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バッグ企業 土屋鞄製造所

ランドセルの製造技術を生かし、直営店で攻勢

ランドセル職人がかばん作りに挑戦

1965年に東京で、ランドセル職人たちが立ち上げた工房を発祥とする「土屋鞄製造所」。学童向けのランドセル、というイメージが強いブランドだが、ランドセルを購入した家族の要望もあって、日常使いができる大人向けの革かばんの製造も開始し、現在はビジネスからカジュアル、革小物まで、さまざまラインアップを幅広く展開している。
ものづくりの根幹にある考え方は、「日本が持つ技術力を世界に発信する」というもの。ランドセル製造の高い技術を革かばんにも応用し、丈夫で長く愛用できるうえ、年を重ねても時間を超越して持てる製品を発信し続けている。20年ほど前から若手職人の育成にも取り組んでおり、現在は200名ほどが自社工房で働いている。

オンライン販売のほか直営の実店舗も26店に

販売は当初、紙媒体の通販が主だったが、2001年に「楽天市場」に出店したことを皮切りに、オンライン販売にも力を入れるようになる。04年には自社サイトを立ち上げ、本格的な直販とブランドのファンづくりに着手している。土屋鞄ならではのものづくりなど、より具体的な生産背景や商品にこめた思いなどを、ユーザーにダイレクトに伝えられるようになった。
実店舗の運営にも積極的で、2004年に鎌倉に路面店で1号店をオープンさせ、その後も国内に限らず、台湾の台北などにも店舗網を広げていった。現在展開中の店舗は、工房を併設した西新井本店と軽井澤工房店のほか、大人向け革かばん専門店を14店舗(国内12、海外2)、ランドセル専門店10店舗出店しており、合計26店舗を構える。

コロナ禍のなかで接客の向上を図る

「昨年の緊急事態宣言下で、店舗が軒並みクローズしたことで大いに影響はありましたが、今までできなかったことに注力したことが、私たちには大きなチャレンジとなりました」と話すのは、同社事業推進本部 販促企画部部長の山田智子さん。
ランドセルの繁忙期は4月で、来店できないお客には、密にならないように、予約制で来店してもらった。ここでは一人ひとりにきちんと接客することができ、これまで以上に接客のレベルアップに繋がったという。
また、インスタグラムの機能のひとつ「インスタライブ」を、毎週発信するなどSNSの発信に力を入れたほか、おうち時間を楽しむための「レザークラフトキット」やステーショナリー分野の製品などを新たに発売した。また、オンラインで実施する「社会科見学」の動画を配信して、小学生に工房を見てもらうことも行った。
「店頭ではレザーケアを実施し、出かける機会が減った今だからこそ、おうちでケアをし、革かばんを長く使って頂けるよう提案しました。一連の新たな取り組みで、忙しい時にはなかなか気づけなかった、お客さまのリアルな声を聞くことができ、とても有意義だったと思っています。『お店が開くのを待ってますよ』と嬉しい言葉を頂けるなど、自分たちが良いお客さまに支持されていることがわかり、スタッフ達も力になったのではないかと思います」(山田部長)。


革から得られる豊かなライフスタイルを提案

また鞄にとどまらず、アートワークのような製品作りも行っている。雪だるまを運ぶバッグ=i非売品)やすいかを運ぶバッグ=i販売品)など、思わず笑顔になる商品の数々だ。決して量産型商品ではないが、「土屋鞄が面白いものを作っている」という話題性にも繋がっている。
昨年8月1日には、東京・六本木ミッドタウン内に新店舗「土屋鞄製造所 六本木店」(売場32坪)をオープンさせた。初のメンテナンスカウンター「クラフツワーク スタンド」も設けた。
同店では「鞄と共に過ごす豊かな時間」をテーマに、オリジナルのレザーを使ったインテリアや、ギフト用の刻印機の導入など、革から得られる豊かな空間と上質なサービスの提供を目指している。
「私たちのものづくりはランドセルでもカバンでも、『土屋鞄製造所』としては両方合わさってひとつだと思っています。子供にも大人にも“鞄を通じた良い未来”を届けられればと願っています」と山田部長は語る。

(株)土屋鞄製造所 概要
創 業:1965年
資本金:7000万円
代 表:土屋成範
従業員数:613人
本 社:東京都足立区西新井7-15-5 TEL:0120-907-647
直営店(革かばん専門店):西新井本店、軽井澤工房店、鎌倉店、丸の内店、渋谷店、六本木店、日本橋店、自由が丘店、横浜店、名古屋店、神戸店、京都店、梅田店、福岡店、台北店、香港店