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新社長に聞く 杉山 忠雄氏((株)チヨダ)

コロナの影響が大きい時だからこそ、社内改革を実行する

5月に開催された定時株主総会で、杉山忠雄常務が新社長になった。チヨダが70年代ロードサイド業態の東京靴卸売センター(現東京靴流通センター)の出店に乗り出し、飛躍的に成長した真っただ中で入社した生え抜き社長だ。‶シンキング・ホワイル・ランニング〟(走りながら考えろ)の合言葉で突っ走ってきた世代の一人である。


子供靴の伸びは心強い 在庫処理は進捗

――澤木祥二前社長をから経営のバトンが渡されました。前期決算は減収減益となりましたが、この期はどんなことに取り組んできましたか?

杉山 これまでに溜まりに溜まった商品在庫の処理に注力し、前期は金額にして20億円の商品評価損を計上しました。暖冬で雪寒地の降雪が少なかった影響で、防寒ブーツなど、まだ未処理のものも多く、さらに、今回のコロナでこの春物が残ってしまい、今期も10億円ほどの商品評価損の計上が必要になるでしょう。
 売上げは子供靴が好調で前期比106%と伸びました。これは、子供に特化したテレビCMの効果かと思います。子供靴は現在も伸びており、コロナ禍でも心強い商品です。ほかにはグローバルブランドを中心にスニーカーがそこそこ売れています。

――大手靴チェーン3社の3月から5月の状況を見ると、営業自粛でどこも大きく落としていますが、郊外単独店の多いチヨダは、その点、有利だったのでは?

杉山 そうですね。3月、4月は他社と同じように影響を受けましたが、5月は前年の75・7%に踏みとどまりました。


企画開発部の新設しアジア諸国で生産

――今後の業態開発を含めた出店で考えていることは?

杉山 TSRC(東京靴流通センター)については、立地を考慮しながら出店を考えますが、まだ出店の余地はあると思います。ここ数年、積極的に進めてきた都心型、駅前立地の出店も継続します。もちろんSCにも出店しますが、いずれにしても場所と条件次第です。
駅前立地で賑わっていても高齢化が進んでいたり、あるいは若い人がいてもファッション関連は近隣のSCで買い物をするといったように、最近は人口や年齢構成など表面的な数字だけでは実態が分かりにくいケースもあり、慎重にならざるを得ません。



――コロナ禍という大変厳しいなかでトップになられましたが、これからの舵取りについて。
 
杉山 コロナの影響が大きい時だからこそ、これまで考えてきた社内改革を実行したい。その一つとして、商品部を商品企画開発部に組織変更しました。商品力が、売上げを上げるうえで最大のものであり、商品の企画開発に注力していきます。
商品開発では、生産地の見直しも考えています。現状のほぼ中国一辺倒のところを、適地適品の考え方で、アジア周辺のいろんな国に振り分けていきます。

人的効率を高める一方、活気のある売場を目指す


――HPの就任挨拶で、「コロナの終息後は新しい社会秩序が生まれるのでは…」、と述べています。

杉山 これは必ずしも当社がやるということではないが、1万円台の靴もしっかりそろえた高級靴専門店のニーズは高まってくるのでは。スキルの高い販売員を置き、接客型でちょっとラグジュアリーな靴を販売する店です。そのMDでは日本製に目を向けるのもいいと考えています。また、すでに取り組んでいますが、買物時間が少なくなる中、Eコマースによる消費もさらに進むでしょう。
なおかつ、人と人とが極力、接触しなくても済むような売場づくりも考える必要があるでしょうね。将来的には労働人口が減っていく中でも、人員が少なくても成り立つ、効率のいい売場作りを目指したい。
さらに5G(高速大量通信)を活用したデジタル店舗もおもしろいでしょう。具体的にはこれからですが、従来の売場にはなかったイベント的な要素も折り込められれば楽しいのでは。。例えば、VR(バーチャル・リアリティ)を売場で活用すれば、これまでにはなかった活気が売場に生まれるでしょう。5Gで何ができるか、いま順番に調べている段階で、来春までには具体的なものを見せられるのではないでしょうか。

――デジタルな展開の一方で、接客教育など人材育成や女性活躍での取り組みは

杉山 社内資格としては、シューズアドバイザーの制度があり、すでに2230人ほどの人が取得しています。また、シューフィッターの資格取得も奨励しており、会社としては認定者に手当てを出しています。20代半ばの若い販売員が“バチェラー”に認定されており、周りのスタッフも取得したいという人が増えています。
新たに女性活躍推進室を設置し、女性の活躍の場を広げる取り組みも進めています。