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〜好調企業レポート〜マザーハウス

発展途上国から世界に通用するバッグのブランディングで、市場を拡大

創業13年で、国内30店、海外7店に

今年で設立して丸13年を迎える株式会社マザーハウス。「途上国から世界に通用するブランドをつくる」というミッションを掲げ、バングラデシュ、ネパール、インドネシア、スリランカ、インドの5ヶ国で、それぞれの土地が持つ技術を活かしたものづくりを行っている。売上は創業以来落ちることはなく、店舗数も着実に増やしてきた。
現在のショップ展開は、国内に総合店・専門店を含めて計30店舗、海外は台湾に5店舗、香港に2店舗、今年はシンガポールにも出店計画がある。海外店舗はすべて代理店は通さずに、自社スタッフが直接現地に赴いて出店交渉をしている。
代表兼チーフデザイナーの山口絵理子さんが世界各国を奔走する姿は、TV番組や書籍などで広く知れ渡ることになったが、バッグやジュエリー作りという枠組みを越えて、「マザーハウスしか出来ないものづくりと、国際協力のかたち」が生まれているようにも感じられる。MH事業 副統轄責任者の日比谷菜美さんと、広報の福島京さんにお話を伺った。

素材の持ち味を生かし、高品質な製品を現地生産

「現在は、バングラデシュでレザーバッグや革小物、ネパールではカシミア等のストールやセーター、インドでは手紡ぎ手織りのコットンシャツ、インドネシアとスリランカではジュエリーを作製しています。
バッグは、立ち上げ当初はバングラデシュのジュート素材からスタートしましたが、現在はお客様のニーズの高まりを受けてレザーが9割になりました。
上記の国々は手工業が生活に根付いていたり、素材そのものを産出したりと土壌のポテンシャルが高い国です。そこへ私達が素材の持ち味を活かす加工法をともに考えることで、大量生産でもお土産の工芸品でもない、ライフスタイルに根付く高品質な製品を目指したものづくりを行っています。」と日比谷さん。
いまでは「途上国支援ブランド」といった認識で来店される方よりも、たまたま店の前を通りかかったとか、機能性や素材感に惹かれたからという、ブランドを知らずに購入される方がすでに7割ほどを占めているという。
「お客様から、細かいポケットが使いやすいとか、他にないデザインが気に入ったという、バッグそのものへのご感想を頂けるのはとても嬉しいです」と福島さんは話す。

素材開発から取り組み、オリジナル性を高める

企業の大きな強みのひとつが、独自性の高い素材開発。バッグに使うレザーやジュート、ストールやシャツの糸作りまですべて、一から作り上げるオリジナル製だ。
例えばバッグでは、新しいシリーズが出るたびに、使うレザーはありものではなく一から開発している。最近では、しっとりしたオイルレザーや微細なラメ加工を施した革など、ナチュラル感にプラスした豊かな表情の革が生まれているのも、現地のなめし工場と山口社長とがタッグを組んで研究を重ねた賜物だ。
またインドネシア製のジュエリーも、線細工職人に“金”での製作を依頼して、そこにスリランカのカラーストーンを組み合わせ、他にないデザインが誕生した。
2018年秋に立ち上がった「ファブリック マザーハウス」は、天然素材のアパレルアイテムを扱うブランド。技術と時間を要するが、職人がインド綿を手で紡ぎ、手織りした「カディ」生地で作ったシャツは、空気をはらんで肌触りも抜群だ。
「その土地にあるデザインや素材をそのまま使うのではなく、あくまでもマザーハウスが、現地にあるものを“掛け算”することで、更にポテンシャルを活かすというものづくりを重視しています。」と広報の福島さんは話す。



販売スタッフは“ストーリーテラー”

現在は国内の社員数は150名ほど。国内の店舗は30店あまりを数え、店内にはバッグだけでなくジュエリーやストールなどを、総合的にブランディングする売場が増えている。それだけに、平均客単価は26,000円と他の専門店に比べて格段に高い。
「販売スタッフは“ストーリーテラー”として、それぞれの店舗で主体性を持って接客に当たっています。マザーハウスに来る前は、販売経験がないという人がほとんどなのですが、自分の強みを活かしながら店長を中心にチームで乗り切っていますね。
社員にとっては、企業理念に賛同することに加え、『何のために働くのか』『売った利益はどこに繋がっているのか』が他より明確であることも重要なのだと思います。メンバーそれぞれの目的や興味の切り口に応じて、仕事にコミットしてくれているのではないでしょうか。」
山口絵理子さんが引っ張ってきたマザーハウスの会社のあり方も、立ち上げから10年を経て少しずつスタッフや現場力によるところも大きくなった。副社長の山崎大祐さんも、起業家支援のゼミナールなどを開催し、マザーハウスで培った経験を若手へと継承している。