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地元に密着 つるや履物店(東京・江戸川区)

浅草問屋とのつながりを力に、顧客満足度を高める品ぞろえ


履物店から転じて婦人主力の靴店に

 東京のJR新小岩駅の南に位置するルミエール商店街。ここにある「つるや履物店」は、創業60年の歴史を誇る老舗のショップだ。利用客は婦人5、紳士3、子供2の割合となり、お年寄りから子供まで幅広い年齢層に親しまれている。周囲には老人ホームや介護付き住宅、介護施設などが点在し、昼間は中高年の女性客が多い。このためコンフォートやケアシューズの品ぞろえを充実させている。現在、店主を務めるのは4代目の遠藤功太郎さんだ。
 履物店としての始まりは、遠藤さんの曾祖母と祖父母が小さな下駄屋をはじめた1940年にさかのぼる。
「とても小さな規模で開業したんです。天井から紐をぶら下げ、草履などを引っかけているようなスタイルで営業していました。祖父が法人の会社に変えたのが1961年のこと。このアーケード街に出店したわけですが、当時も扱う商品は下駄・草履・和傘などでした。店内の通路も余裕があり、ぽっくり下駄などが飾られたきれいなショーウインドーがあった。いまみたいにはガチャガチャしてなかったですよ」。
 現在は靴の専門店として営業しているため、履物店の面影は感じられない。履物のニーズが少なくなったことが大きい。
「履物に関しては、夏場にビーチサンダルがわりに履くようなものが売れるくらい。だからいまは安いものしか置かずに営業しています。ほんとうに履物が好きな人なら、浅草へ行ってしまうと思う。鼻緒なども選べますしね」。
 とはいえ、昔から履物に関しては問屋とつながりがある。顧客に頼まれれば、いまでもお好みにあった履物の販売は可能だという。
「この素材でこの鼻緒で、と注文をいただければお応えができる。鼻緒をつけたり、前坪(マエツボ)のところを広げたり狭くしてくれとか。そういうのはうちの父ができるんですよ。履物店として培ってきたノウハウが生かせるところです」。


百貨店と同じような流行の靴も並べる

 靴屋にしたのは約40年前。長年の浅草との強いつながりがあり、問屋との絆は大きな力となった。特価品の仕入れルートや、最新のトレンドを入手するためのアンテナとしての役割を果たすからだ。
「店先に手ごろな値段の商品を並べるのですが、いまはサンダルがとくに売れています。目玉のひとつに1100円のサンダルを出していますが、これは浅草の問屋の特価市で半額くらいで仕入れたもの。見た目がおしゃれなのでお得感があるだけでなく、通りを行き交う人に向けたアイキャッチにもいい。こういう商品をうまく仕入れられるという点で、つながりのある問屋さんの存在は大きいですね」。
 店内にもお客の気を引く商品をそろえている。最近のヒット商品は、神戸ブランドが付加価値となったレディスシューズの新製品だ。色やデザインがおしゃれで、百貨店では9800円くらいする商品を、少し引いた価格で販売している。


 最新の流行にあわせた品ぞろえは、来店する顧客の目には嬉しいサプライズとして映る。「地元でも百貨店と同じ靴を売っていた、しかも価格が手ごろ」と、喜んで買っていった女性客もいるという。
 顧客の満足度が高ければ、再来店してくれる機会にも恵まれる。それが結果的に地域の固定客を増やすことになる。長年培った浅草の問屋とのつながりは、「つるや履物店」にとって大きな柱となっている。

東京都江戸川区松島3−14−6
TEL:03−3655−5188