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特集 「サステナブル」加速
皮革業界の取り組み

多様なテーマでサステナブル実現


 企業が社会的責任を果たすのと同時に、企業イメージのアップを図り、収益にもつなげ、持続可能な会社経営を行う「サステナブル」への取り組みは、皮革業界でも広く見られるようになった。また、その内容も多彩になり、新型コロナの流行を背景に、健康的な生活が送れるよう、革に対して制菌・抗ウイルス加工をするといった対応まで見られる。

エコレザーでの製品開発

 サステナブルな打ち出しで最も多いのがエコレザーでの提案だ。古くからあるミモザなどを使った植物タンニンによる鞣しのほか、新しい試みではコメ糠による鞣しも見られなど、クロムフリーの考え方で作られた革で、硬さや色展開などこれまでの欠点を克服したものが増えている。
6つの条件をクリアすることで認証される、日本エコレザー基準の革や革製品も増えており、安心・安全を謳う革として、付加価値のアップと同時に、企業やブランド姿勢を示すものになっている。また、藍や茶葉、泥といったものを染料の原料に用い、蓼藍(たであい)染め、泥染めなどで染められた革でのエコ提案も見られる。クロムを使って鞣すこと自体は悪いことではないが、より自然由来のもので革を作ろうという姿勢になっている。
皮革産業のサステナブルへの取り組みとして、世界的な動きとなっているのがLWG(レザー・ワーキング・グループ)である。製革業者の環境マネジメントを評価対象に認証されるもので、日本企業では現状1社のみの認証だが、このタンナーが供給する革を使って製品化する会社は増えており、これもサステナブルへの取り組みとなっている。



生分解パーツや再生素材の活用

 ペットボトルなどプラスチックごみが環境問題となっている中で、ペットボトルを再生素材として活用した製品開発も進んでいる。パーツの多い靴のなかでも、スニーカーではソールからインソール、カウンター、シューレースなど再生パーツが使われた製品が誕生している。このモデルを一つにカテゴリーとして展開することで、企業姿勢をアピールしており、消費者の購買につながっている。
 プラスチックのような、自然環境の中で生分解しないものの再生利用とは反対の考え方で、最初から自然に還ることを前提としたパーツも開発されている。副資材メーカーの村井では、カウンター(月型)、ボックス・トウ(先芯)といったパーツで、天然繊維コットンに、「含侵剤」と「ホットメルト接着剤」を使った製品を発表しているが、いずれも土に埋めることで微生物に分解されるものだ。
 接着剤が多く使われる革製品だが、水系接客剤など無溶剤の活用が、工場内の溶剤臭を無くし、作業員の健康にも影響を与えないなど、エコな製品としてサステナブルに通じるモノとなっている。


端材利用の製品化、破棄商品の回収

これまでは捨てられていた革の端材を活用しようという動きもある。端材をさらに細かくして中物にすることはあったが、端材をそのまま革小物やインテリア小物に加工したものが作られている。また、革の端の欠点であるシワを逆手に、シワを伸ばさずそのままで使った製品も出ている。これらは、以前なら消費者から敬遠された商品であっただろうが、エコバッグの浸透に見られるように、社会の環境に対する意識の高まりもあり、端材を使った製品も、エコな商品として受け入れられている。
履き古した靴の店頭回収も、大手チェーンでは年間を通して行われており、これもサステナブルな考えに通じるモノになっている。ゴミとして焼却に回さないようにといった、環境に配慮した活動だが、回収した靴に対して、次回の購入で利用できるクーポン券を提供するで、再来店を促すことになるほか、下駄箱のスペースを作るといった役割もある。ちなみに回収された靴の大半は、リメイクして海外に提供されている。

制菌・抗ウイルス加工で健康的な生活を守る

新型コロナ流行以降、クローズアップされているのが制菌・抗ウイルス加工の革や革製品た。抗菌・防臭加工のインソールなどはこれまでもあったが、さらに効果を高めた制菌・抗ウイルス加工のモノが登場している。新型コロナウイルスへの効果は未確認とするものの、革の表面に付着した菌やウイルスの数を減少させるものとして、安心感を与えるものとなっている。これなどは健康的な生活をするための製品を供給する企業の役割であり、サステナブルな提案である。
他にもサステナブルにつながる、SDGSの目標達成に向けた企業活動も見られる。パンジーでは資材の再利用、製品開発や製造環境での健康や環境配慮に取り組むほか、森林保全事業やピンクリボン運動の支援など、社会貢献活動も行っている。