今月の記事・ピックアップ 2020・10
 HOME > フットウエアプレス >  特集 新・地域一番店
特集 新・地域一番店

 ブロック (千葉・我孫子市)

足の健康を考えた靴とインソール専門店。2005年から多店舗化、8店舗に

スポーツ選手の多い地域に出店

 1954年、千葉・我孫子市に誕生した小さなスポーツ専門店は、現在「足と靴の専門店ブロック」として、千葉県北西部やつくば市内に5店舗を、MBTウォーキングショップを3店舗展開する企業に成長した。ブロックの店舗面積は越谷レイクタウン店がもっとも広く、約40坪。他店はおおよそ30坪前後の売場面積だ。
 出店の基準は競合が少なく、主なターゲット層である高齢者と若いファミリー層が多いエリア。単価が決して低くないため、ある程度の所得が見込める層が多いエリアであることも出店条件の一つ。そして、もう一つの重要な基準は、スポーツ選手の多い地域であることを挙げる。
「大学やプロスポーツなど、スポーツ選手の利用が多いのが当社の特徴です。たとえば、柏店(千葉・柏市)ではサッカーの柏レイソルのほか、バスケットボールのサンロッカーズ渋谷の練習拠点があるため、トレーナーや選手同士の紹介で、非常に多くの選手に来店いただいています。サンロッカーズ渋谷の選手はほぼ全員インソールを作成しています」(代表取締役の村田由一氏)。
 足の健康には人一倍注意を払うスポーツ選手の利用が多いのは、ブロックがシューフィッターや義肢装具士、インソール製作技術者などを多数抱えたプロ集団だからだ。地域医療機関との連携も多く、整形外科や歯医者など病院から紹介を受けた客はほぼ毎日来店している。


本店は8月も前年維持 客単価3万1000円

ブロックは、足や靴の悩みを抱えている人の貴重な受け皿として機能している。それだけにインソールの売上げ比率は高く、売上げの10%以上にのぼる。種類もオーダーメイド、PB、仕入れ品、医療機関との共同開発品など多岐にわたる。
 コロナ禍で多くの靴専門店が苦戦を余儀なくされているが、ブロックは売上げがダウンしているとはいえ、そう大きなダメージではない。7月の決算は前年比84%の3億1000万円(税込み)。8月の売上げは、我孫子市の本店は前年比100%を維持し、他店も90%前後で推移している。8月の坪単価は柏店が約21万円、越谷レイクタウン店が約19万円。「9月は前年が消費税増税前の駆け込み需要があったので、もっと大きく割り込みそう」と村田氏は見るが、業界の現状と比較するとブロックの強さが光る。
 客単価も高い水準をキープしている。9月のある1日を例にあげると、柏店には10人の客が訪れ、約31万円を売上げとなった。平均客単価3万1000円は、ブロックが、足の健康のためには出費を惜しまない顧客を獲得している実態がうかがえる。口コミで評判が広がっているため、子供用の靴を求めて福島から来店する客など、遠方から訪れる客は少なくない。母の日や父の日は予約が殺到するそうだ。


コロナの収束後は再び出店を進める

 靴のラインアップはメンズ、レディス、スポーツと幅広く、「トリッペン」など快適性にモード感をプラスしたブランドも扱っている。
売れ筋ブランドには、OEM生産したPBの靴がある。また、スペインの「cetti」の動きもいい。丁寧な靴作りや独特の色使い、レザーの加工技術に特徴があり、若い世代に受けているブランドだ。
「MBT」も男女を問わず、根強い人気を得ている。ランニングシューズブランドの「ブルックス」も好調だ。セールをしなくても高い人気を得ているという。
 今後の課題としては、子供の親世代の靴への意識を変えていくこと。
「子供の皮膚感覚は5歳ぐらいでほぼ決まってしまいますが、お父さんやお母さんの『足に良い』という概念がそもそも間違っていることが多く、子供にとってどんな靴がいいのかわからないため、店に丸投げする傾向が強いんです。発信力を強めて、親の考えをアップデートしていく必要があります」。
 新規の出店については、今のところ計画はないが、21人の社員はすべて店長候補。そのための教育や研修にも力を入れている。
「コロナの収束を見計らって、満を持して出店したいと考えていますが、いまは生き残るのに必死。この危機を乗り切って、10年後、そして100年続く会社に育てていきたいですね」。





 池のや (岐阜・多治見市)

日本ブランドとオリジナルに絞り、東海エリアで13店舗展開

履物専門店からバッグ店に業態転換

バッグ専門店の池のやは、「J-bag(ジェイバッグ)」と「A-pool(アプール)」「groove(グルーヴ)」などの業態で、岐阜・多治見市の本店を拠点に、名古屋近郊など東海地区一帯や横浜市に13店舗を展開する。
JR多治見駅から伸びる商店街を歩いて10分ほど、ほぼ通りの終着点の辺りに「IKENOYA」本店がある。5年ほど前に増床リニューアル工事が行われた。白壁にガラスのウィンドー、そしてレトロな瓦屋根のコントラストが周囲とマッチしている。中庭には大きなもみじの木が茂り、陶磁器の街らしいオブジェも置かれる。
「創業は明治28年と古く、先代は履物店を営んでいました。私が『アピタ多治見(当時)』内に『アバンギャルド池のや』をオープンした1985年が、バッグ専門店のスタートです。その当時はライセンスブランド全盛の頃で、『ゴルチェ』などを扱っていました。一方で、まだ知る人ぞ知るような存在だった『ポーター』を、東海エリアで初めて展開しました」(宮島敏明社長)。
 


国内ブランドだけ扱う「Japan bag=Jバッグ」

人気の高かったライセンスブランドを集めたバッグ専門店の出店からスタートしたが、郊外に大手専門店チェーンが出店しはじめると、徐々にブランドのバッティング問題などが浮上してきた。
そういった動きに反するように、1998年に「今後はライセンスの入ってないブランドで勝負する」と、「J-bag=ジャパンバッグ」だけの品ぞろえにこだわった業態「J-bag」を開発した。「ボーデッサン」「ビースタッフ」「ソワール」「アイソラ」といった、技術力の高い国内ブランドを導入した。
アピタ名古屋北店(当時)に出店した第1号店を皮切りに、2003年には「アピタ長久手店」に、バッグ専門店では珍しい大型店舗(約70坪)のショップをオープンしており、名古屋エリアの目の肥えたお客さまと?ともに育つ≠ニいう想いで取り組んできた。
「当時は『国内ブランドだけを集めた店が売れるはずない』と、散々な言われようでした。しかし、協力してくれるメーカーも徐々に増え、革のクオリティーやシルエットで勝負できる土壌ができました。レディスでは靴も一緒に置くなどして、トータルで女性のライフスタイルを提案することを意識しました」。



店作りでも差別化する「groove」を出店

 その後「アピタ」や「イオンモール」など郊外型ショッピングモールの隆盛と共に、レディス業態の出店と併せて、メンズ業態である「A-pool」を同時オープンする出店スタイルが定着した。メンズ業態では、高い天井にシックな内装、そして目玉は大きな”ビリヤード台”を什器代わりにしたディスプレイが話題となった。
 2006年には「イオンモール名古屋ドーム前店」に新業態「groove」を出店させた。「店づくりは圧倒的に良いものにしたい」という考えから、ニューヨークのジャズクラブをイメージしたほの暗い店内には、本格的なドラムセットやピアノが置かれ、中二階のテラスにはアーティストによる本格的な絵が描かれた。内装には3000万円をかけ、バッグ専門店とは思えない圧倒的な雰囲気づくりで、さまざまな企業が視察に訪れたという。
 2年前の18年には名古屋の「メルサ栄」に、約40坪の都市型店舗をオープンしている。若い世代からミセスまでと、幅広い客層に向けたMDを模索する中で、「J-bag」の果たす役割を再確認しながらの船出だったという。
 
息子世代が手掛けるオリジナルブランド

 「池のや」はオリジナルブランド「池野工房」を展開する。東京の鞄メーカーで修行していた次男が地元に戻り、2013年に立ち上げたものだ。同時に本店のはす向かいに、オンリーショップもオープンしている。革の質感を生かし、手間暇かけたアイテムがそろう。「池のや」では販売にとどまらず、ものづくりにも参入することで事業の幅をさらに広げている。
 現在はコロナ禍の中、レディス部門はやや苦戦している。しかし、メンズは昨対越えするなど売上げは堅調だ。
「チャレンジしなくなったら終わりですから。また新しいブランドに出会えることをいつも楽しみにしています」と宮島社長は朗らかに話す。