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企業レポート馬里奈(婦人靴 卸小売)<br>

リーズナブルなヤングトレンドで成長。近年はOEMとSPA展開が主軸に

中国に生産拠点を置き多面的に販路を開発

 馬里奈は、1956年に前社長中澤辰三氏によって設立され、61年に法人化された。現在の中澤文宏社長は2代目となる。
 初期は前社長の実家である北海道・小樽の三馬ゴムやアキレスの代理店を行っていたが、次第に婦人靴を扱い始めた。当初は専門店に卸していたが、60年代になるとGMSとの取引きが始まった。当時、絶好調だった西友、ジャスコ(現イオン)、イトーヨーカドー、マイカルなどの大手流通チェーンと結び、飛躍的に売上げを伸ばしていった。
製造の軸足を中国に移すのも早かった。2000年には中国に拠点を設け、大量かつスピーディにGMSや量販店に商品を供給した。
 その後、卸し先としてGMSや量販店に加え、通販や専門店も開拓してきた。卸しが中心だったが、SPAブランドも創設、百貨店やショッピングモールで頻繁にPOPーUPショップを開いて売上げを確保した。
 馬里奈が発展してきた背景には、このように敏感に時代の流れを感じ取り、多面的に販売先を開拓してきたことがある。これを支えたのは、中国の生産体制であった。現在、中国にはSMCC(蘇州馬里奈商貿易有限公司)という100%子会社の企業があり、日本人1人、中国人3人が在籍。数多い協力工場をコントロールし、検品などの作業を担当している。

継続的にポップアップ展開。SPA業態は16店舗に

 大きな柱となっているのがOEMだ。量販店ばかりでなく、アパレルメーカーやファストファッションまで幅広い顧客を抱え、その数は30社以上にのぼる。これを20名の営業スタッフがフォローしていくのだから、多忙であろうことは想像できる。
1社が数ブランド抱えていることが通常であり、ターゲットや売価も異なる。取引先ブランドのカラーにあわせていくことが一番で、例えば同じバレエシューズでも、「A社はスクエアトウで、B社はラウンドトウで」と変化を付けていく。
 「グレースアベニュー」「ベティクラブ」「セセンタ」などSPA型ブランドもあり、ライセンスブランドも「モズ」「エドウィン」「エルプラネット」「プライベートレーベル」など多数展開している。
 「薄利多売から利益を確保しつつ、SPA業態を開拓してきたというところでしょうか。自社直営店舗も16店舗展開しています。北千住と有楽町の両マルイの店舗を旗艦店とし、港北モザイクモールやららぽーと立川立飛など、ファッションビルやショッピングモールに出店してきました。ららぽーとやイオンモールなどショッピングモールでは継続的に期間限定のPOP−UPショップも出していて、こちらはアウトレット的なイメージです」(中澤文宏社長)。
 

新ブランド「セセンタ」でECマーケットも強化

 昨年秋冬シーズンに、馬里奈はSPA型ブランド「セセンタ」を立ち上げた。「セセンタ」はスペイン語で60という意味で、馬里奈が法人化されてから60年であることを記念して命名された。
 「トレンドを追求していくところが馬里奈の強みでもあり、商品力を強化したいと作りました。ほどよくトレンドをミックスさせたベーシックラインで、例えば22年春夏シーズンにはグルカサンダルが来そうですが、ベーシックにアレンジして、誰でも履けるラインを目指します」(宮部栄次・営業本部企画室室長兼OEM部長)。
 来春夏はベージュ系カラーを中心に、グリーン、ブルーなどパステル系の寒色を差していく。ターゲットは20歳前後、価格は3900円が中心となる。展示会は年3回開いていて、約40品番が並ぶ。
 セセンタ立ち上げの目的の一つが、ECを強化することだ。馬里奈にとってECは成長戦略の一つだが、年商全体の5%程度と伸び悩んでいる。
 「コロナの影響もあって、ECのマーケットはさらに大きくなっており、ここにしっかりと入り込みたい。勝っていくには、当社の強みである『ファッション&リーズナブル』を前面に出していく必要があります。折しもスニーカーブームがひと段落して、得意なエレガンス系に向かいつつある。リーズナブルな商品を開拓していきたい」(中澤文宏社長)。

キーブランドとしてSDGsにも取り組む

 馬里奈のECサイトは楽天、ロコンド、ゾゾタウン、マルイウエブチャンネルの4店舗。セセンタは主にゾゾタウンを中心に販売していく。新しいブランドだけに、販売促進にも力を入れており、SNS、特にインスタグラムに注力し、マイクロインフルエンサーも採用した。これらのSNSによる販促は外注している。
 SDGsにも取り組む。セセンタでは、来春夏シーズンからペットボトル由来の再生素材を使った中敷きやライニング材を採用、将来はアッパー材にも拡大していく計画だ。また、OEMの取引先であるファストファッション企業の中には靴箱をなくし、梱包材も軽量化する企業も出始めており、セセンタでも考慮中だ。
 コロナの影響もあり、前期は当初目標に届かなかったという。今期はその反動もあって順調に推移している。セセンタは、これからの時代を拓くキーブランドとしての期待を担っている。