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話題 ワークマン キャンプ市場に本格参入


職人の作業着・関連用品の専門店「ワークマン」が2月から、キャンプ市場に本格参入した。テントや寝袋、テーブルのほか、焚き火用品や放虫・防融機能を備えたウエアなど、合計130アイテムを立ち上がりからそろえ、販売を開始した。

プロ品質の安全や快適性をキャンプギアでも提供

アウトドアやキャンプ用品を販売する売場は、スポーツ店など100企業を超えており、最近はホームセンターもキャンプ用品に力を入れている。そんな競合の激しいキャンプ市場へ参入するワークマンの狙いについては、同社・土屋哲雄専務は次のように説明した。
「ワークマンは職人にウエアや道具を提供する会社ですが、仕事着はキャンプでも使えるし、キャンプ用具を作る会社と職人の工具製造会社は同じところが多く、意外と近い関係にある。プロ品質の安全や快適性を、キャンプを楽しむ人にも届けたい」。
今回発表のキャンプギアに対する要望は以前からあったという。また、職人用のプロ品質の用具がキャンプで使われていた。この時点での発表は、単に声を具現化するのではなく、進化させたものを作り上げるために、周回遅れで参入になったという。

アウトドアウエアは2年で4倍の売上げ

ワークマンが一般消費者向けのPBを立ち上げたのは2016年だった。レイン関連の「イージス」、スポーツの「ファインドアウト」、アウトドアの「フィールドコア」の3ブランドである。
3つのアウトドアウエアの人気と、18年にオープンした新業態「ワークマンプラス」の成功から、ワークマンの成長が始まっている。また、これまでなかったアウトドアシーンでの商品展開と、「ワークマンプラス」や20年に1号店をオープンした「#ワークマン女子」での女性客の開拓が、キャンプギア市場参入への後押しになっている(図1)。
PBによるアウトドアウエアの売上げは倍、倍で推移しており、21年は対19年比4倍に成長している(グラフ1)。それまで、一般消費者向けの商品はあっても、全体からすると数%に過ぎなかった。これがPBを立ち上げ、同じ商品でも見せ方に変え、違ったアピールをした「ワークマンプラス」の展開が、大きな成長につながった。



ウエア生地の流用で低価格なテントが誕生

ワークマンのキャンプギアのコンセプトは、「誰でも、ビギナーでも、安心してキャンプを楽しめる」というもの。ここでは、ワークマンだからできる低価格で、キャンプのハードルを下げ、同時に、ワークマンだからできる、ウエアで培った機能性を採用する、としている。
初回発表のキャンプギアは130アイテムあるが、その中には初心者向けの5点セット(テント、スリーピングバッグ、ローチェア、ランタン、テーブル)で1万円を切るものもある。ほかにも焚き火の火の粉がついても焦げない「防融」加工のものや、撥水加工、防虫加工のウエアやテント、シュラフなどもある。
高機能で低価格を実現しているのには、これまでウエアで使っていた独自開発の生地を横展開で、テントなどキャンプギアにも使うことで、ウエア以上に多くの生地を使うキャンプ用品があることで、コストダウンを実現している。
この結果、同社では最近の円安、原材料高、運賃費の高騰でも、PBの価格は据え置いている。

アンバサダー製品がPBの3分の1に

商品開発ではアンバサダーの声を取り入れた「アンバサダーマーケティング」を取り入れている。現在、売上げの62%を占めるPBの3分の1が、アンバサダー開発協力製品だという。
今回のキャンプギア開発には15人のアンバサダーが関わっており、130アイテムの内、43アイテムがアンバサダー開発協力の製品だ。
「ユーザー目線の『欲しい』を、アンバサダーに代弁してもらっていますが、アンバサダーは数千人もの意見を集約した中央値と考えている。これまでもアンバサダーの声を100%聞いた商品開発を高く評価している」(土屋専務)。
 同社では「声のする方に、進化する」といった社是のもと、今後は全PBの約半数をアンバサダー開発協力製品にしたい考えだ。

キャンプギアはウエブ受注・店頭渡し

今回のキャンプギアの販売方法は、ウエブで注文を受け、店頭で引き渡す、というもの。
 ワークマンに標準店の売場面積は100坪で、売場スベースは限界に達しており、これ以上の商品が入る余地がないことが、ウエブ受注の背景にある。また、現在、関東と関西の2ヵ所に流通センターがあり、ウエブであれば在庫を絞ることもなく、お客のニーズに応えられる。
 店頭に受け取りに行くことについては「人気商品を探して2、3店舗の店を買い回りしている現状があり、ウエブ注文なら指定したお店にかならずあるので、不便さはなくなる」という判断だ。ただ、「#ワークマン女子」11店舗と、SCに入る「ワークマンプラス」12店舗では、キャンプギアの現物が見られるようにしている。
 現在、940店舗を数えるが、2030年には受け取り拠点として1500店舗体制にする計画で、4月以降、大阪なんばシティ、銀座イグジットメルサ、池袋サンシャインシティと、都心店も出店する計画だ。「#ワークマン女子」については、来年3月までに27店舗まで増やす。
 キャンプギアの販売計画は、初年度40億円を見込むが、最大55億円の増産体制を構築済みだ。

作業靴以外の靴もラインナップを拡充

ワークマンは作業靴といったカテゴリーで、以前から安全靴、地下足袋、長靴などの靴を扱ってきた。安全靴は今なお主力商品だが、2016年にスタートしたPB商品開発の流れに乗って、17年に一般向けの靴が「ファインドアウト」ブランドで発売された。
商品名「アスレシューズライト」は超軽量シューズで、980円という低価格で発売、年間70万足を売り上げるヒット商品となった。20年には「アスレシューズ ハイバウンド」が1900円で発売された。独自開発の高反発素材「バウンステック」を組み込んだ、低価格で高機能を搭載の?弾む靴≠ニして話題となった。
今春夏では、「アスレシューズハイバウンド」の上を行く機能の「アスレシューズハイバウンド オーバードライブ」を2900円という、同社アスレシューズでは最も高い商品を発表している。ソールに反発力のあるカーボン配合のオリジナルのプレート「ドリブンプレート」を内蔵し、ミッドソールには高反発ソールの「バウンステック」と搭載し、屈曲後の推進力を高めたランニングシューズだ。ほかにも、4センチ防水のランニングシューズ(1900円)など、12モデルが春夏新製品として発表された。
キャンプなどアウトドア向けの商品は「フィールドコア」ブランドで、耐久性・耐摩耗に優れ、汚れが付きにくく、落ちやすいアッパー使いの山歩き用のアウトドアや、踵を踏めるバブーシュなどが継続商品としてある。いずれも980〜1900円と、圧倒的な低価格で展開している。