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ニッポン再始動 坂口昌章(シナジープランニング)

中国より日本企業の将来を考えたい

中国生産、中国市場の結末

 中国生産が本格的に始まったのは、90年代に入ってからのことだ。中国に次々と経済特区ができたのが80年代初頭で、日本市場に通用する商品を作るのに10年掛かったことになる。
 90年代になり、バブル崩壊とともに激安ブームが到来し、一挙に中国生産が本格化した。
当時、私はこう考えていた。自社工場の裏に大規模な最新鋭の工場ができたとしたら、どのように生き残るべきか。同じ土俵に立ったのでは必ず負ける。しかし、最新鋭の工場を下請けに使うことができるならば、世界で勝負できるかもしれない。そなれば大きなビジネスチャンスが生れると。
 しかし、現実は下請けの国内工場から、下請けの中国工場に仕事が流れただけだった。国内製造業は懸念通りに空洞化してしまった。
 次に考えたことは、中国に富裕層市場に日本製品が売れないだろうか、ということだった。中国は「世界の工場」になったが、富裕層は中国製商品を買わずに、西欧のラグジュアリーブランドに殺到した。その流れに乗れないのか。
 中国の消費者は、品質を識別する目を持っていない。そのため、ブランドに依存するしかない。この市場の特性を理解し、広告宣伝に思い切った投資をして、成功した韓国ブランドも誕生していた。
 しかし、日本企業は中国市場で広告宣伝に思い切った投資をしなかった。自社の品質を過信し、良い商品なら売れるという思い込みから脱することができなかったのだ。
 結局、中国生産も中国市場参入も、日本企業の利益には直結しなかった。実際に儲けたのは中国メーカーと商社だけだ。
 

日本企業の生き残りを考えよう

 「世界の工場」は日本だけに影響を与えたわけではない。米国も同様に中国生産に依存していた。その体制に「待った」をかけたのがトランプ大統領だった。在任中に、アメリカンファーストを提唱し、中国の人権侵害を告発し、デカップリング政策を推進した。
 そして、中国発のコロナ危機が世界規模に拡大した。中国のロックダウンは現在でも続き、世界のサプライチェーンは混乱したままだ。外資企業は次々と中国から撤退しており、中国を核としたグローバリズムは崩壊しつつある。
 一方で、ゼロエミッション、サステナビリティが提唱され、もはや大量の余剰品と大量廃棄を前提にした、大量生産・大量販売ビジネスそのものが通用しなくなっている。
 そんな環境下で日本企業はどのように生きていけばいいのか。今回から、本コラムもテーマを中国から日本に移して、将来を考えていこうと思う。

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