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個性派 エントアン(埼玉・越谷市)

セミオーダーを主力に、年間200足の靴と革小物を製造販売

女性のスリッポンは5万円台が主力

「エントアン」は埼玉・越谷市の「富士ショッピング」モールの一角にある、手づくりの革靴および革小物を製造販売するショップだ。工房を兼ねた店内はさながらアートギャラリーのようで、入口をはいると、主力商品のシューズが視覚に入るようになっている。
 人気はセミオーダーのシューズで、売上げトップはプレーンなスリッポン。履き口のカットラインにこだわったデザインで、脱ぎ履きのしやすさと、靴下で遊べる楽しさを追求している。
「シンプルさの中にもさりげなく個性を出せるようにしたかった。カットラインは何度も試行錯誤を繰り返したのちに完成させたもの。夏は素足で履いていただくこともできます」と靴職人兼店主の櫻井義浩さん。同店では古くからあるラストで、ロングセラー商品である。
 同店の利用客は95%が女性。年齢層は40〜50代を中心に、20代から70代くらいまでと幅広い。
 主力のセミオーダーシューズは、革はシンプルなものから、シボのあるタイプのものなど5種類ほどから選べる。これに色展開が加わることで、スリッポンの靴でも15パターンある。ベースは同じでも、顧客の要望に応じてその人だけの一足が提供できる。素材の選び方によって価格は均一ではないが、セミオーダーシューズの人気は5万円ラインになる。


定期的な展示会出展でオーダーを受ける

櫻井さんの「エントアン」は製靴学校を卒業後、社会に出て靴づくりの研鑽を積む中、2009年末に起ち上げたブランドだ。設立時から3年は浅草を拠点としていたが、12年に櫻井さんの出身地である越谷市へと場所を移した。ただ、販売地域は地元に限ってはいない。独立したときから広域で売るための手法を培ってきた。
 当初はつくることに長けていても、売り方がわからなかった。そこで10年にファッション展示会にトライアルで出展したところ、地方の取引先が開拓でき、名刺交換による人脈づくりやファッション誌への記事掲載などのきっかけが得れた。徐々につながりもでき新たな取引先の店舗で、展示会を開かせてもらうきっかけも生まれた。販促の場として展示会の存在は大きく、いまも全国のあちこちで定期的に開いている。コロナ禍によって展示会が開けず、売上げが低迷した時期があったが、自社のネット通販に力を注ぐことで凌いだという。
 販売手法や販路は確立できたが、オーダーが増えてくると、製作との兼ね合いは難しくなってきた。このため現在のキャパシティは、小物をつくる時期と重なったり、展示会の回数との兼ね合いにより変わってくるが、「靴に限れば年間で200足くらい」だという。

室内履きや子供靴でネット販売も考える

最近では靴以外のアイテムとして、ルームシューズや革小物もコンスタントに売れるようになってきた。コロナを機にアイテムの充実に注力した面もあるが、「ルームシューズなどに興味を持つ人が増えている」という。また、「エントアン」では21年末より子供靴の分野に進出した。きっかけは櫻井さんに子供が生まれたことがきっかけにだった。
「今までの子供用革靴は、お祝いや記念写真のときに履かれていました。対してうちは毎日履ける革の子供靴を目指しています。うちの子に履かせて味の出てきた靴を、ネットに掲載したり、店内に展示したりし、商品の魅力が伝わるように見せれば、売れるのでは」。
 靴はネット通販しておらず、ネットでは商品の掲示のみにとどめていたが、昨年末に販売告知を載せたとたんに注文が舞い込みはじめた。手応えを感じており、今後はコロナ渦の時代にあった提案や売り方を思考している。
「ルームシューズや子供靴、ベビーシューズであれば通販でもいいのかな、と感じています。また一般的な靴は贈答品になりづらいですが、子供靴なら出産祝いとか、祖父母から孫に対してのプレゼント需要も見込める。まずは子供靴のネット販売をはじめてみようかと考えています」。

埼玉県越谷市赤山町4−7−46
TEL:048−992−9500