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注目企業 丸紅フットウェア


メレル、フィラ、イフミーの3ブランドを核に順調に市場拡大を進める

 総合商社・丸紅のグループ会社として、主に靴の企画・開発、輸入、販売を手掛ける丸紅フットウェアが、1994年の設立以来、順調に事業を拡大している。メレルやフィラなどのライセンスブランドのほか、オリジナルブランドのイフミー(IFME)を擁して躍進する同社の代表取締役・山本裕之氏に現状や今後の展開について話を聞いた。



若返りに貢献したメレルの「ジャングルモック2.0」

 弊社の事業内容は、ブランドマーケティング事業とプロダクト事業で構成されています。アメリカ発のアウトドアブランド、メレルは1998年から日本の輸入総代理店となり、すでに20年が経過しました。
 メレルの定番といえるのが「ジャンルモック」と「カメレオン」シリーズ。1998年に誕生した「ジャングルモック」は、日本でも非常に人気が高く、2006年に市場に浸透したことを確信し、そこから大きく躍進した今でも人気に衰えは見られません。メレルの売上げの2割?3割を占める基幹シリーズです。
 2018年には、20周年を記念して「ジャングルモック2.0」を投入しました。足入れの良さや疲れにくさといった履き心地はそのままに、全体のシルエットを細身に変え、よりスタイリッシュに仕上げました。「ジャングルモック」としては初めて、ヴィブラム社製アウトソールを搭載したモデルです。従来、「ジャングルモック」の購買層は40代?60代が中心でしたが、「2.0」の発売により、若年層の開拓に成功し、市場の裾野が広がったと思います。

アウトドアモデルとして訴求する「カメレオン」

 トレイルからストリートまでをこなすマルチシューズの「カメレオン」も好調ですね。2018年には、大ヒットした2011年の「カメレオン2ストーム」のリモデル版を発売し、高い反響を得ました。
 「カメレオン」は2011年頃から、野外フェスティバル向きの靴として人気が高まりました。しかし、メレルは本来アウトドアブランドであり、アウトドアブランドとしての訴求を行うことが、ブランドビジネスを持続させるため、意図的に野外フェスティバルから距離を置き、3年ほどかけて、トレイルランニングなどフィールド系のイベントでのPRを強化しました。野外フェスティバルへのアプローチは、昨年「カメレオン2ストーム」のリモデルの「カメレオン7ストーム」発売を機に強化しています。
 ヴィブラムのソール、ゴアテックスのアッパーなど、メレルの製品には多彩なテクノロジーが搭載されています。撥水性や防水性を備えた高機能・高品質なシューズです。アウトドアはもちろんのこと、町でもどこでも使いやすい。それがメレルの強みであり、魅力だと考えています。
 こうしたメレルの魅力をお客さまに発信する場として機能しているのが、全国に9店展開している直営店です。フルラインアップをそろえ、メレルの世界観を表現すると同時に、お客さまから得た声を新しい靴づくりに積極的に生かしている直営店は、双方向の情報のやりとりができる貴重なタッチポイントです。日本人の足幅に合った日本限定モデルも、この直営店で吸い上げた声がきっかけになりました。
 メレルの製造に関しては2年前からは、企画の段階から関与しています。これからもアウトドアとしての基軸をずらすことなく、モノづくりも含めて、日本の市場にメレルを訴求していく方針です。

母親の信頼を獲得し、売上を伸ばすイフミー

 プロダクト事業については、当初は大手量販店向けのOEMビジネスが中心でしたが、2000年に子供靴ブランド、イフミー(IFME)を立ち上げました。「子供たちの足を健やかに育む靴」をコンセプトに掲げているオリジナルブランドです。
 少子化が進む中、おかげさまで売上げは20年間右肩上がりを続け、シェアを拡大しています。好調を支えている要因の一つは、早稲田大学スポーツ科学学術院の鳥居俊教授と連携して、地面を踏みしめられるインソールを開発するなど、アカデミックな裏付けがあること。また、足の悩み相談室や計測会などのイベントを実施し、「足育」の啓蒙活動を熱心に行ってきたことがお母さんがたの信頼獲得につながり、人気を後押ししました。
 イフミーは0歳?6歳のお子さんを対象にした靴ですが、小学生向けの上履きも扱っています。安い商品が市場にあふれているにも関わらず、1足2300円の上履きは、上履き市場の20%のシェアを得ています。上履きは長時間使用するため、足ムレを防ぎ、熱や湿気を外へ放出する働きのある中敷を開発して、取りはずして洗える設計にしました。清潔に保てる点が好評の要因です。
 イフミーのチャネルは、西松屋やアカチャンホンポ、トイザらス、ベビザラス、バースデーなどの子供の専門チェーンと、チヨダ、ジーフットといった靴専門店チェーンといった、イフミーの強みがもっとも発揮されるチャネルに絞って商品を供給しています。20周年を迎える来年は、イフミーのコンセプトショップを都心に出す予定です。メレルの軸足が「アウトドア」なら、イフミーの軸足は「足育」です。揺らぐことなく、コンセプトを守り、お子さんの足の悩みをきちんと解決できるブランドであり続けます。
 

価格・売場のセグメンテーション戦略で拡大を図るフィラ

  ブランドマーケティング事業では、3年前からフィラの取り扱いもスタートしました。以前は別会社が手掛けていましたが、弊社にバトンタッチされるにあたって、企画・生産とマーケティング・販売の両面からのリブランディングを行っています。
 フィラは非常に魅力あるブランドですが、近年、年配者向けのイメージがやや強くなっていた感は否めません。そこで、持ち前のブランド力を発揮するため、まず最先端のスニーカーを扱う原宿のアトモス(atmos)と手を組み、高感度なティーンエージャーへの訴求を始めました。ここで販売しているのは単価1万円クラスの商品です。
 その一方でチヨダと提携し、本国の許可を得て、単価5000円クラスのフィラの独自企画商品を生産し、販売しています。価値を訴求し、ブランドイメージを上げると同時に、手の届きやすい価格でボリュームを見せ、ブランドアウェアネス(認知)を高めていきます。
このセグメンテーション戦略のもと、フィラはスタートから今まで倍々で売上げを伸ばしています。これもメレルとイフミーを20年間やってきた成果です。メレルというブランドを日本で育て、イフミーでモノづくりをやってきたからこそ、フィラの独自企画商品をしっかりと作れるようになりました。

3ブランドでファミリー対応のショップを今秋オープン

 今年11月には、メレルとフィラ、イフミーの3つのブランドをそろえたショップ「MFI」を南町田駅前のショッピングモール内にオープンします。MFI とは、メレルのM、フィラのF、イフミーのIの頭文字を並べた名称ですが、意図せずに、弊社の英語表記(Marubeni Footwear Inc)と同じになりました。お父さんにはメレルを、お母さんにはフィラを、そしてお子さんにはイフミーをご利用いただける「MFI 」は、お客さまのニーズを満たすファミリー対応型のショップ。まずは1号店を試金石として、今後の出店についても検討していきたいですね。
 今年度中には、これまで手をつけていなかった自社のECサイトもオープンする予定です。弊社製品はすでにアマゾンなどオイラインサイトで販売されていますが、そうしたチャネルとは別に、自社サイトならではの情報発信を行い、実店舗への来店も働きかけていきます。
 実店舗に来店されるお客さまの場合、接客を通して新たな発見を得て、まとめ買いにつながるというケースも少なくありません。接客についてはこれまでも注力してきましたが、ブランドの世界観や機能を的確に伝えることができるように、接客力のさらなる向上を図っていきます。
 SNSを活用したマーケティングも強化します。メレルの「ジャングルモック2.0」は、ある有名ユーテューバーが取り上げ、丁寧に機能を紹介してくれたことで、売上げが跳ね上がりました。影響力の高いSNSも含めてマーケティングを推進し、ブランドを進化させていきたい。目指すは、フットウェアに関するいかなるニーズにも応えられる靴の総合企業体です。

 株式会社丸紅フットウェア概要
代表:山本裕之
住所:東京都中央区日本橋掘留町2−4−3
TEL:03-3665-0135
年商:124億円(2019年3月期)
直営店:9店舗(メレル)