)」で、各国でメーカーから直接購入し、本物が安いと人気だ。羽田空港ビルディングが出店している。
2位の天猫国際は品ぞろえが圧倒的で、すでに有力ブランド・企業以外の出店は厳しく、日本でインバウンドや通販の実績を積む必要がある。
3位が京東「京東全球購(JD・WorldWide)」で、物流の質と速度が高評価。DHC、赤ちゃん本舗、楽天、三越伊勢丹など多数出店する。
唯品会「唯品国際(VIPDSHP国際)」との4社がシェア26〜12%台の間で競い、商品レビュー充実の「小紅書(ReD)」も6%へ急上昇。
中国アマゾンも「海外購」で日本品など扱うが、中国アマゾンがシェア1%台なので同様に苦戦、価格比較用に視られている。
国内ECと違い、言語、決済、物流、関税など法律や規制など、別な知識やノウハウが必要で、言語は英語だけでは不足。サイト制作や商品説明も自動翻訳ではなく、ネイティブレベルの現地語使いが望ましく、カスタマーサービスもネイティブが適す。特に中国のサポートはメールや電話でなく、チャットが普通なので、自社対応なら必然となる。
両国の生活や消費を知る在日外国人や留学生が生かせ、売場で同国人客の接客も可能だ。
慎重な面談や調査、詳細な契約を前提に、有能なら部門責任者や経営パートナーへの抜擢もありえる。外国人は在日特別永住者を除いて263万人おり、うち中国74万人、ベトナム29万人、フィリピン26万人、ブラジル19万人いる。

天猫国際か京東全球購

中国の越境ECは法人も個人も電子商取引業者の登記が義務付けられ、今年から施行の改正電子商取引法(電子商務法)で、取引限度額が1回2000〜5000元(8万円)に、年間上限が1人2万〜2・6万元(4万2000円)に引き上げられた。
中国の越境ビジネスは中国の業者が管理する保税倉庫に在庫を置き、そこから配送するのを「保税区モデル」といい、事業者が電商税を納付し、限度額以上や保税区適応品以外は関税・増値税・消費税を納付する。靴とバッグは適応で、関税ゼロ、増値税16%と消費税7・1%は各30%が減額される。通関手続きは出庫の際に行われる。物流コストが安く、問い合わせもモール側が担当。販売量が多い場合はメリットが大きい。
日本のECサイトから中国の個人に販売するのは「直送モデル」といい、個人輸入扱いで、行郵税を消費者が納付する。50元まで免税だったのが撤廃され、靴・バッグ共に税率25%。


手続き、決済方法も検討

輸入許可書(通関単)は両モデル共に必要だ。
保税倉庫からの配送は早ければ翌日到着。直送は日本郵政のEMSが適し、沿岸部や大都市は2〜4日で、大陸内部は1週間〜10日ほどかかる。追跡も可能で、損害補償も付くが、料金は保税区モデルより割高となる。
中国の決済はオンラインの支付宝(アリペイ)が一般的で、クレジットカードの銀聯も必要。他国はPayPalがマストだ。
中国への越境ECは天猫国際か京東全球購への出店が王道だろう。日本企業向けのサポートもある。
日本発の越境モールも「Bolome」など複数あり、他に手続き代行サービスや各種の代行ツールも種々ある。
国内自社サイトに海外からアクセスされた場合の「転送サービス」というのもあって、その時に転送サービスのバナーが表示され、クリックすると相手の言語で会員登録や商品の購入代行申請を行え、同サービス会社が購入代行と発送を請け負う。安く済むが集客はしてくれないため、広告宣伝は自己責任だ。
現地法人を設立しての自社対応は敷居が高い。法改定や権力者に振り回され、米中摩擦のようなリスクもある。各国それぞれに税や規制など各種事情や、消費者の好みの違いがある
中国の商品検索はほぼモール内で行われ、ネット全般の検索もグーグルでなく百度が使われ、SEO(検索エンジン最適化)が効かない。よって、広告宣伝はモールでの特集や、SNSの微信と微博が有効だ。
米なら米アマゾンのマーケットプレイス、実質一択だろう。