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特集 これから主役だ ニットスニーカー

・ニットスニーカーが購買層を拡大し、売場の主力商品になっている。
・足を優しく包み、ストレスを感じさせない履き心地が、多くの人に人気だ。
・売場では、一時のブームに終わらない、普段履きの定番カテゴリーになると見ている。
市場動向

購買層を拡大し、スニーカーの主力カテゴリーに成長

履き心地の良さで支持される

 2015年ごろから、スニーカーの有名ブランドが展開し初めたニットスニーカー。これまでにはなかったカテゴリーとして人気となり、ジョギングタイプを中心の急成長をしている。
 人気の要因は、スニーカー人気の延長線上で、新たな1足となったほか、足にストレスを与えないフィット感が得られる、軽量で快適な靴であることが、幅広い年齢層に受け入れられることになった。また、夏に向けてはニットの清涼感も人気となっており、足入れをしてもらうことで、購買につながっているという。

5000〜1万円の間がボリュームに

 市場で人気なこともあり、あらゆる販路でニットスニーカーは販売されている。この中にはディスカウンターやファストファッションが扱う4000円以下のものから、靴チェーン店が扱う5000〜1万円台のPB(プライベートブランド)商品や、スポーツ店が扱う1〜2万円台のスポーツブランドまで、幅広い価格帯のものが販売されている。
 スポーツ店や靴専門店が扱う商品には、ブランド力やファッション性のほか、ジョギングやウォーキングシューズとしての機能性や、横ぶれしないなどのコンフォート性も求められている。

今後はカジュアルの定番商品に

 すでにボリュームゾーンで展開されているニットスニーカーは、今後も有力カテゴリーとして見ている売場は多い。2020年の東京オリンピックまでは継続するといった見方もある。また、一部ではピークが過ぎたと言われているスニーカー人気も、購買年齢層を拡大して売れており、ここにニットスニーカーの登場は、コンフォートやウォーキングに代わる存在となっている。
さらにスニーカーに限らず、今後はニット素材をアッパーに使った、ミセスカジュアルやブーツなども増えてくると見ており、売場の定番素材となりそうだ。


売場レポート

 シュープラザ 吉祥寺本店(東京・武蔵野市)

レディスのライフスタイルニーズで伸びる

マス商品になったニットスニーカー

 「シュープラザ 吉祥寺本店」は吉祥寺サンロード入口に立地し、数多い吉祥寺の靴店のなかでトップシェアを誇る。店舗面積は120坪、吉祥寺界隈のファミリー層を顧客に、インバウンド層も取り込む。スニーカーはもともとインバウンドニーズが高かったが、最近では外国人も一般の日本人と同じように、レイン関連やカジュアルシューズも求めているという。
 ニットスニーカーは、マス商品になりつつある。アッパーがハイテクニット素材のスニーカーは、今やレディスのライフスタイルニーズの主流になっている。「スケッチャーズ」がその代表商品で、価格帯も5000〜6000円台と買いやすい。定番となっているのはソックススニーカータイプだ。
 メンズのニットスニーカーも取り扱っているが、柔らかく安定性を欠くため、スポーツ用途ではない。こちらもカジュアルニーズとして定着している。



普段履きとして、価格は1万円まで

 「ニットスニーカーは2年前から人気が上昇し、昨年の春夏シーズンにピークを迎えたように思います。テレビドラマ『陸王』が盛り上がったこと、また駅伝人気が高まったことなどが要因でしょう。このころ、ナイキやアディダスも、軽いニットスニーカーを出し始めました」(内藤雄一郎 母店長)。
 今は来年の東京五輪をにらんでスポーツテイストが主流となり、ニットからメッシュへと動いている。ニットスニーカーは、スポーツ×ライフスタイルを表現する素材として定番となっており、チヨダでもPB「セダークレスト」でニットスニーカーを作っている。
「素材として目新しさはなく、マス需要の商品に近づいている。普段履きとしては、価格が1万円を越えると厳しい」という。
 マス商品になってくると、価格競争が進むが、シュープラザでは、スケッチャーズやナイキが5000〜7000円台、PBの「キレイウォーク」が4990円(税別)などで定番化しており、これ以下の価格では戦わない。
 押しているのは「スケッチャーズ」と「フィラ」で、夏に向けてホワイトコート系が動いている。

レディスカジュアルでニット素材は存続

 ニットスニーカーは柔らかくて軽く、ストレッチのワンランク上の素材。履いてもストレスを感じない画期的な素材として登場し、外反母趾などトラブルを抱えた人にも優しい素材として歓迎された。
 「ミズノのウエーブライダーは、よく工夫されたスニーカーですが、本格的スポーツでは使えず、カジュアル商品にならざるをえません。その意味では市場は飽和状態で、ニット素材の今後、レディスのカジュアルシューズとして残ると思う。エスパドリーユでアッパーがニットというものも出ていて、普段の生活に溶け込んでいくと見ています」。
 婦人靴市場は厳しい状況が続いている。それに代わって元気なのがスポーツで、「シュープラザ 吉祥寺本店」でも「スケッチャーズ」「コロンビア」「ルコックスポルティフ」などが伸びている。ただし、スポーツテイストが好調なのは、来年の東京オリンピックまでと見ており、その後は不透明という。



 アスビー 渋谷センター街店

売場の2割ほどを占めるアイテムに拡大中

ランニングからタウンユースに

 ジーフットの「アスビー」業態はショッピングモールに数多く出店しているが、渋谷センター街中央にあるこの渋谷店が旗艦店になっている。地下1階、地上4階からなる路面店で、1階スニーカー、2階スニーカーとランニング、3階メンズカジュアル、4階メンズドレス、地下1階婦人靴という構成で、ストック含め288坪の大型店。1、2階ともにスニーカー売場であり、スニーカーに力を入れている。
 渋谷センター街にある店は、外国人の来店客が多い。アジアから欧米までワールドワイドな人々が連日来店し、スニーカーフロアでは3〜4割が外国人だという。外国人の好みも日本人と変わらず、軽さや機能性のほか、ブランドでチョイスしていく。
 ニットスニーカーは、アディダスやナイキが先陣を切り、その後に他ブランドが続く形になった。
 「環境問題解決のため、製造工程がシンプルになったことが大きかったと思います。スニーカーは材料を裁断して作りますが、どうしても余りがでてしまう。ニットは一本の糸を編み込むのでムダもなく、部位によって締め付けを緩めたりきつくしたりして、フィット感を高めることができます。ランニング用からスタートしましたが、タウン用に履く人が増えて、一般のスニーカーに落とし込まれてきました」(八代秀憲さん)。



夏に向けて軽量化と通気性の高さを訴求

 アスビー渋谷店が注目しているニットスニーカーには、次のようなブランドがある。
 「ザ ノースフェイス エクストラフォーム」はソックスタイプでヴィブラムソールを使用している。ソックスのように全体が締まるので、フィット感が高い。
 幅広い層に人気の「スケッチャーズ」にも、ニット素材が増えている。低反発クッションのインソール「メモリーフォーム」を採用しており、足入れするとすぐ柔らかさが伝わってくる。
 「ナイキ エアマックス」シリーズでは、カラフルなトレーニングシューズが出ている。エアマックスは海外の人にも人気で、スマフォで画像を見せて「これください」という人も。
 ニューバランスでは「MS997」がお勧めだ。997シリーズはアメリカ製モデルとして有名だが、これをスポーツタイプにリモデルしたもの。高反発インソールを搭載し、長時間歩いてもつかれにくい。
 「アディダス ライトアディレーサー アダプト」は、「クラウドフォーム」というクッションを採用している。ミッドソールが軽くてクッション性に富むというのが売り。スリッポンタイプで、シューレースが面倒という人にはお勧め。
 ジーフットがことに力を入れている「ケッズ」からは、ニットスニーカーのソックスタイプが出ている。夏に向けて通気性の高いインソールを搭載、EVAソールにして軽量化を図っている。価格も5500円とお手頃だ。また、夏の一押し「コールマン」からはトロピカルな柄のニットスニーカー(レディス)が登場した。


将来は一定の割合でニット使いが定着

 このように、ニットスニーカーといってもデザインも多様化、価格もブランドによって1万円を越えるものから5000円程度までと幅広い。
 「ニットスニーカーはファストファッションショップやディスカウンターでも売られていて、価格はさらに安くなっています。アッパーの編み込みに強弱をつける技術や、テストに合格した耐久性など機能では、スニーカーや靴を作り続けたメーカーにはかなわないと思います。ブランドの中にはスニーカーのボディにブランド名を大きく書いているところもあり、それが人気にもなっています」(太田健さん)。
 もはやボリュームゾーンにまで浸透したニットスニーカー。夏を迎えて売場のざっと5分の1くらいが(部分使い含めて)ニット系スニーカーとなっている。一時のブームに終らせず、「今後一定の割合で定着するのでは」と、太田さんと八代さんは見ている。


売場のスニーカーケア 

山男フットギア本店小林孝至さん

デリケートな素材、フォーム洗剤で優しく洗う


“ビフォアケア”で汚れの付着を防ぐ 

山男フットギア本店のスタッフ小林孝至(ルビ:たかゆき)さんが販売時に、お客さんに伝えてるニットスニーカーの手入れ法を語ってもらった。同店ではアメリカのスニーカーケア専用ブランド、「JASON MARKK(ジェイソン マーク)」を主力に販売している。
「ニット素材は通気性に優れている一方、汚れや水分が侵入しやすく、デリケートな素材です。洗濯機で洗うよりも、多少手間が掛かっても、シューケア用品を使って手洗いを勧めします」という。
ケアの購入時から始まる。
「購入直後に行うのが『ビフォアケア』。防水スプレーをまんべんなくかけて、ニットに汚れがつかないようにします。当店が販売する『ジェイソン マーク』の防水スプレーは、より細かいミストが出るのが特徴です。これが素材の中まで入り込み、スニーカー全体を包み込みます」。

柔らかい毛でブラッシング、泡を拭き取るように洗う 

 「スニーカーについたほこりを落とすには、靴と同様にブラッシングが不可欠です。 “底周り用”の硬めな合成繊維毛のブラシと、“アッパー用”の豚毛や馬毛の柔らかいブラシの2種類を使い分けることをお勧めしています」。
 「次に水に浸したブラシに液体洗剤を付け、泡立たせながらアッパーをやさしく洗います。ここでは“フォーム状”の洗剤が扱いやすいです。汚れを泡に浮き立たせるイメージで泡立て、マイクロファイバー素材のタオルで泡を拭き取ります。編み目に残った洗剤はブラシで軽く落とします」。
「洗浄が終わった後は、再び防水スプレーをかけて、汚れからスニーカーを守ります」。
同店では秋にリニューアル後、スニーカーケアのワークショップやポップ・アップなどを行う計画だ。