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Gozovation (ゴゾベーション) (東京・八王子)

 
工房を構えて整形外科靴とオーダーシューズに対応

コンフォート店の少ない八王子に新天地を求める

 JR八王子駅付近は、多くの集合住宅が立ち並び、商店街が放射状に伸びている。その商店街を抜け、国道20号線に突き当たったところに「ゴゾベーション」がある。
 福士公輔(ふくし・こうすけ)代表は、埼玉・志木市にある「シューフィット セキネ」に5年間勤務し、ここでインソールの作り方から接客までを学んだ後、独立して高崎線宮原駅近くに店舗を構えた。現在の東京・八王子市に移転したのは、2009年のことである。
 「シューフィット セキネさんで勉強していたとき、毎月1回整形外科靴を教えにオーストリア人のマイスターがいらしていました。年齢も近く、山や読書が好きなことなど趣味も合い、独立してからも彼と仕事をしました。コンフォートを軸とするようになったのは、セキネさんの影響とともに、彼の存在がありました」(福士代表)。
 八王子に移転したのは「八王子市は56万人都市であるのに、コンフォート系のショップがあまりない」と勧められたからだ。「適度に都会なのに自然も豊か」であることがすっかり気に入り、訪れたその日に移転を決めた。ちなみに「ゴゾベーション」という屋号は大好きな作家の住んでいたマルタ共和国の「ゴゾ島」に「イノベーション」を組みあわせた造語である。

既成靴、パターンオーダー、フルオーダーシューズの3通り

 15坪の店内はウッド調のおちついた内装で、奥にインソールを製作する工房がついている。商品は既製品、パターンオーダー、フルオーダーの3つに大きく分けられている。
 既製品はインポートのコンフォートシューズで「フィンコンフォート」「シンク」「ドゥレア」などが中心。インソールを加工もしくは製作し、履きやすく調整する。脚長差や足の変形などにも対応する。
 パターンオーダーはメンズが宮城興業、レディスがシアンシューズのそれぞれ代理店となっていて、採寸して形やカラー、素材のオーダーを取った後に、発注する。
 注目すべきなのはフルオーダーで、採寸だけでなくギプスを巻いて採型し、フットプリントを取った後に自社の工房で木型を作って作成する。ほぼすべての工程が自社で行われる。
 自社工房は店舗の裏にあるビルに、14坪ほどのスペースを借りている。ここには、4名の職人たちが集まっている。
 パトリック・メルヒャーさんは、整形外科靴のマイスターの資格を持つドイツ人だ。23歳のときにマイスターの資格を取得し、日本に渡って神戸医療福祉専門学校で教えていたときに出会った。高橋秀麿さんは義肢製作所に勤務していた経験がある。原一輝さんは、メンズメーカーにて仕上げを担当していた。整形外科靴は、メルヒャーさんが作った木型を橋さんが型紙を起こし、その後、原さんが裁断・縫製したものを橋さんが吊り込むという分業体制で作られる。畑拓郎さんは、長くヒロヤナギマチで靴づくりを習い、現在メンズドレスシューズの工程をすべて担当している。

悩んで来店するお客にスタッフ全員で対応

 顧客は地元八王子を中心に、関東一円から訪れる。「痛い」「合う靴がない」「リウマチで足が変形している」「外反母趾がひどくなった」「脳梗塞になってしまいマヒが残った」など、足に悩みを持つ30〜60代の女性が多い。
 「お客さまに満足していただけるように、精いっぱい努力しています。悩んでご来店される訳ですから、通り一遍でない接客を心掛けています。他店で購入した靴を『調整してほしい』と持ち込む方もいらっしゃいます。こちらにも、できるだけ対応しています。また、スタッフ全員が歩行分析を勉強していて、歩き姿からも靴選びを決めています」。
 フットプリントで足の状況を見て、既製靴+インソールでいいのか、フルオーダーにするのかを判断。その上で、デザインの相談に入っていく。持ち込まれた靴にインソールを製作してフィッティングすることもある。
 あるとき、先天的な病気で、足首が動かなくなってしまった女性が「結婚式に履く靴を作りたい」と千葉・勝浦から来店した。左右の足首の太さが異なり、変形している。そこで、足に合う9センチヒールの靴を製作することとしたが、フルオーダーの場合は最初の採寸、2回目の仮靴でのフィッティング、最終フィッティングと3回の来店が必須となる。その女性は毎回勝浦から泊まりがけで来店し、ついに結婚式のための靴を手にした。「走ることさえできる」と大いに喜ばれたという。
              
東京都八王子市八日町2−4−1
TEL:042・621・0007