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企業レポート キビラ

おしゃれなオーダーパンプスを手軽な価格で提供。19年は年間3万足を販売

「高品質で低価格」をいかに実現していくか

 オーダーパンプスで有名になった「キビラ」は、今年で創業8年目を迎えた。代表の福谷智之氏はもともとファーストリテイリングに勤務していて、ユニクロの商品部や店舗統括などの管理職を歴任した。ユニクロで靴のビジネスを始めたのも福谷氏である。ファーストリテイリングを退職して銀座コマツに入社、新規事業を立ち上げることになった福谷氏がスタートさせたのが「キビラ」だった。「足に合うパンプスがない、靴のビジネスをやってみたい」という女性社員の言葉に背中を押されたのだった。
 とはいえ、靴のビジネスの厳しさも知っている。他社と同じことをやっていては成功しない。そこで「高品質で低価格であることを、いかに実現するか」を考えた。結果として生まれたのがオーダーシューズだった。
 福谷氏は2012年にキビラを設立し、店舗を開設したが、店頭はまだ既製靴の割合が7〜8割と多かった。だが、ニーズは圧倒的にオーダーパンプスが高く、少しずつ拡大を続け、今では7割がオーダーシューズとなっている。
 

神戸・長田メーカーと共同で商品開発

 キビラのオーダーシューズは、フルオーダーではなくパターンオーダー。スタートのラストはラウンドトウ、ヒール高7センチのハイヒールで、ここからヒール5センチ、9センチなどバリエーションが増えていった。現在では足長10タイプ(21・5〜26・0センチ)、幅3サイズ(S、M、L)をそろえる。カラーはタイプ別になっていて、季節の限定色もある。デザインは20型ほど。価格は合皮で9900円から、革で1万9900円から。一番人気の商品は「ビーナスフィットパンプス」シリーズという。
 「ハイヒールを進化させようということで、メイド・イン・ジャパンにこだわり、神戸・長田の靴メーカーと共同で開発しました。ソールとヒールを一体成型してシャンクをなくしたために軽量化し、安定感が増しています。疲れにくく、履きやすい商品を開発できたと思っています。インソールのアーチサポートもしっかりしていて、前滑りしないように前足部とかかとに滑り止めがついています」(商品マーケティング本部 マーケティング部部長兼広報部部長 玉井摂人さん)(←ルビ:かねひと)

3D計測器で測定1ヵ月で仕上げる

 接客は、足の測定からスタート。3D計測器により、ミリ単位でサイズ、形を測ってカウンセリングし、ぴったり合ったサイズの靴を持っていって履いてもらうと、「えっ、こんなにフット感が違うの?」と驚く人がほとんどだという。ちなみに、各店舗には600足近くのフィッティング用の靴をそろえている。仕上がりまでは約1ヵ月で、自宅に届ける。2000円追加すると「スキップオーダーサービス」ということで、およそ1週間で出来上がる。
左右の足のサイズ違いにも対応するほか、店内では「外反母趾が当たらないようにしてほしい」などカウンセリングも行う。
来店は「足に合うパンプスがなくて、ネットで探してきた」「友人が履いていて、とてもいいといっていた」など、ネットやクチコミによるところが大きい。顧客の中心は30〜40代の働く女性たちで、半数以上がリピーターだ。17年9月の販売開始以降、17年7024足、18年2万5067足、19年2万9225足と順調に成長を遂げている。
店頭にはオーダーシューズのほかに17年からスタートした既成靴のライン「ボディバランスシューズシリーズ」も並べている。こちらは身体のバランス、ことに骨盤を整えるための靴で、骨盤に歪みが出てしまいやすい産前産後の女性に効果が期待されている。同社の技術顧問である桜美林大学の阿久根英昭教授のコンセプトを特許化して製造を開始、現在も100名のモニターからデータを収集している。

新宿小田急の売場は坪効率1位に

 キビラは現在9店舗を展開中で、うち4店舗が百貨店内にある。
 積極的に出店する百貨店の店舗は10坪程度で、前に「ボディバランスシリーズ」を、後ろに「ビーナスフィットパンプスシリーズ」を置く。キビラのシンボルカラーである赤を前面に出した内装だ。
 「『キビラ』のブランドネームは、『キラキラビューティ』の略。ゴージャスな雰囲気の中でお買い物を楽しんでいただきたいと、店頭も凝った作りにしています。コストはかかりますが、百貨店さんは面積も狭いため、出店コストがあまりかかりません。また集客力があることも魅力で、ブランドをアピールすることができます。オーダー中心なのでバックヤードのスペースをあまりとらないことで、百貨店さんからは歓迎されています。坪効率を見ても、新宿小田急店さんの靴売場では1位となっています」。
 

就活生向けのパンプスも開発

 キビラのオーダーシューズはこれまでは30〜40代をメインターゲットとしてきたが、今後は就活生にもアピールしていく計画だ。就活生向けに力を入れていくのは、「CAビーナスフィットミドル・ローヒールパンプス」で、キャビンアテンダントと共同開発されたものだ(1万900円)。
 キビラが開拓してきたオーダーシューズの分野だが、追随する企業も現れてきた。オンワード樫山も昨年からスタートさせたし、チェーン店ではABCマートも手掛けている。その中で、キビラの優位性はどこにあるのか。
 「国内工場と商品開発しているので、品質は負けません。同じプライスで並べてみると、品質の違いがわかります。オーダーシューズはベーシックなデザインに集約しています。黒のスムースレザータイプが着回しがきき、どこにでも履いて行けると最も人気があります。おしゃれな形、変わった素材のものがほしいという声もありますが、むやみに増やしていくことはしません」。
 キビラは「靴の購買行動を変えていこう」という考えを基にスタートした。通常は、店舗に行けば今履いているサイズと同じ大きさの靴を出してもらって、合わせるだけ。自分の足の正確なサイズがわからない人も多く、これが健康被害を起こす原因となる。その状況を踏まえたうえで、店頭ではまず計測してもらうことを大切にしている。キビラの言う「お客さまの足に合った一足」は、そこからのスタートとなる。

 株式会社キビラ
代表者:代表取締役 福谷智之
設 立:2014年4月おしゃれなオーダーパンプスを手軽な価格で提供。19年は年間3万足を販売
店舗:新宿小田急店、西武池袋店、梅田大丸店、
あべのハルカス近鉄本店、横浜ジョイナス、池袋東武ホープセンター店、
銀座コア店、名鉄地下街サンロード店、ekimoなんば店
住 所:東京都中央区銀座1−18−2 辰ビル4階
TEL:03・6661・6377