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注目専門店 ニューバッグワカマツ(鹿児島市)

EC、実店舗、飲食店の3本柱で利益率重視の経営。働きやすい職場環境づくりも進める

2000年からECサイトに注力 

 国内でインターネット販売が本格化したのは、ちょうど2000年前後になる。「楽天市場」が、たった13店舗で事業を開始したのが1997年。「Yahoo!ショッピング」は99年にスタートしている。
今でこそあまたのEC店舗がひしめいているが、その黎明期である2000年にバッグ専門店として楽天市場に店舗を構えたのが、鹿児島の「ニューバッグ ワカマツ」である。現在三代目となる代表取締役社長の若松孝一郎氏が、28年前に実家であるバッグ専門店の事業を継ぎ、まだ珍しかったインターネット販売をスタートさせた。
現在ECでは「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」「アマゾン」「ポンパレモール」に出店中。ECの売上げは、月平均でおよそ8000万円になっている。
リアルショップは「アミュプラザ鹿児島」に「アージュ」というレディス専門店を、「イオンタウン姶良(あいら)」には「ダブルバゲッジ」という「ポーター」を中心としたユニセックス系の店舗を出店している。

大手問屋と取引できず「楽天市場」に賭ける 

 若松社長は大学を卒業後、東京で大手複合機販売会社に勤めていた。だが28年前に実父の体調不良から、急遽「ニューバッグワカマツ」の事業を継承することになった。異業種出身だったこともあり、業界について知ることはほぼゼロだった。バッグの販売はもちろん、小売りの経験はまったくなかった。
「祖父の代から天文館(鹿児島の中心商業地)に本店を構え、市内にもいくつも支店がありました。創業は、祖父が雑貨や雨具から商いを始めたと聞いています。私が継いだころはライセンスブランドが強かったこともあり、大手問屋の展示会などには新規開拓として足を運びましたが、どこもけんもほろろ。有名ブランドは導入が難しかったことから、当時『ルイヴィトン』『プラダ』などのインポートブランドを並行輸入で仕入れ、リニューアルで増床した本店2階に並べました。これが驚くほど売れたのを覚えています」(若松社長)。
 なかなか大手問屋と取引ができず、何か手はないかと探し続けているうちに、まだ黎明期だった「楽天市場」を知ることになり、出店を決めた。
「ただし、5年間ほどは鳴かず飛ばずで、日々どうすれば売れるのかを考える毎日でした。月1000万円を突破するまでに時間がかかりましたが、これからはネット販売の時代がくると信じて、辛抱強く出店を続けました」。


ECはモール店舗に集中。飲食業界にも進出

 売上げを伸ばす中で、オンライン・リアル店舗ともに、並行輸入商品やミセスブランドを徐々に縮小し、国内のバッグブランドへとシフトしていった。当時、扱えなかった「吉田カバン」には若松社長自ら何度も手紙を書き、ようやく取引にこぎつけたという。アウトドア系の「ノースフェイス」「グレゴリー」「チャムス」なども、社内での1、2を争うブランドに育て上げている。また、レディスでは「ダコタ」「ツモリチサト」などに力を入れ、売上げを伸ばしている。
同社は現在、売上高よりも利益率を重視する方向に進んでいる。以前に立ち上げた自社サイトは、モール店舗のほうに集中するため、現在は閉めている。また、大阪に物流センターを構えて、日本全国に1日で届ける仕組みや、人気アイテムは在庫切れさせないなど、次に買う時もここで≠ニ思ってもらえるようなサービス体制を構築している。「商品写真の撮影は外でのロケにこだわり、社員たちがのびのびと撮影しています。そんな点もサイトの雰囲気に出るのではないかと考えます」(若松社長)。
 事業の多角化にも取り組んでいる。バッグ専門店にとどまらず、2017年にはワンコインピザの店「CONA」を、19年には高級食パンの店「偉大なる発明」をFCでオープンしている。バッグ業界の中での発想にこだわらず、常に外にアンテナを張り、好調な業種業態を日々研究している。

EC、実店舗、飲食店の3本柱で利益率重視の経営。働きやすい職場環境づくりも進める

「育休」「短時間勤務」導入で離職率も下がる

 従業員数は70名。男女の構成比は1対9と、圧倒的に女性が多いことから、女性支援にも力を入れている。鹿児島県から従業員の仕事と子育ての両立支援に積極的に取り組む企業≠ニして、「かごしま子育て応援企業」の認定を受けている。男性・女性に関わらず「育休」が取得でき、短時間勤務の正社員制度などを導入している。2名の女性役員がいるが、一人は17時で帰宅するママさん役員だ。
「働きやすい環境づくりは年々意識しています。共働きの方も多いので、子育て中の人には早めに帰宅してもらい、休日を増やせるように努力しています。風通しの良い社風作りで、最近は離職率も下がってきています」。
 さまざまなトライアルを繰り返してきた若松社長だが、これからも新しいビジネスの芽を探し続けていくという。

株式会社 ニューバッグワカマツ
代表者:若松孝一郎
会社設立:1959年1月16日
売上高:20億円(19年7月)
従業員数:70名
実店舗:2店(「アージュ」、「ダブルバゲッジ」)
EC:「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」「アマゾン」「ポンパレモール」
住所:鹿児島市高麗町22-6 
TEL:099-255-8600