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地元に密着 フィール(東京・品川区)

10年前からオリジナル靴を販売 既製品より高くても顧客からは好評

バッグやアパレルも置く ブティック雰囲気の店

 東京・品川区の東急線・武蔵小山駅東口から伸びるアーケード商店街パルム。賑わいのあるこの商店街の中で、個性的な品ぞろえの営業をしているのが「フィール(feel)」だ。シューズショップというよりも、ブティックのようなイメージ。創業時は靴店としてのスタートではあったが、イタリア製のバッグを陳列し、奥のスペースにはアパレル売場を設けている。
「靴は減らして、バッグや洋服も扱う物販店といった感じです。靴だけだと商売のリスクが大きい。洋服はパンツを買ったらシャツやパーカーもというセット買いがありますが、靴ではいちどに2〜3足買う人は稀です。アパレル類をそろえているとやはり客単価が違ってきます」(岸 光一店主)。 
 靴種を減らした分、品ぞろえは絞り込んでいる。扱っている靴の大半は?フィール≠フ屋号ブランドのオリジナル。革にこだわり、製造は問屋とのつながりで小ロット生産が可能な国内メーカーに依頼している。10年ほど前から扱っており、きっかけは信頼できる問屋とのデザインに関する意見のやりとりだった。
「どこのメーカーや問屋も扱う靴が画一的、といったら『デザインは変えられますよ』といわれました。絵を描いて考えるのが好きだったので、面白みを感じて発注してみた。納品された商品はイメージ通りで、売れ行きもよかった。それからオリジナルを定番化しました」。

付加価値を付け 価格競争を避ける

 オリジナルシューズは、問屋が扱う既成靴をアレンジしている。ここでは、アレンジの希望にメーカーが応じてくれるかを、問屋を通して確認してもらい、小ロット生産OKなら依頼するという流れだ。
アレンジはアッパーなどの素材やカラー変更で、これらの組み合わせ方などをポイントに置く。さらにインソールにはメーカー名ではなく屋号の「feel」の文字を入れ、オリジナリティをより強調する。付加価値をつけることで価格競争を避けると同時に、独自の販売価格を設定できるメリットがある。
「既成のものより高い革を使い、あまり使われないような色の組み合わせを重視しています。問屋さんがあつかう既製品の上代が1万3000円のものが、うちでは1万5400円で値付けができる。しかもこちらのほうが売れます」。
 ファッションに鋭敏な女性ファンをつかみ、地元だけでなく、川崎など近郊の人もと電車で来てくれるようになった。広域の女性客を呼び込む、という点においてもオリジナルシューズは魅力的な商材になっている。

独自性は差別化と生き残り戦略

 店づくりや品ぞろえで独自性にこだわるのはもうひとつ理由がある。差別化であり、生き残りのための戦略だ。「革靴にはこだわりたいし、百貨店さんが扱う商品も売りたくない。そうなると必然的に店独自のイメージとか雰囲気を打ち出さざるを得ません」という。
 また「若い世代やおしゃれに敏感な人たちは、モールやファッションビルに行ってしまい、地元靴屋では買い物をしない」という危機感もある。革靴へのこだわりと、オリジナリティある店づくりへの注力は、こうした対策も考慮に入れてのもの。一見高そうな商品を扱っている感はあるが、売れ筋のボリュームゾーンは1万3000〜1万5000円のライン。手の届きやすい価格でショッピングが楽しめるのも、来店客に好評のようだ。
 フィールは来春にかけ一部を改装してリニューアルを行う。目的はさらなるイメージの明確にするためだ。靴自体の数は減らすものの、オリジナルシューズの品数は増やすという。春には全部で約20種類と充実させ、3月のスタート時にはバッグと洋服とを併せながら打ち出していく。

東京都品川区小山3丁目22-19
TEL:03−3787−0254