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コンフォートで生きる

セーラムシューストア (埼玉・上尾市)

足に合った、快適な靴≠使命に、オーダーメイドで提供する

革靴が好きになりオーダーに目を向ける

 セーラムシューストアは昨年4月に埼玉・上尾市に開業したオーダーシューズの靴専門店だ。オーナーの鈴木健一郎さんは映像業界からの転身組。学生時代は映像関係の勉強をするために海を渡り、アメリカ、そしてオランダと留学を続けてきた。その間に西洋のシューズ文化を体感している。
 帰国後は日本の映像関係の仕事に20年間従事したが、社会人生活の中で革靴が好きになっていった。鈴木さんの足は、JIS規格でいうところのBとCの間くらいで、足がすごく細いということを知ったものそのころだ。
さらに、オーダーメードシューズを手掛ける人や、靴専門店の関係者にも人脈を広げていく中で “いま足が細い人がすごく多い”ことを知った。また子供の足育がないがしろになると、それが原因で情緒不安定な子になることもあると学んだ。こうした中で、次世代の子供たちのために、なにか残せる仕事はないかと考え、映像の会社を退社した。

靴の職人ではなく快適靴の啓蒙役になる

 退社後は1年間、埼玉・草加市にある「かがみ靴教室」に通い、そこで靴づくりを学んだ。ただし職人になるつもりはなかった。
「自分の役目は“いまちゃんとした靴を履きたい”“足で悩んでいることがあるけど靴の選び方がわからない”という方々にアドバイスすること。同時に“足ってこういう機能があるのですよ”“ぜひまわりで苦労しているかたにもお話ください”“お子さんがいらっしゃればぜひ教えてあげてください”と啓蒙活動のお手伝いができればいい」(鈴木さん)。
 また、自分に対して投資したい”という方の想いを、靴の面からサポートしたいと考えている。これまでの経験で“できる人”は靴に投資し、磨きをかける人が多いという。このため、同店のお客には?ミドルアッパークラス≠フ人を対象にしている。
 セーラムシューストアは宮城興業の「オリジナルカスタムメイドシューズシステム特約専門店」として顧客の窓口となり、注文を受けている。
 開業当初は“カスタムメイドの紳士靴店”としていた。だが、商売をスタートしてみると、女性客の要望がすごく多かった。女性客の「需要は大きい」と確信し、レディスのコンフォートもオーダー・メニューに加えた。
現在、購入客の割合は男性7割に対して女性が3割。年齢層は40〜60代、メインはそろそろ現役を引退される人になる。平均単価は男性が約4〜5万円、女性は3万円。これは男性用のメニューのほうが豊富なことがあるという。
 

ネットでの情報発信で“良い靴”を知らせる

「足は測らせていただきますが、その数値はあくまで目安としてしかとらえてない。たとえば計測時では3Eでしたお客さまが、足癖などいろいろなことを確認していくと、最終的にはシングルEがいちばんいい締まり方に落ち着きました。実測のサイズより、足幅だったら何%か小さいほうが、足にとってちょうど気持ちのいい締まり方をする場合があります。それを見極めるには、せめて履いてから最低10分はお客さまの足になじませてみないと判断できません」(鈴木さん)。
 顧客ひとりの接客に2〜3時間かけるため、一日あたりの接客は2〜3名がせいぜいだ。このため、現在は予約制をとっている。店舗は目立つところに立地しているわけではないが、その存在は利用者の口コミと、鈴木さんの手によるブログおよびユーチューブでの情報発信だ。
ユーチューブやブログによる発信は、少しずつ効果を発揮し始めており、現状では県外からも訪れている。こうしたお客さんは、鈴木さんが発信する“良い靴”の考え方に共鳴し、その想いを共有しようとする人たちだ。

足にも、気持ちにもいい靴を提供

鈴木さんが考える良い靴は二つ。ひとつは「ちゃんと足にあって“歩くための適切な靴である」こと。もうひとつは「その人のテンションを上げる“気持ちに対していい靴である」こと。要は“足にいい靴”と“気持ちにいい靴”だという。
「二つがそろって、初めていい靴だと思っています。その概念を具現化するためには、オーダーで対応することが僕の中ではいちばんの近道と考えています。お客さまも靴に対してきちんと認識していただくことは、将来的には靴業界にとってもいいことだし、子供たちにも少なからずいいものを残せると思ってます」。

ヒサゴ合同会社
埼玉県上尾市上町1丁目5-15 ルミネンス上尾 104
電話:070-5360-9403