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ベンチャー企業 ホシノ ビスポーク シューズ(HOSHINO BESPOKE SHOES)
公認会計士からビスポーク職人に転身、エレガントなシルエットのビスポークシューズで市場開拓

 木型から作り込み、足に合った美しい靴を完成し、提供する。少人数でコツコツと靴作りを手掛ける職人が多いビスポークシューズの世界に新風を吹き込んでいるのが、2014年にスタートしたホシノ ビスポーク シューズだ。
 代表の星野俊二さんは、以前、公認会計士として大手会計事務所に勤務していたという異色のキャリアの持ち主。もともとモノづくりに興味があった星野さんは、足に合っていない靴や汚れた靴を履いている女性が少なくないことに注目した。女性の足元を美しくしたいと、個人でドイツ整形外科靴を作っている職人のもとで3年ほど修行した後に、ホシノ ビスポーク シューズを立ち上げた。


フルオーダーとセミオーダーで対応

 ホシノ ビスポーク シューズの靴の特徴は、なんといってもその美しさ。流れるようなエレガントなフォルムの靴は、足にフィットしつつ足元を魅力的に見せる設計が徹底されている。新作のデザインを2ヵ月に一度、5?10点発表しているが、「このデザインを見て、来店した」というお客も多いそうだ。
 オーダー方式は、木型から作るフルオーダーと、常時129種類以上の素材と色、3種類のトウ、3種類全15型のヒールから選べるセミオーダーの2種類がある。
フルオーダーは、採寸とカウンセリングを経て、木型とデザインの設計から仮縫い、製作、フィッティングまで一貫して実施している。靴は、仮縫と本番の2足を仕立てているので、仮縫のフィッティング時に最終的な仕上がりを確認できる。注文の7割を平均単価20万円のフルオーダーが占めているのも、最初から最後まで徹底した顧客視点の仕組みが構築されているからだろう。
 

イタリア仕込みの技術とSNS駆使で売上げ伸ばす

 当初、ミャンマーに生産拠点を置いていたが、インフラが未整備だったため1年半で撤退。現在は、すべて工房内で生産している。
 海外生産での失敗はあったものの、売上げは好調だ。職人の数も10人に増え、前期の売上げは前期比250%を達成した。今期も同様の数字を見込んでいる。成長を促した要因は、製造と販売の両面にある。
「製造については、イタリアでオーダー靴を手掛けている職人に依頼し、靴を作る工程全般に関して指導を受け、技術力の向上を図りました。数をこなす中で、問題点を見つけ改善していったことは効果的でした」。
 販売については、フェイスブックやインスタグラム、ツイッターといったSNSを中心に展開している広告が功を奏した。ビスポークシューズで、SNSマーケティングをこれほど積極的に実施しているところはないだろう。

靴のサブスクリプションとレンタル・システムを構想

 今後のビジネスの計画についても、既存の業界人にはない発想が光る。星野さんが描いているのは、消耗品として靴箱に靴を大量に持つのではなく、よく使う靴は「所有」し、季節性が高くハレの日に使う靴は「借りる」というビジネスモデルだ。
「たとえば、スマホでアプリをチェックすると、バーチャルなシューズクローゼットの上段にはヘビーローテーションする靴が並んでいる。こちらの靴については、修理代込みで、毎月定額で利用できる形にしたい。下段には出番が限られる靴を置き、利用する日を設定して、1回いくらで貸し出せる形式を考えています。現在はオフラインで購入する選択肢しか提供できていませんが、いずれはオンライン・オフライン合わせて、自分の足に合った靴を常にきれいな状態で利用できるのが当たり前という状況を作っていきたい」。
 いわゆる靴のサブスクリプションとレンタルの合せ技は、現時点ではまだ構想段階だ。その前に、星野さんは別のビジネスを軌道に乗せる計画を立てている。
「来年には、ヒマラヤ染のクロコダイルを使った靴など、30万?40万円の靴のオフラインでの販売を予定しています。また、サイズへのこだわりが少ないサンダルについては、オフラインでまず出してみて、評判が良ければオンラインでも販売していく計画です」。
 ビスポークシューズを事業の軸足に起きながら、星野さんが今後、新たに推し進めようとしているビジネスはスタートアップに近い。40歳までには「靴についてはやりきりたい」と話す星野さんは現在、32歳である。



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