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コンフォートと生きる

YANASE (東京・練馬区)

アサヒシューズとの協業で地元の顧客を支える

足に悩みの多い50代以上の女性が主力

 「YANASE(やなせ)」は、東京・池袋から西武池袋線で3駅ほど行った、江古田駅駅前の商店街にある。創業は1933年(昭和8年)という老舗で、現在の見澤正浩社長は3代目になる。
 約30坪の店内を見渡したとき、まず目に止まるのは「快歩主義」「アサヒメディカルウォーク」などのアサヒシューズの大きなPOPと商品だ。何と商品の8割がアサヒシューズで占められており、アサヒシューズの佐藤栄一郎社長やアサヒメディカルウォークを開発した塚本裕二執行役員も時折来訪するほどの、アサヒシューズにとって重要な店舗となっている。
 「ほとんどのアサヒシューズのブランドが入っている」というだけあって、主要ブランドはほぼアサヒシューズ。通勤快足(紳士)、アサヒメディカルウォーク(紳士・婦人)、快歩主義(紳士・婦人)、ウインブルドン(スニーカー)、トップドライ(婦人)などだ。

 「さまざまなお客さまがいらっしゃいますが、50代以上が中心となります。6割くらいが女性で、外反母趾など足にお悩みのある方も多く、それだけ足や靴に関心をお持ちです。そんな方々に、アサヒシューズの靴はぴったりと合致する。当店は流行を追わず履きやすさを重視していることを、わかってくださっているお客さまが多いです」(見澤社長)。
 アサヒシューズの商品が増えたのはここ10年ほどのことで、いくつか理由がある。まず、基本的に履きやすいこと。たとえばスニーカーブランドのウインブルドンは5000円以下の価格で防水設計となっていてお得感があり、他社のものと履き比べてもこちらを選ぶお客が多い。それで次第に他ブランドがなくなっていったという。
もう一つは「膝が痛い」「腰が痛い」というお客にお勧めするのに最適だからだ。アサヒメディカルウォークは、膝のトラブルを予防するための靴で、少しでも楽になれば、と勧めている。1万~2万円台と高額であるため、日に何足も出るわけではないが、販売のための講習会を受け、一足ずつていねいに売っている。
また、周囲にはデイケアのステーションも多く、快歩主義が売れている。人気トップは「L011」で、アッパーが大きく開くタイプだ。履かせてあげるのに楽と、介護する娘さんがよく購入していくという。

ブラックパンプスも主要なアイテムに

最後に、優秀な営業担当の存在があげられる。頻繁に通って来て「ぜひ一緒に取り組みましょう」と言ってくれた。さまざまなサポートもあり、次第にアサヒシューズに切り替わっていった。販促物もアサヒシューズから届けられており、自店で用意しなくても不自由することはない。
アサヒシューズが主力だが、売場の一角には他社のブラックパンプスのコーナーがあり、こちらもよく売れている。駅の反対側に斎場があり、「黒いパンプスが欲しい」と駆け込む人が多いという。普段履かないブラックパンプスだから、劣化してしまっているのに気づかず、「かかとが取れた、底がはがれた」などのトラブルに見舞われるのだ。江古田に靴店は同店しかなく、あわてて駆け込んでくる。
このほかにもパンプスを入れている。集客やアイキャッチになるセール品もあって、「このブランドがこの価格!」と驚かされる。何か宝探しができそうなショップである。

「誠実な接客」で定番品をていねいに販売

見澤社長は、紳士靴メーカーで働き、百貨店に販売員として派遣された経験を持つ。ここで学んだのは、高い靴を押し付けないことや誠実さが大切であるということだった。
 店づくりでは見やすさと手に取りやすさ、清潔感を大切にしている。これも、メーカー時代に培われた智慧だ。メンズの「通勤快足」では、ボリューム感を出すために全サイズを出している。
 「これからもアサヒシューズを中心に置くことには変わりはないです。当店は販売しているのは定番品で、売れ筋に絞って置いています。それが、強みとなっていま」。
 地元の顧客に支持されるアサヒシューズ。高齢化社会を迎えた日本にとって、アサヒシューズも、ステーションとなっているやなせのようなショップも、地域に必要不可欠なものなのかもしれない。

東京都練馬区旭丘1-75
TEL:03-3951-1509