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地元に密着 フェリルーチェ(新小岩)

「勧めたい靴」と「売れる靴」を半々に、ファッショナブルな顧客を増やす

「勧めたい靴」はエレガントな靴

 東京のJR新小岩駅の南口から約420メートルにわたって伸びるアーケード付きのルミエール商店街。「フェリルーチェ」はその商店街に近接する路地で営業している婦人靴専門店だ。オーナーの増田晴彦さんの業界歴は30余年だ。靴との関りはデザイン学校の学生時代に、新小岩駅前にあったケンコクド靴店にアルバイトとして従事したことに始まる。それが2015年のケンコクド靴店の閉店に伴い、独立して開業することになった。
 品ぞろえには特色がある。それは一貫して増田さんが「勧めたいものと売れるものを半々にしている」ことだ。一般の靴店というより、デパートと拮抗する品数を誇ってきたケンコクド時代に染みついた根強いポリシーがあるからだという。
「バイヤーをやっていました。自分の好みだけで選ぶのではなくて、これだとあの人が履くかな、あの女性はこれが好みかな、というイメージで商品を選んでくるのです。端的にいえば“仕入れるときに履く人の顔が浮かばないものは入れない”ということです。 “こういう靴を履いてほしい”という想いで仕入れるものを決めています」。
 たとえばヒール系では、ちょっと若者向けだが年配客にも履ける、あるいは日常でも履きこなせてしゃれた感覚のあるもの。同店では「リズリサ」や「デュラス」、「セシルマクビー」などファッション誌にも採りあげられ、一般的に知名度のあるブランドのものをそろえている。“洋服あってのブランド”というイメージの訴求も狙っているという。
 売りたい靴は機能よりエレガントさを前面に打ち出したパンプス類。「ジェリービーンズ」や「ルキオネ」、「メタルルージュ」などエレガントでファッショナブルに履けるものにこだわっている。さらに2000円台の手ごろな商品もそろえ、メリハリをつけた商品構成で営業を続けている。

主力は中高年層に移行、履きよい靴も提供

 いい意味でとがった個性を持つ靴店だが、これでも開店当初よりは考え方や品ぞろえは地域性に歩み寄ったものになってきた。開店当初は10代、20代の若い女性も訪れていたが、今は来店客の多くが中高年層だ。地元客と遠方から来るお客との比率は7対3になる。若者では、着るもの、身につけるものに特にブランドを求めない人が増えていることも大きい。
「もっときれいにしてみては、と提案しても“着られればいい”とか“古着かユニクロでいい”という。若い世代はこちら側の考え方では買ってくれないですね。昔みたいなおしゃれな人が少なくなった。また、がまんしてヒールを履くという考えが希薄になっています。だからうちも履きやすい靴を置くようになっています。本当は代官山とか青山にあるような店のイメージでやりたかったんですけど」と増田さんは笑う。
 きっちりとメリハリをつけたファッションをこなす人は、増田さんによれば「40歳過ぎくらいの人がぎりぎり」とか。そういう世代のお客さまはまだ熱心に来店してくれるそうだ。


雑貨店とコラボし、相乗効果をあげる

「フェリルーチェ」に限ったことではないが、今後は売上げや集客力をいかに上げるかが課題になってくる。
 同店ではそのひとつの試みとして、午前中は知り合いの雑貨店に店先のスペースを貸し、小規模ではあるが青空路面店のようなイベントを開いている。
「シェアしてお店を営業するようなスタイルです。たとえば靴屋さんの前に洋服屋さんを出したりとか、その逆のパターンをとったりとか。相乗効果で集客につなげるのもいいと思うわけです。仲のいい人たちとセレクトショップ的なことをやるのも一つの方法。ゆくゆく商業的にできれば、と考えています」。
 「フェリルーチェ」は「自分の職場より趣味の部屋といったほうが近い」とオーナー自らが語るほど個性のある店だ。増田さんの話題も豊富で「話しに来る人がたくさんいます。外人さんも情報を仕入れてふらりと訪れてくることもあるくらい。誰に対しても人見知りせず会話を楽しむほうなので、それがきっかけで買い物をしてくれるパターンもありますよ」とのこと。こののコミュニケーション力で、集客アップのための新しい売場を目指している。

▽東京都江戸川区松島4-46-11
(TEL&FAX)03−5879−4572