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話題の企業 ワークマン





ワークマンプラス出店を契機に売上げ2ケタ増続く

 「ワークマン」は、もともと屋内外で作業をするワーカーのためのショップであった。1号店は1980年の伊勢崎昭和店(群馬・伊勢崎市)で、その後順調に業績を伸ばしてきたが、爆発的な伸びを見せて注目されるようになったのは2018年9月に「ワークマンプラス」がららぽーと立川立飛(東京・立川市)に出店してからである。このときから、売上げの2ケタ増の伸びを見せている。2020年3月期の4半期の数字を見ても、第1四半期133・1%、第2四半期130・9%、第3四半期132・2%といずれも30%以上の伸びで推移している。
 ワークマンはロードサイドの店舗が普通であったが、ワークマンプラス立川立飛店は初のショッピングセンター内への出店ということで、「イージス」(防水)、「ファインドアウト」(スポーツ)、「フィールドコア」(アウトドアテイスト)の3つのPB(プライベートブランド)を切り取り、一般向けのショップとしてオープンした。作業着とはいえ、かっこよく着たいというニーズもあり、「ワーカーもそうでない人も着られる服」を目指した。これが想像を越える評判を呼び、この後の出店はすべてワークマンプラスとなった。店舗数は昨年末現在858店舗、うちワークマンプラスの店舗は153店舗である。
 ワークマンプラスの好調さは、SCを訪れる女性客に支えられたからだ。価格の安さ、機能性などが人気を呼び、SNSでぱっと広がった。すると各メディアが取材に押しかけ、「知る人ぞ知る」ショップだったワークマンの名は瞬く間にメジャーになった。
 女性客は現在3割ほどで、SC内のワークマンプラスでは5割に達する勢いだ。売場は100坪が基本で、半分を一般向けにし、ディスプレイやマネキン、照明などを変更。残りの半分はこれまでの顧客層のための売場で、若干圧縮された陳列となっている。
 価格で見れば、内側にアルミプリントを貼った保温性の高いジャケットが3900円という安さである。通常1万円はする機能商品がこの価格なのだから、ヒットしないわけがなかった。当初レディスのサイズはなかったが、ユニセックスラインとして小さめのサイズを作ることによって対応した。


超軽量アスレシューズライトと高反発ミッドソールのハイバウンス

 ワークマンの商品開発チームは、肌着、カジュアルウエア、作業服、レディスウエア、フットギア、セーフティグッズの6部門からなり、以前から靴を手がけていた。安全靴の分野があったからである。メーカーや問屋など約30社とコラボレート関係にあり、生産地は主に中国。靴のアイテム数は約90で、作業用スパイクなどの小物も含めると300にものぼる。
安全靴だけでなく、スニーカータイプの商品も開発しており、スポーツ向けPB「ファインドアウト」から「アスレシリーズ」が出ている。「アスレジャー」から命名されたこのシリーズはヒットし、年間80万足を売り上げる。
 このシリーズから、片足(26センチ)150グラムという超軽量の「アスレシューズライト」が2017年7月に発売されている。通常なら300グラムを切ると軽量になるが、これはその半分の重さである。
 「靴や長靴に軽さが求められるようになっています。素材は特殊なものではなく、アッパーはポリエステルのメッシュでソールはEVA。中底とアッパーの間に入れる素材を工夫しています。この靴をフルマラソンで履いた人がいて、自己ベストに近いタイムを出し、ブログで『軽さは速さ』と書いたことによって評判になりました」(商品部フットギアマネジャー、青木正志さん)
 最初はブルーとグレーだったが、女性のためにオレンジとクロが追加された。レースアップと面ファスナーの2タイプがあり、屈曲性を高めるためにソールには縦横の溝が入っている。価格は980円(税込)と1000円を切る安さだ。ワークマンとしてはこれが先芯の入っていない靴で、つまり安全靴以外で最初の大ヒット商品となった。最初から人気が出たわけではなく、売場投入から半年後くらい経過した時点で、それまでの棚置きからハンガーに吊したディスプレイに変え、アピール度を増していった。
 これをバネに今年4月、同じくアスレシリーズから「アスレシューズハイバウンス」が発売される。特色は高反発のミッドソールで、高反発であると同時に特殊な配合によりへたりにくいものにした。箱根駅伝で注目されたナイキの厚底ランニングシューズは、速く走るための靴であって、一般の人では履きこなせないといわれている。ハイバウンスは厚底ではあるが、日常生活の中で履いて疲れにくいというのが開発コンセプトになっている。
さらにアウトソールのゴムの配合を変えて「滑りにくい」付加価値をつけた。耐滑区分は1から5まであり、最も滑りにくいものを5とするが、ハイバウンスは4である。ミッドソールを含めたソール自体を「バウンステック」として商標登録申請中だ。片足240グラムと、こちらも軽い。
 デザインは履きやすいスリッポンタイプで、アッパーのシューレースでも調整できる。価格は1900円(税込)。




「この機能をこの価格で売る」から商品開発をスタート

 なぜ、このような価格が設定できるのだろうか。青木さんはこう言う。
 「『良いものをより安く』が当社のコンセプト。商品開発は、『こういった付加価値のある商品をいくらで売りたい』というところからスタートします。あれこれつけていくとお客さまの希望する価格帯ではなくなるし、そういう商品は世の中にたくさんある。2900円などという中途半端な価格では出しません。1900円だからこそ出す価値がある。委託先のメーカーが『やっぱり2900円になってしまいますね、それでいいですか』といってきたら、開発はそこでストップ。こうやって止めたアイデアもいくつかあります」。
 「エブリデイロープライス」が基本であるため、セールは年4回、1週間だけしか行わず、スポットの特売もしない。「普段から他社に負けない価格で販売している」という自負があるからだ。広告宣伝もほとんどしない。その分価格に還元するという考え方だ。
 ワークマンは今最も靴に力を入れていく方針だ。ハイバウンスは年間で20万足販売する計画だ。店内では靴が5分の1ほどを面積を占め、女性ファンも付きはじめているためカジュアルシューズのアイテムは、今後もさらに増えそうだ。
 

株式会社ワークマン(2019年3月期)
代表者:小濱 英之
本社:群馬県伊勢崎市柴町1732
https://www.workman.co.jp/
売上高:930億3900億円(前期比16.7%増)
店舗数:837店(前期比16店増)
    (FC店734店、FC店比率88%)
PB商品売上高:368億5000万円(PB比率39.7%)
靴売上高:160億3500万円(構成比17.2%)
(安全靴・地下足袋・長靴・厨房シューズ他。アスレシューズの伸び率は前期比51.7%増)