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コンフォートで生きる
健康靴 アミカ(横浜・鶴見区)

外出が不自由な方のために、出張販売で足のトラブルを解決する

「盈靴塾」で学び15年前に独立

 「健康靴 アミカ」はコンフォートシューズの出張販売を行っている。主な仕事は、糖尿病やリウマチで変形してしまった足や、脚長差などの足のトラブルに対応していくことで、顧客の手持ち靴や既製の靴をフィッティングさせていくという。
 尾又裕美代表は短大を卒業後、会社就職したが、いつも靴で悩んでいた。気に入った靴やサンダルを買って履いて帰ると、靴擦れで出血してしまう。なぜだろうと考えていたときに、「シューズサロン タグチ」(茨城・古河市)を紹介する記事に出会った。同店の田口精二代表は、後進を育てる「盈靴塾(えいかじゅく)」を運営しており、「何か形になる仕事をしたい」と思っていた尾又さんはすぐに連絡を取り、学ばせてもらうことにした。
 「横浜から古河に引っ越して学びました。靴関連のことばかりでなく、奥様の初枝さんからは接客やミシンの使い方も教えていただきました。『お客さまに喜んでいただける仕事をしなさい』という田口先生の言葉が、今も心に残っています」。
 盈靴塾で1年半ほど学んだ後に独立した。今から15年ほど前のことになる。

HPを通して連絡を受け、最低3回の訪問で対応

 「出張販売」という業態を選んだのは、「在庫を抱えて靴店を開く資金がなかった」ことと、「足の悪い方は車か家族と一緒に来店される。それならお伺いしてフィッティングすることもできるかも」と思ったからだという。
特に宣伝はしていないが、理学療法士、ケアマネージャー、看護士たちが抱えている患者のニーズにあわせ、ネットでHPを見て連絡してくる。
 フィッティングの流れは、大まかに分けて3段階あり、訪問も最低3回は必要となる。
@ 自宅などに伺って足形を取り、インソールを製作するか、どのような靴で調整するかを決める
A 顧客の靴を見て、合わない靴の場合は既製の靴を選んで持って行く。フィッティングして大丈夫なようであれば、インソールを入れるなどして加工
B 靴の最終フィッティング(合わないところを最終調整するアフターサービスもある)
 時間的にはほぼ1〜2週間で、価格は靴の料金プラス調整費となる。アインラーゲンというインソールも、木型を作ってから削り出すこともあり、価格的にもばらつきがある。
 「お客さまから、ありがとう、この靴でないと歩けない、などと喜んでいただけるのが一番嬉しいです。中には、糖尿病とリウマチを同時に抱えてしまって、その時々によって痛む箇所が異なるという、大変なお客さまもいらっしゃいました。結局、私のことを信頼していただかないとダメなのです。何回も通っているうちに気持ちがほぐれてきて、信用していただけるようになります」。



顧客から励まされながら難しくても逃げずにがんばる

工房には、フィニッシャーとプレス機が備えられていて、すべての工程を自分でこなす。 「脱げやすい」人には、踵部分に革を貼って踵止まりをよくする。脚長差のある人にはアウトソールを高くする。すり足の人にはアウトソールを船底型に加工してローリングしやすくする。このように一人ひとりの状況に細かく対応していく。
 いまでも何か相談したいことがあれば、ためらわずにシューズサロンタグチに行って教えを乞う。だからこそ「一人でもがんばれる」のだという。
 「この仕事を、とにかく長く続けたい。逃げ出さないという気持ちでやっていきます。ここまでやってこられたのは、お客さまのありがとうという言葉と、(シューズサロンタグチの)先生たちのおかげなのです」。
 現在はコロナ禍のため、自宅を訪問するのは控えられる時期だ。だが、長年の顧客からの発注はあり、また手紙や連絡もあって励まされている。

横浜市鶴見区場上町10―2−1102
TEL:045・834・7751
http://www.amikanokutu.com